マクラーレン MP4/19B  text & illustration by tw (2004.10.23 〜 11.12)



筆者はMP4-19のページの「5. サービスホールとサスの機構 (最終更新:2003.12.22)」で、上のイラストと、次の文を掲載していた。

「MP4-18同様、モノコック上面の前方の角には、線が見える。
恐らくサービスホールだと思われるが、場所がモノコックの角なので、(サービスホールであれば) 強度上不利に思う。
この場所にサービスホールを開ける必要の有る、MP4-18/19のフロント・サスは、一体どんな機構なのだろう?」



2004年シーズンに入り、「F1速報」誌で、MP4-19Bがノーズコーンを外した状態でモノコック内部が少し観える写真が掲載されていたので、
その写真を元に筆者が推察したMP4-19Bのフロントサスペンションのレイアウトを下図に示す。



モノコック上面のサービスホールのカウルを外した写真では、
左右のトーションバーが下図の様な角度でレイアウトされており、
前側でモノコックに固定されている事を確認できた。(内部は想像図)



恐らくスプリングは、中空管トーションバーを包み込む二重構造となっており、
プッシュロッドが押す ロッカーが回転 中空管が回転 中のトーションバーがねじられる という構造となっている筈である。
(↑上図ではロッカーも赤色とした)

この二重構造のスプリングの方式は、中空管自体もトーションバー・スプリングとして機能する筈で (何年か前にサスの専門書で立ち読みした記憶有り)
外周の中空管と中の棒との組み合わせで、バネの特性を色々と設定できる模様。



ノーズコーンを外した状態でモノコック内部が少し観えた写真では、
アンチロールバーはT字タイプである事が確認できた。
左右のダンパーには少なくとも3つづつの調整ダイヤルが付いているのが観えた。
(フェラーリは重量増を嫌って調整機構は一切付いていない模様。)

そして、ロッカーの下辺りにピッチダンパーリンクらしき物が観えたので、
完全な確信は無いが、今回の図ではピッチ・ダンパーを下側に置くレイアウトとした。

今回の上図の場合では、ピッチダンパーを上側に置いた方が、ステアリングシャフトを低くできて重心が下がると思う。(近年のダンパーは大した重量はない)
MP4-19Bのフロントサスの場合、プッシュロッドがかなり後傾している事でロッカーの位置が後方に有り、
もう少し一般的なレイアウトの場合とは事情が異なっている。
例として、今年のジャガーの場合(ジャガーのページ参照)立体ロッカーピッチダンパーを下側に置いている様だが、
ステアリングシャフトと干渉しない位置とする為にピッチダンパーは前側に置いてある様である。



(ジャガーR5の推察図と、一般的なレイアウトの比較)

ピッチダンパーを下側に置くタイプでの特徴は、ピッチダンパーがバンプ時にプル(引っ張り)ストロークで作動し、
ピッチダンパーの特性がプッシュ(押す)ストロークとは異なると思われる事。

ピッチダンパーを下側に置くタイプのメリットは、
一般的にプッシュロッドのロッカーの頂点よりも、ピッチダンパーの方が上に位置すると思われる事から、
ピッチダンパーを下側に置くタイプの方が、プッシュロッドの角度を立たせるデザインと出来る事である。



現在のマシンは筆者は確認できていないが、マクラーレンが初めてツインキールとした2002年車では、
ツインキールと前側ロワアームとのジョイントは、板バネではなくピロボールとして、
その周囲には気流を乱さない為にカバーを装着していた。

ツインキールとするとロワアームの長さが短くなるので、
シングルキール車と比べてストロークあたりのロワアーム作動角度が大きい為、
板バネでは作動角度の許容量を越えるのかもしれない。



雑誌で探したいくつかの写真から分析したが、なかなかキングピンプッシュロッドの位置関係が判らなかった。
よって今回の図でのプッシュロッドアップライト側のピボットキングピンの位置は適当なもの。

MP4-19シリーズのプッシュロッドの接続先はアップライトかロワアームか不明だが、
ロワアーム接続にしては写真のプッシュロッド位置は後ろ過ぎるし、
アップライト接続ならば、写真で観える様にプッシュロッドを車軸より後側に接続する形だと、
ステアリングを切った時に、マシンを外側へロールさせてしまう。

肝心のマシン性能面に直接関わるこの部分についてよく判らないのが残念だが、
資料となる写真と廻り合えず、とりあえず今回はここにて終了させて戴きます。
(このページの最終更新日:2004.11.12
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