車体底面の空力について   text & illustration by tw  (2007. 3.30)



(ウイングが空中にある場合。)


(ウイングを路面へ近づけた場合。
 通路が狭くなり流速が増す事で、吸着効果が発生する。)

上図の、左の「空中にあるウイング」と比べて、右の「路面と近づけたウイング」は少し空気抵抗が増すが、
しかし、増した空気抵抗の割りに、とても大きなダウンフォースを発生させる事が出来る。
これを地上効果(グランド エフェクト)と呼ぶ。
この手法は、少ない空気抵抗でより大きなダウンフォースを得たい、現代レーシングカーの空力性能の基本である。

開かれた空間では、空気は音速以下の速度では圧縮される事は無い。
右のウイングは路面へ近い為、気流が通過する通路が狭いが、
気流の速度が音速以下であれば、空気は圧縮される事は無く、狭い区間を流速が増して通過する。

ベルヌーイの定理上、流体は、速度が増すと圧力が下がる。
これがウイング下面や、現代レーシングカーの車体底面によるダウンフォース発生の原理である。



F1グランプリで初めて車体底面をウイング形状としたマシンは、
筆者が過去の資料を調べた限りでは、1970年の「マーチ701」である。
このマシンは車体のサイド部分の底面をウイング形状としていた。
しかしこのマシンは、そのサイド・ウイングに翼端板は設けられておらず、
低圧であるウイング下側へ、車体の横側から気流が進入してしまい、
得られたダウンフォースは少なかったと思われる

そして1977年に、ロータスがサイドウイングにスカートを装着させた「ロータス78」を登場させた。
このサイドスカートは路面と接触させており、ウイング下部の低圧部と外気とを遮断した、
空力効率の高い、初の本格的なウイングカーとなった。

しかしその後のウイングカーの空力性能の進歩により、
F1マシンのコーナリング速度が上昇してゆき、安全性に問題を抱える様になった。
その為、ダウンフォース発生量を抑制する為に、1983年からフラットボトム規定が裁定された。
この規定は、
「前輪の後端から後輪の前端までに有る車体の底面はフラットでなければならない」
という規定である。

そして11年後の1994年サンマリノGPで、ローランド・ラッツェンバーガー選手と
アイルトン・セナ選手がコースアウトし、死亡事故となった事により、
F1界は更に車体の安全性を向上させるべくレギュレーションを改定し、
1995年からステップドボトム規定が裁定された。
このステップドボトム規定とは、車体を正面から見た時に、
車体底面の中央部とサイド部で50mmの段差を義務付けたものである。
下図にて現時点(2007年)でのステップドボトム規定について記す。





上図の規定を簡単に述べると、
まず、車体底面は「リファレンス・プレーン(RP)」と「ステップ・プレーン(SP)」に分けられる。
RPの全長は、前輪中心線の後方330mmから後輪中心線までの間になければならず、 その底面形状はフラットでなければならない。
RPの幅は、車体中心線から左右対照に、最少150mm、最大250mm以内でなければならない。

SPの底面は、RPの上方50mmになければならない。
そしてSPは、前輪中心線の後方330mmから後輪中心線の前方330mmまでの間になければならず、
その底面形状はフラットでなければならない。ただし、
車体を下から見た時に、RP以外のボディワークが存在していない部分ではSPは無くても構わない。

そしてRP下面に、幅300mm、厚さ10mmのスキッドブロックの装着が義務付けられている。
これらの規定により、1995年以後の車体底面は、1994年序盤までのフラットボトム規定下よりも、
60mmも路面との距離が大きくされ、車体底面でのダウンフォース発生量を抑制する事が出来ている。


そして次に、FIAの2007年度 F1テクニカル・レギュレーションの、ステップドボトム規定に関する部分の和訳を記す。
この文章の和訳作業については、N.Baba Web の、「N.Baba Laboratory」→「F1の部屋」→
「2007年F1テクニカルレギュレーション」のページを参考にさせて頂きました。



3.12 地面に直面している車体:

3.12.1
前輪中心線の330mm後方から、後輪中心線の330mm前方に配置される車体の全ての部分で、
車体を下から見た時に、リファレンス・プレーンか ステップ・プレーンの 2つの平行な面の内、
どちらか1つの面で形成されなければならない。

これは、車体の水平面に投影された12'000平方mmを超えない限りのリア・ビュー・ミラーと、
記事15.4.7で言及されたパネルのあらゆる部分には適用されない。

ステッププレーンは、リファレンスプレーンの50mm上方になければならない。



3.12.2
さらに、リファレンスプレーンにある全ての部分は、次の通りに形成されなければならない:

- 前輪中心線の330mm後方から、後輪中心線までに渡って延ばされる;

- その幅は、最小300mm、最大500mmをそれぞれ持つ;

- 車体中心線に対して左右対称である;

- 車体を真っ直ぐ下から見た時、それぞれ前のコーナーに半径50mm(+/-2mm)を持ち、
 この面が形成され始めた後ろの面に適用する。



3.12.3
リファレンスプレーンにある面は、
その外周の周りでステッププレーンにある面に、垂直に移行して結合していなければならない。

もし、リファレンスプレーンの外周のポイントで垂直に上方にステッププレーンの面が明らかに無いならば、
この移行は必要ではない。



3.12.4
リファレンスプレーンとステッププレーンにある面の外周は、
最大半径25mmから50mmで上方に曲げることが出来る。

垂直の移行がステッププレーンにある面と合流する所の半径は、25mmを超えないことが許される。

この文脈の半径は、周囲と接している両方の面に円弧が適用されると考えられる。

リファレンスプレーンにある面、ステッププレーンにある面、それらの間の垂直に移行する面、
そしてリファレンスプレーンやステッププレーンの後ろにある面が、
あらゆる適合可能な半径や適合するスキッドブロックの前に、完全に定義されていなければならない。
さらに適用された半径は適切な面の一部と考えられる。



3.12.5
リファレンスとステッププレーンにある全ての部分に加えて、
2つの平面の間の移行は均一、硬質、強固、連続的、
頑丈(ボディ/シャーシ・ユニットの独立に関係しない程度)に製作されなければならない。

車体を真っ直ぐ下から見た時に、通して部分が見えないならば、
リファレンスプレーンとステッププレーンにある面の完全に取り囲まれた穴は許される。



3.12.6
これらの規則はあらゆる違反を許すためではなく、製造能力の問題を克服するのに役立つために、
寸法の公差は、前輪中心線の330mm後方から後輪中心線までの間のボディワークに許される。

+/- 5mmの垂直の公差はリファレンスプレーンとステッププレーンを横切って許され、
5mmの水平公差は車体の下から面が見えるかどうかに関わらず評価するときに許される。


(このページの最新更新日:2007. 3.30
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