フェラーリ SF1000

text & illustration by tw (2019. 2.12水)

2020年 2月11日、フェラーリは2020年用マシン「SF1000」」を発表した。
この新車の概観は、F1通信 等を参照。
以下、車体の概観から筆者の私見を記す。



マシンの外観は全体的に昨年のSF90と似ており、空力デザイン面でラジカルな変化は無い様に観える。
しかし、レイク角(レーキ角)を極端に強める方向にした様だ。
F1で新車発表時のライドハイトは全くアテにならないが、レイク角は少しは方向性として参考になると思う。
昨年のフェラーリは、ロードラッグ、レス ダウンフォースのコンセプトで、ストレートスピードが圧倒的に速いマシンだったが、
今年はMaxダウンフォースを追求するコンセプトへ切り替えた様に窺える。これが今年のフェラーリの最大の特徴となるのではないだろうか。


フロントウイングは昨年同様、アウトウォッシュ。
翼端板の内側にはタイヤの温度センサーと思われるものを装着してあるが、
ウイング上側は空力感度が低いので、こういった物を着用しても空力的な損失は少ない。

ノーズのフロントウイングステーの辺りには、他チームも採用しているトレイと、縦の板が着いた。
これはノーズ後流の気流進路を制御しているものと思われる。

ノーズ上面、ノーズホールの排出口は、排出をアシストするカウリング付き。

ステアリングロッドはアッパーアームの前側にあり、ウィッシュボーンはおのずとハの字マウントとなっている。
筆者個人的には、中空ロワアームにステアリングロッドを内包するタイプの方が重心高もサスペンション ジオメトリーも有利に思うのだが、果たして?

前輪のブレーキキャリパーは下側、斜め後ろぎみに配置され、重心高を低めている。
これはフロント ウィッシュボーンの位置が高い事から、こういったキャリパーの装着位置とするのが容易となっている。

サイドディフレクターは黒色で形状がよく判らない。ここはライバルにあまり見せたくないのだろう。
流行のブーメランウイングの着用は確認できる。これは前輪の回転が巻き起こす乱流を斬って、サイドポッドへ向かう気流を整えたいという意図が窺える。



リヤビューミラーは、ミラー本体プラス流行の囲い板付き。(下図、右側)


ミラーと囲い板に干渉抵抗が発生するが、その代わりに、ミラーが気流を大きく膨らまさせない様にできる筈だ。
その証拠に、上側の水平フィンはリフト方向の翼断面であり、僅かなリフトが生じる代わりにミラー後部へ気流が回り込み易くなっている。
よって、ミラーのエリアの流れがコンパクトになり、結果的に空気抵抗を軽減できるのだろう。


今年も、サイドポッドのエアインテークは規定内でできるだけ上方に開けてあり、サイドポッド側面下部へ大量の気流を供給するデザインとなっている。
ここの流速が高いと、車体底面が横側から吸い込んでしまう空気のシール性が向上する。
下図:水色の空間が低圧域を示す。

(何の工夫も無い場合。)



(近年のF1の場合。)


レーシングマシンでは、ディフューザー等を駆使して、車体底面の気圧を低くしてダウンフォースを発生させている。
しかし、空気は圧力の高いところから圧力の低いところへ流れ込むので、低圧の車体底面は、横側から空気を吸い込んでしまう。
ディフューザーが車体底面から吸い出している流量は決まっていて、横から空気が入ればその分、アンダーパネル前側から吸い込む流量が減ってしまいダウンフォースが少なくなってしまう。
そこでそれをシールする為に、サイドポッド側面下部の流速を高め、その部分の圧力を低下させる工夫がなされている。
サイドポッド側面の流圧が高ければモロにそれを車体底面が吸い込んでしまうが、流圧が低ければ吸い込まれる量も低下する仕組みだ。

サイドポッド横側のアンダーパネルは、前後スリットが3つ切られており、ここで気流を下側の外側へ噴き出して、シール性を向上させている。



今回の新車では、昨年まであったサイドポッド上面のエアインテークを廃止し、普遍的なレッドブル形式となってしまった。答えとしてシンプルイズベストなのだろうか?

コークボトルは、レッドブルやレーシングポイントの様な後部下側の、斜め張り出し曲面は採用していないが、シーズン中のアップデートで採用される可能性もあるかもしれない。

サイドポッド上面はリヤへ向けてあまり低くせず、リヤウイング効率よりもディフューザー効率を優先している。

インダクションポッド横側には、小さなバイキング式の翼が生えた。
これはヘイローが発生させる乱流を斬り、リヤウイングへの気流を整える目的なのだろう。

サイドプロテクター後部はアウトレットとし、冷却の向上と、その後方へのエンジンカウルの簡素なラインの実現に寄与している。
サイドプロテクターの構造物がエンジンカウル後方までずっと続くと、段々の形状となってしまい、表面摩擦抵抗が空力的に害となってしまうと思われる。



エンジンカバーのエリアには最小面積レギュがあり、それを満たす為に縦のフィン状のボディワークがある。
その必要とされる面積の前端位置は、レギュに変更がなければ、後輪車軸から前方へ1330mmの位置まで存在しないといけない。



という事は、写真で観るフェラーリの様な形状の場合、
フィンの前端の位置からインダクションポッド前端の位置を観る事で、モノコックがどれくらい前進した位置にレイアウトされているのが判る。


まだ詳細な形状が判らないが、カウリングの内部にエンジン排気管が通る辺りの位置に、どうやらスリットが切られている様だ。
排気ガスは、温度の高いところから低いところへ流れようとするので、
ターボチャージャーのコンプレッサーを通過してから後方へは、排気管の温度が低い方が、排気ガスが流れ易いかもしれない。
その為の冷却スリットなのだろうか?

リヤウイングへの気流を整えるTウイングは上下2段式。

リヤウイングステーは2本のスワンネックで、ステーの間隔を広めにして振動でリヤウイングが動いてしまうのを抑制している。

ドライバーはセバスチャン・ベッテルと、シャルル・ルクレールのペアで継続。
昨年ポイントランキングでベッテル(チャンピオン経験者)はルクレール君に負けてしまったが、今年はどうなる?

(このページのここまでの最新更新日:2020. 2.12水
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