「ステップ ド・フロア幅の違いによる空力」  text & illustration by tw (2010.10.19火)



F1GPでは1995年シーズンから、
車体底面で発生させるダウンフォースを減少させる為に、
ステップ ド・フロアの規定を導入した。(左図)

この規定内容は、
リファレンス・プレーン幅は 車体中心線より外側へ 150mm以上、250mm以下で、
  ステップ・プレーン幅は 車体中心線より外側へ 150mm以上、700mm以下、
RPの50mm上にSPがなければならないと定められた。

これによりサイドポッド底面と路面との隙間が、
1994年以前のマシンよりも 50mm 広がり、
グランド・エフェクト(地上効果(=吸い付き力))が削減された。


この規定では、ステップ側面の幅を 300mm〜500mm の範囲で自由にデザインできる為、
規定導入(1995年)当時、筆者はその部分の空力デザインについて思索して居た。何故なら、
過去に、マクラーレン初のサイド・ウイングカーである「M28」が空力的に失敗作であった事を知って居たからである。


左にサイドポッド・ウイング カー当時(フラット・ボトム規定以前)
のサイドポッド底面 断面 概念図を示す。

元祖ウイングカーであるロータスは、サイドポッド下面を翼形状としていた。
サイドポッド底面と路面との隙間が狭められ、流速が高まり、強烈なダウンフォースを発生した。

一方でマクラーレンのM28は、
サイドポッド底面と路面との隙間の 狭い区間を長くして ダウンフォース拡大を狙った様だが、
サイドポッド底面がフラットな事から、空気の粘性による境界層が成長してしまい、かえって流速が低下してしまった様だ。
これは現代の様な精密なムービング・ベルト付きの風洞を使えなかった事からの失敗であると思われる。




...と、この様な歴史を筆者は知って居た事から、
1995年当時、筆者は左図の様な方法で空力デザイン処理して居た。
だんだん幅が広がる事で、流速を増し、境界層の発生を防ぐ狙いである。

赤の矢印は、ステップ・フロア側面の、
ステップ側面の幅が「最初に」最大幅となる箇所を示す。




左は1995年のフェラーリの大まかな形。ノーズ下にキールは無く、
ノーズ先端からスキッドブロックまで流れるラインで繋がっていたので、
フットボックス下のダミー・プレートは存在し無かった。

車体の前後ダウンフォース発生位置 辺りで最も幅が広くなる形状としていた様だが、
サイドポッド「下面全域の流速」はライバル勢に比べて低かった様で、空力L/Dは悪く、
したがってリヤ・ウイングは立たせねばならず、ドラッグ(空気抵抗)が大きかった様だ。




そして多くのチームは短期間の内に、左図の形状に収まった様だ。
サイドポッド前端の部分で既にステップ幅が最大とされていた様だ。

筆者は今でもこの手法が正解か否か判らないが、
とにかくこれが当時(1995〜2008年の)F1のスタンダードと成り、
その12〜13年間、開発状況は少しは落ち着いた状態となっていた。





しかし2009年から規定が変更され、ディフューザーの跳ね上げ開始位置が、
後輪から前方へ330mmではなく、後輪車軸の所から、とされた。

書き換えられたレギュレーション文章の隙を突き、
まず、ブラウン、トヨタ、ウイリアムズが、多段ディフューザーを実戦投入した。
これは合法とされ、各チームがこぞって追従する羽目と成った。




2010年、マクラーレンは、
ノーズ下の気流をセパレーターで左右へ分け、サイドポッドの下へ流した後で、
狭かったステップ側面を最大に広げる(先日筆者がF1誌の写真で確認)、
という筆者の考え方と近い空力デザインを行っている。

筆者が雑誌で写真を確認できる程なので、
各F1チームは既にマクラーレンのフロアを確認済みであろう。
2011年以降、各チームのマシンがどの様な車体底面とするのか興味深い。
何故なら車体底面は、空力に決定的な程の影響があるエリアであるからだ。




(このページの最終更新日: 2010.10.19火)
[Site TOP]   [BOX]