過去N社にて空力を担当された高木通俊教授のお話では、
「直径1mmの針金」と、「厚み8mmx前後長46mmの翼」
の空気抵抗は同じ値になると云う。
そしてクルマの速度とサイズの世界では、
空気抵抗の内訳は、形状(圧力)抵抗9割、摩擦抵抗1割との事だった。
では高木教授のお話はここまで。
ここからは筆者が得て在る知識から、空気抵抗について考察してみよう。
(尚、空気力学の世界では、空気の高圧を正圧と呼び、低圧を負圧と呼ぶ。)
また、物体が移動していなくても「風」に吹かれれば、その物体は空気抵抗を受ける。
つまり空気抵抗は、「空気と物体との相対速度」で決まるのだ。
これは「風洞実験設備」で利用されている。
それは、
リミッター装置無しで、機械(物理)的な回転速度の上限内の状態であれば、
クルマの最高速とは「パワーユニットの出力と走行抵抗がつり合った状態」の事だ。
車の走行抵抗の内、空気抵抗は速度の二乗で増加する。
よって乗用車でも、高速道路などでは空気抵抗の値が 燃費効率に影響する。
ただし、空気には水の7倍もの 粘性 があると云われている。
空気は、普通に思った以上に、ねばねば なのだ。
下図で気流の状態をイメージしてみよう。
ベルヌーイの定理上、「物体の断面が最大厚」となる箇所が「最速の流れ」となるので、
球形の後半では、流速が低下し、圧力が上昇し、粘性の影響で気流が剥離する。
空気の流れが剥離すると、
球体は「後部の流れなくなった空気の塊を引きづりながら」進まなければならず、
これが非常に強い負圧の抵抗となるのだ。
この空気の塊は「ウエイク」と呼ばれる。
上図の2次元的なウイングの場合、
「ウイング自身で生じさせた渦」と吊り合う形で、後方では「逆回転の渦」が発生し、
これでプラス・マイナス・ゼロとなって「誘導が終結」し、静止した大気圧へと戻る。
2枚の物体の間や、パイプの中を流れる場合、
成長した境界層同士が触れ合って更に流速が低下する。
そしてダウンフォースを発生する車輌では、
負圧を発生する模型底面にベルトが吸い寄せられない様に、
ベルトの吸引装置も必要となる。
既述の通り、クルマの環境では圧力抵抗が9割で摩擦抵抗が1割なので、
空気抵抗の軽減の為には、気流剥離の軽減を優先した方が有利である。
よく耳にするクルマの「Cd値」とは、「Coefficent Drag」の略だ。(=抗力係数、抵抗係数)
例えば「霧吹き」を使うと、微小の水滴がゆっくりと空気中を落下するが、この時のレイノルズ数は小さい状態だ。
自動車の場合、速度が時速50キロメートルから400キロメートルの範囲内なのであまり考慮する必要は無いかもしれないが、
スケールダウンした風洞実験モデルにおいてはレイノルズ数も計算に入れる必要がある。
(このページの最新更新日: 2012. 4.12木
スマホ対応に編集:2019. 5.16木)