「量子コンピュータの信じられない脅威」

text by tw (2020年 7月12日・日曜〜13月曜)

まず最初に…、物理的に、
そのレーシング界(カテゴリー)が、使用するタイヤが同じであれば、
コーナリング速度は、車輌のダウンフォースの大きさで上限が決まる。
ストレートの速度は、パワーユニットの性能で決まる。

開発エンジニアが、これから50億年かけて、車体の空気抵抗と走行抵抗をゼロにできても、
ストレートの速度はパワーユニットの出力が支配する。
パワーユニットの出力以上にストレート速度が出る事は決して無い。

コーナリング速度も、サスペンションを、これから50億年かけてセッティングしようが、
タイヤのグリップと空力ダウンフォースで発生するグリップ力を上回る速度でコーナリングできる事は決して無い。


そして、少し未来からのメッセージがあるとする。
「こんにちは。あなたのF1車輌へですが、
 現在に適応する、今から10の33乗年後に達成している、究極のL/Dの形状をお教えできるのですが、聞きたいですか?」

と言われたら、今のF1空力エンジニアはどうするだろう??
「えっ!? 聞きたいです!」
となりますよね。「今から10の33乗年後に達成している、究極のL/Dの形状」を、ですよ??

少し、話は遡ります・・・、

皆様は「量子コンピュータ」というデバイスをご存じでしょうか…??
筆者は1996年の春に、SONYの土井利忠さんが新聞で連載されていたコラムで知りました。
これは量子力学を利用して作動する、次世代コンピュータの事です。

土井利忠さんは過去に、アンテナ、CAD(!)、コンパクト ディスク(CD)、
NEWS(ニューズ:Network Engineering Work Station。1980年代後半から1990年代前半の UNIX ワークステーション)、
エンタテインメント ロボットの「AIBO」の開発を手がけた人物。

従来の電子コンピュータでは、1 か 0 の 2進法で計算する。シンプルだ。
しかし、当然だが、この数は、0 または 1 のどちらかの状態を表す事しかできない。
この電子コンピュータでは、0 か 1 の状態を表すにあたり、電圧をオンかオフかで切り替えている筈だ。

一方で、量子コンピュータでは、
1 (有る)と、
0 (無い)と、
1 と 0 の重ね合わせの状態 (有ると無いの重ね合わせの状態)、
で計算する。

この情報単位を、「量子ビット」(quantum bit または、Q bit)とする。
開発者達は、量子コンピュータの概念に気付いた事から、電子コンピュータを「C bit」と呼ぶ事すらある様になった。

量子コンピュータの重ね合わせの状態は、筆者には「量子井戸」というデバイスで実現している様に思える。
これは3次元の方向で閉じ込めを行った物で「量子ドット」と呼ぶ。(測定する素粒子が他の位置へ移動されては困る為。)

さて、ここまで書いて…、「量子力学なんてSFだ」と断言してしまっている人が居るのをネットで見たが、
その人が現在使用している端末も、現代の量子力学で動作している電子コンピュータなのであるのも知る由も無いのであろう。
現代の電子コンピュータも、量子力学が作用する程にCPUの回路の配線が細過ぎて、おそらく量子トンネル効果を発生していそうだ。

実際、「この世」と「あの世」を繋ぐデバイスが、量子コンピュータなのだ。
具体的には、世界は、(1)素粒子のスケールと、(2)人間の大きさと、(3)宇宙のサイズと、それぞれ異なるので、
それぞれ別の物理学が作用していると云うても過言は無いかと思われる。

素粒子の世界では量子力学が支配し、
人間の世界ではニュートンの古代物理学が通用し、
宇宙スケールでは宇宙論が支配する事になるのであろう。

そして、とある人物は、だいぶ過去の時点で、
「究極の量子コンピュータは、計算時間ゼロ、消費エネルギーゼロを実現する」と断じていた。
これは量子力学によって、素粒子の力学が時系列を吹っ飛ばす事で達成している。
これはマクロなサイズの我々の感覚では到底解からないであろう。

現時点で実用化されているカナダの量子コンピュータ「D-Wave」はやや特殊なタイプで、
この手法では、未来の伸びしろが少ない様に筆者には思える。
これは、ある計算方法に特化した限定的なデバイスという見方で、ほぼ間違いないだろう。

筆者は、正統派な量子コンピュータは、「巡回セールスマン問題」に回答を出せると確信している。
「巡回セールスマン問題」とは、セールスマンが沢山の場所を訪問して営業する際に、
移動時間と効率や、交通費といったコストを最小化した選択肢を導き出す方法だ。
何が最案なのか!?
営業マンは自分の過去の経験やセンスに頼らなくとも、
量子コンピュータが算出してくれた道順に、そのまま頼れば良い。
しかし、これは電子コンピュータでは不可能だ!時間がかかり過ぎる。PCを見ろ、あと何億年待てばいいのだ?!!

究極の量子コンピュータとソフトウェアでは、レーシングカーの空力開発の世界で、
車輌の全てのボディワークのパターン(ほぼ無限)を、全てCFDに試し、その中で最もL/D効率の高い形状を見つける事が、原理的にできる筈だ。

尚、車輌は走行中の姿勢変化で空力性能が変化するが、そのエアロマップの最適化は後でやればいい話の事だ。
L/Dの性能自体が、空力性能の上限である事には何も変わりは無いのだ。

そして…、究極の量子コンピュータのハードウェアの完成と、
究極の量子コンピュータ用CFDアプリケーションの完成が実現した時に、
レーシングカー開発の世界は、まさに「ビッグバン!!!」を起こすだろう。
未来へおいて全ての、究極の空力性能を手にする事が出来る。

これらの文章に対して、「全く理解ができない!」という感想であれば、それは真っ当に正しい評価であると思う。
既存の人類(西暦2020年)に、一般的に量子力学を理解できないのが普通の事である。
もし、「私は量子力学を理解できる。」と言う人へは筆者は大きな疑念を抱く。
おそらく、量子力学が数学的に理解できても本質的に理知的に理解できる人は21世紀にはほぼ居ない筈だからだ!!!

おそらく、いきなりここで「量子コンピュータ」という概念をここで記述されても、
「何の事だか解からない。」という感想を抱くと思うが、それは、正しい概念である。
普通、人間に素粒子のスケールの量子力学なんて、解かる筈が無いのだから。

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