レッドブル RB16

text & illustration by tw (2020. 2.13木)

昨年、レッドブルがホンダと組むという賭けは、結果的にほぼ成功であったと思う。
そしてレッドブルの2020年用マシン、「RB16」は、2020年 2月12日に公開された。
RB16の写真は F1通信 等を参照。以下、車体の概観から筆者の私見を記す。



革新的ではないが、全てのエリアで空力開発を更に推し進めた印象を受ける。
シェイクダウンの写真を観るとレイク角が強く、今年もハイダウンフォースのコンセプトの様だ。

フロントウイング翼端板の高さは、途中から低くされている。
これはウイング上部の高圧を外側へ逃がすアウトウォッシュ効果がある。

ノーズコーン先端は仕切りの着いた複雑なエアインテークとなっており、内部の流路と作用が興味深い。
もしかして規定を満たすダミーの筒があるだけで、実質的なハイノーズとしてある?とも思ったが、
それだとレギュに触れる可能性が高いと思われ、やはりエアインテークなのだろうか?
今年、RB16の取り外したノーズコーンの内側を観られる機会があると良いのだが…。


そしてノーズ自体も先端も幅が狭く、モノコックとの接続部あたりで幅は広くなる。これには3つ理由がありそうだ。
まず、RB16はメルセデスの様な“ノーズ下側のヒレ”を採用した為。
レギュでノーズ区間のボディワーク許可範囲が狭い為、その中で最大幅を持たせたヒレを空力的に生かすには、ノーズを細くする必要がある。

もう1つは、プッシュロッドの角度を立たせる為と、フロントサスの前側アームを短くする為ではないだろうか。
車体を前から見て、モノコック幅を広げれば、おのずとプッシュロッドの角度は立つ。これでフロントサスの作動性が向上する。

下図は思考実験用に極端に描いた仮想のモデルで、車体を正面から見たプッシュロッドとロッカーの動きについて。

この様に、プッシュロッドの角度が立っている方が作動性が良い。


プッシュロッドの角度が寝ていると作動し辛い。


尚、筆者も2014年 8月10日に本Webサイトにて、モノコック幅を部分的に広げてプッシュロッドを立たせるアイディアを掲載している。

そして、車体を上から見た概念図。理解し易くする為にやや極端にモノコックを広げて描いたが、


前後方向にテーパー状のモノコックにそのままウィッシュボーンを接続すると、前側アームが長くなり、後ろ側アームが短くなるが、
その位置関係でバンプストロークすると、前輪は僅かだが後退し、ほんの僅かだがホイールベースが変化する。
これを嫌って、前側アーム取り付け位置のモノコックを幅広くしているのではないかと筆者は考えるのだが、果たして…?
尚、こういった形状は昨(2019)年に、メルセデスとマクラーレンが採用している。

レギュ内で、実際にどれくらいストレートなモノコックが可能かBMPソフトで試してみると以下の様になった。
左図がサバイバルセル規定の最小寸法で、右図が筆者が肉付けした物だ。



それと、今年のRB16では、フロントサスのアッパーアームは一般的なVアームへ戻った。
昨(2019)年のRB15では、アッパーアームを2本のIアームとして、上手くホイールの中に納めていた。
(下図イメージスケッチ)





ノーズ内部のSダクトの排出口は、RB16ではやや幅狭とされた。
排出口の両側部分には、昨年アルファロメオが登場させた物と同じ様なウイングレットを着用し、Sダクトの気流排出量を促進している。
それとSダクト排出口のカウリングを間隙フラップとして排出流を加速させているのがレッドブルの特徴だ。

サイドディフレクターは何枚ものフラップで構成され、現在手持ちの写真ではまだ詳細な構造は判らない。

サイドポッドはアグレッシブにデザインされ、より丸っこくなった。
サイドポッド側面下部は大量の空気を高速で流し、上面は流速を低下させ圧力を増している。
側面下部と上面の気流はコークボトル部で合流し、上側の圧力の高い流れが、側面下部の気流を蹴っ飛ばしていると考えられる。
そしてディフューザー効率を高める為、コークボトル下部は後方へ狭く絞り込まれており、後端では左右が合流しているかもしれない。

サイドポッドのアンダーカットの辺りのアンダーパネル両端には、4枚の背の低いベーンがあり、細かな空力開発の跡が見える。
レギュに変更がなければ、このベーンはステッププレーンから高さ50mm以内まで造形できる筈だ。



リヤサスペンションのプルロッドは、昨年まではロワアームよりも前方を通って車体と接続していたが、
今年は前側アームの後ろを通って車体側へ接続している。
つまり、これはプルロッドの車体側接続位置が昨年までとは異なる事を意味し、
車体の内部構造、リヤエンドのパッケージレイアウトに変化があった筈だ。

リヤサスペンション内部ユニットの(ロッカーとトーションバースプリング以外の)、ダンパー、アンチロールバー、ピッチコントローラーは、
ギヤボックスケーシング内部の、それ用に確保したスペースに収められていると想像でき、
クラッチとトランスミッションに干渉しない、非常にタイトな設計となっていると思われる。

昨年まで1本だったリヤウイングステーは2本となったので、やはり振動の問題があったのかもしれない。
ウェイストゲートバルブはメインの排気管の両脇の高めの位置に置かれた。

ドライバーは引き続き、マックス・フェルスタッペンと、アレクサンダー・アルボンのペア。
現時点で今シーズンの彼等の目標は、
フェルスタッペンはタイトル争いに食い込む、
アルボンはとりあえずまずは表彰台、そして年内に1勝は欲しいところだろうか。

ところで、何故ホンダのパワーユニットは、マクラーレンと別れてからこんなにも開発が進む様になったのだろう?




2/15追記

RB16には、インダクションポッド下のセパレーターに、小さなウイングが装着されている事が判明した。写真はこちら
筆者はこれに気付けなかった事が気恥ずかしい。
おそらくこれはダウンフォース生成よりも、セパレーターの気流進路の制御に用いられている様に思う。

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