2017年のテクニカル・レギュレーション草案について意見

text by tw / 2015. 8.10月

F1通信に2017年からの規定について記事がアップされている。
2017年のマシンは、現行よりも「5秒速く」、「攻撃的な外見」、「限界でドライブするのを難しく」する事が目標にされている。
そして前車へ接近して失うダウンフォース量を軽減し、コース上での追い抜きをより多く実現したいという事だ。

ではそもそも、ラップタイムを短縮するとはどういう事か?それは、
ストレートを速く駆け抜ける事と、制動距離の短縮、コーナリング速度の向上、の3つの項目から成る。

ストレートを速く駆け抜ける為には: パワーユニット出力の向上、車輌空気抵抗の減少、車輌質量の減少

制動距離の短縮するには: タイヤのグリップ力の向上(メカニカルと空力ダウンフォースの向上)、車輌質量の減少

コーナリング速度の向上する為には: タイヤのグリップ力の向上(メカニカルと空力ダウンフォースの向上)、車輌質量の減少



パワーユニット出力を向上させるには、時間あたりの燃料流量量を増やしたり、開発抑制を緩和する事で向上させる方法を提案したい。
燃料流量は毎年1000馬力を目安に設定し、シーズン途中の性能向上度から差し引いて毎年流量を厳しくしてゆけば燃効率が向上する。
タイヤのグリップ力の向上させるのに最も効果が高いのは、複数のタイヤメーカーが同時にF1に参戦する事である。
ただしこの場合、5秒速い、では済まないかもしれないし、現時点でF1は複数のタイヤメーカーを参戦させる考えは無さそうだ。
空力ダウンフォースを向上させるには、テクニカルレギュレーションを改定すれば達成できる。
具体的には、車体底面でより多くのダウンフォースを稼げる形状とすれば良い。そうすればより前車へ接近できるだろう。



車輌の最大幅は、現在の1800mから2000mmへ広げる方向で考えられている様子だが、これは筆者は賛同しない。
元々は、1997年まで2000mmであった最大幅が、1998年から左右の荷重移動を増す為、1800mmへ狭められたのだ。
左右のタイヤが接近している程、コーナリング時に左右の荷重移動が大きくなり、総グリップが減少する。
これは限られたコース幅でより追い抜きをし易くする目的もあった筈だ。
モンテカルロで、2メートルもある車幅が追い抜きをするのは困難だろう!
ただし、車体底面の空力面は、左右のタイヤが遠く離れている方が良好になるかもしれない。

後輪の幅は、現在の325mmから450mmへワイド化する可能性が高そうだが、
これは簡単にラップタイムを短縮する一方で、ドライビングの難しさ向上には寄与しない。
過去に、1993年からリヤタイヤ幅が18インチから15インチへ狭められたが、これはマシンのドライブを難しくしたのだった。
ワイドタイヤはドラッグ(空気抵抗)が大きくなり、スリップストリームの効果は上がるが、
しかしこれはボディワークのレギュレーションで調整すべき項目だろう。
細いタイヤは、最高速を増し、制動距離を長くする。それは追い抜きを促進する要素だ。

タイヤの直径は、現行の660mm(=ドライタイヤ。レインは670mm)から700cmへ大きくされる様だ。
これはラバーの磨耗を軽減する。そしてより縁石を大胆に乗り越えられるだろう。
タイヤ径を大きくする事は最小質量の増加を意味し、ホイールテザーはより大きな荷重に耐える必要がある事も忘れてはならない。



フロントウィングは、幅は現在の1600mmから1850mmへ、高さは現状維持でリファレンスプレーンから75mmが考えられている様だ。
空力的にウイングは、幅広く、厚さが薄い程、空力効率が高く、気流変動に対する安定性も高い。
追い抜きをし易くするならば、幅広フロントウイングは正解だろう。

リヤウィングの高さは、現在の950mmから800mmへ低くされる事が考えられている様だが、これは賛同できない。
ロワウイングを復活させるならば尚更だ。何故なら、リヤウイングが低い程、これがディフューザーのフラップとして作動する為だ。
フラップがディフューザーへ近ければ、空力的に前車からの気流変動に敏感となる筈だ。
そういう理由で1995年以降の800mmから、2009年に950mmへ高くされたと思うのだが、
今回の2017年へ向けてのレギュレーションは、過去の時代経験の無い人間が意見を出しているのか???

ただしリヤウイング幅を現在の750mmから1000mmへ広げるのは前述のフロントウイングと同様の理由から賛成だ。
ワイドなリヤウイングは広告スペース上のメリットも大きいだろう。

ディフューザーは、車体底面で大きなダウンフォースを発生させる為に、
跳ね上げ開始位置が後輪車軸から前方330mmと前寄りにされるなら、これは2008年までの前後位置だ。
高さはリファレンスプレーンから上方に225mmという事だが、もっと高くて構わないのかもしれない。
前後ウイングを薄くして、ダウンフォースのほとんどを車体底面で発生する様にすれば、最も前車へ近づけるのではないだろうか。



最低重量制限は50kg引き下げられる様で、これはラップタイムを短縮する前述3つ全ての項目を満たす。
そして軽いマシン程、限界でドライブするのが難しくなる。何故なら、慣性モーメントが小さくなり、マシンの動きが機敏になるからだ。
慣性モーメントが大きい程、動きがダルで、ドライバーは限界の動きと反応が予想し易くなる筈だ。

ホイールベースに制限がかけられる事は筆者は賛同しないし、現在の前後重心位置が自由にできない規定にも反対である。
車輌の前後重心位置はドライビング手法とワンセットであって、重心のワンメイク化はコース攻略の選択肢を狭めるものだ。
F1が自動車レースの最高峰ならば、最低限のラインは、自由な開発と方法論が試されるべきではないのか?



最後に筆者の賛成意見と反対意見をまとめ、筆者による提案を追加すると以下のものとなる。

タイムを短縮する:
・シーズン中にタイヤメーカーのコンペ・テストを行い、タイヤ性能でラップタイム基準に満たないメーカーは参戦できない。
・ボディワーク規定変更でよりハイ・ダウンフォース仕様とする。
・パワーユニットの時間あたりの燃料流量量を1000馬力を目安に増加。
・パワーユニット開発可能エリアの緩和。

攻撃的な外見の実現:
・空力開発可能エリアの緩和。

より追い抜きをし易くする:
・車輌の最大幅は、現在の1800mmのまま。
・フロントウィングは、幅は現在の1600mmから1850mmへ広くする。
・リヤウィングのサイズは、高さは現在の950mmのまま、幅は現在の750mmから1000mmへ広げる。
 フラップ効果抑制と高ドラッグ化の為にロワウイングは禁止。
・サイドディフューザー跳ね上げ開始位置は後輪車軸から前方500mm、高さはリファレンスプレーンから上方に250mm。

ドライビングを難しくする:
・後輪のサイズは、幅は現在の32.5cm、直径は現在の660mm(ドライタイヤ)のまま。
・最低重量制限を50kg引き下げる。
・車体の前後重心位置とホイールベースは自由。


(このページの最新更新日: 2015. 8.10月)
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