MF1 M16   text & illustration by tw (2006. 2. 5)


昨(2005)年にジョーダンチームはミッドランド・グループに買収され、
今シーズン(2006年)からは[MF1]名での参戦となる。
MF1チームの2006年シーズン用マシン「M16」は2006年 2月 3日に発表された。
写真は、F1Racing.jpや、F1 Live.com等で参照。

MF1チームは昨年に引き続き、エンジンはトヨタ、タイヤはブリヂストンを使用する。
新車M16は昨年車のジョーダン15Bのデザインをベースに開発が進められたマシンだが、
空力形状は全体的に昨年車を踏襲している部分も多い。
ジョーダン15BとM16の主な違いは、フロントノーズからフットボックス下部、
フロントサスのジオメトリー、サイドポッド周辺、エンジンの排気位置等である。

以下、MF1の概観から筆者の私見を記す。
各部パーツの呼称については、[各パーツの名称]ページを参照。


[フロントの空力]

ノーズコーン先端は幅広で薄め。先端には小さなエアインテークが開いている。
ノーズ下面はスラントしてフロントウイングからの気流を迎え込んでいる。
フロントウイング・ステーはハの字型として強度をつけている。

フロントウイングは昨年終盤に投入した2階建て式。
この2階建てウイングの上段フラップは、車体外側ではフロントウイングの翼端板一体型で丸く折り返したスムーズな形状だが、 車体内側部分(メインウイング上面に立てるステーとなっている)では丸く折り返してはおらず、ウイングとの付け根は小さな翼端板状となっている。

メインウイングは昨年同様、中央部を結局的に路面へ近づける形状ではない。
規定範囲を一杯まで使い切っていない模様で、このデザインには疑問が残る。

翼端板下面は、トンネルではなく平板プレート。
フロントウイングの翼端板のサイド・フィンは外側へ低く傾斜させている。

モノコック上面前端の両端には、翼断面の小さな安定板が横へ伸びている。
これはフロントウイングの跳ね上げる気流の進路を制御するものと思われる。
この部分では車体中心線から左右へ250mmまでボディワークの設置が許可されている。


[フロント・サスペンション]

モノコック底部とロワアームには距離があるのでキールが存在する筈だが、
現時点で筆者が確認できた写真からはキールの形式は不明。
車体側からタイヤ側へアッパーアームの下がる角度は大きめなので、フロントのロールセンターは高い。
モノコック付近では、アッパーアームとステアリングロッドは翼断面のカウルに包まれている。


[サイドポッド]

フロント区間からサイドポッドへかけては昨年同様、
前輪内側のディフレクターとモノコック下部のボーダープレート、
そしてサイドポッド両端から前方へ延びた斧型ボーダープレートで構成されている。

サイドポッドの最大高は昨年よりもやや高くされた。
サイドポッドの最大高は高い方が、前輪が巻き起こす乱流を整える効果が高いと考えられる。

そしてこの高さは、サイドポッド上面からリヤウイングへかけての流速と圧力に直接関係する要素である。
現代F1では、サイドポッドの頂点とリヤ・ウイングとの間に凹状の空間を作り出している。(下図:黄色の空間)
この凹状の空間では流速が低下して圧力が上昇し、車体上面に高圧によるダウンフォースが加算されると考えられる。
車体下面で発生する強力な低圧と比較すれば、上面で発生できるダウンフォースは大した力ではないかもしれないが、
ボディワークが厳しく規制された現在のF1では、あらゆる手段でダウンフォースを得ようという空力デザインが成されている。


サイドポッド後部の高さが同じであれば、サイドポッドの頂点が高い方が深い凹空間を作り出せる。
ただし、この凹空間が深い程にリヤ・ウイングへの流速は低下する。
リヤ・ウイング単体で発生するダウンフォースだけを考慮するならばこの凹空間は浅い方が良い筈だが、
現在のF1マシンではリヤ・ウイングを車体全体のフラップして機能させている事から深い凹空間としていると考えられる。



サイドポッド側面前部のミドル・カナードのデザインは洗練され、斜め外側へ向ける形で気流へ対応している。
このカナードの迎角と翼端板は控えめなサイズ。

サイドポッド側面の下部は、僅かに幅を狭めてある。
サイドポッド上部の両端は、衝撃吸収構造やラジエーターを収める細かな膨らみが無くなりスムーズなラインとなった。
ラジエーター・チムニー自体は上へ向けたタイプだが、排出口は斜め外側へ開ける様な形で切り欠いてある。

サイドポッド上方のミニウイングは間隙フラップ式で、両側に翼端板を備え、
ウイング中央から1本のステーでフェアリングフィン上面に立てている。

後輪手前の縦のベーンは上部が内側へ湾曲して気流を迎える形状。
このベーンの外側にはカナードが装着され、フェアリングフィンと共に後輪前側下部の高圧を軽減している。


[コクピットからリヤボディへ]

ロープを通す穴は、インダクションポッドのシュノケール型インテークの下側に作り出すタイプ。
ミッドウイングは使用していない。

エンジンカウルの側面は昨年同様、後部を急に絞り込んでいる。
そしてボディワーク規定で必要な上の区域がプレート状で残され、不必要な下の部分は切り取られている。

エンジンの排気管は外側へ向かい、ラジエーター・チムニーの後方から排気している。
この排気の通り道のカウルにはルーバー・スリットが開けられており、
速い排気流に牽引されてカウル内の排熱を吸い出す設計であると思われる。


[リヤエンド]

サイド・ディフューザーの上方には、アーチ側のフラップが設置されている模様。

リヤ・ウイングは、上段ウイングから2本のステーで、ギアボックス後端に装着される衝撃吸収構造にマウントされている。
2本のステーの間隔は広め。

リヤ・ウイングの翼端板は、昨年の上部が後退した形から一般的な形状となった。

(ここまでの最新更新日:2006. 2. 5
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