デザイン・スケッチ日: 1994年の7月(?)頃 〜 1994年 7月17日
このページでの公開日: 2004年 7月19日(月)




私が独学で空力デザインを開始してから3年9ヶ月の 94年の夏にノートにスケッチした、
"本来の94年シーズン"用F1マシンデザインのスキャン。
このデザインにかかった日数は不明。前年度の93年モデルももう一度デザインしておきたく、それと同時進行させて居た。



以下の文章は2004年に作成したものだが、
その考えた内容や理解の程度、そして空気の流れ方の考えについて、1994年当時と今も基本的に変わりは無い。


フロント・ウイングのフラップと翼端板は描き入れていないが(1)、 これは当時、別のメモにお決まりのフォーマットが有った事からくる省略。

前輪用ボーテックス・ジェネレーター(2)。 その後端から内側へ100mm程間隔を空けて、小型の誘導板(3)を装着。
これは前輪が巻き起こす渦流対策と、前輪後方下部の低圧域に気流を供給する目的。


低いノーズ前部(4)からその後方(5)へ高さを引き上げ、フロントウイング下面の気流を吸い出す。
この手法の元は91年からのウイリアムズで、更に93年のマクラーレンの影響を受けて発展したもの。

フロント・ウイングは、中央部が穏やかに持ち上がったアンヘドラル型で、このウイング形状で安定して気流を吸い込む狙い。

フラップを装着するのは両サイドのみで、中央部はメイン・ウイングを後方へ延長するタイプ。((1)の辺り。)

フロント・ロワアーム前側を取り付けるキール(6)は、後方へと延ばす龍骨にはせずに、ティアドロップ状に終結。
これはフットボックス下と路面との空間を少しでも多く取って、フロントウイング下面からの吸い込み量を多くしたい目的と、
その吸い上げた気流が 不安定な状態でキールで左右へ別れて、左右非対称な流れとなっても、
キールの後で合流する事で、車体下への流れに悪影響を与えない様にしたいという考え方。



前輪が巻き起こす乱流を整流する目的で、ディフレクターの背は高い。(7)



(ディフレクターの内側、車体沿いの気流↑イメージ。)
クレーンで吊る際のロープを通す穴(8)は、当時はインダクションポッド上面に開ける事が多かった。

当時はレース中に給油ホースを接続する側には蓋はしない状態だった。(9)

この年からレース中の給油が解禁となり、エンジン設計を燃費よりも出力重視とする為にラジエーターのインテーク(10)は大きめ。


モノコック下部のセパレーター(11)から左右へと別れる気流は、そのままサイドポンツーン側面へと流し(12)
その気流の一部は 負圧の車体下面へ吸い込まれる。(13)
このセパレーターからサイドポンツーンへ繋げるデザインは、94年のフェラーリをアレンジしたもの。


(14) サイドポンツーン上面は段差付きで、これは自分が92年頃から模索してきた空力コンセプト。
前輪の巻き起こす乱流を整流する役目があるポンツーン外側は高くして、
そして内側は低くする事でリヤ・ウイングへの気流量を確保する狙い。
この(94)年からベネトンも段差付きの形状としてきた。


(15) バックミラーのステーは、気流を乱さない様に、取り付け部がコクピットの内側へ入り込んでいる。(しかし安全面では好ましくない。)

(16) この(94)年のフェラーリにヒントを得た、サイドポンツーン側面の下部から斜め下方へ向けたラジエーター・アウトレット。
これは、このアウトレットからの気流でエア・カーテンを作り出して、
車体下の負圧が 車体の横側から吸い込んでしまう空気(17)の進入を少しでも防ぐ目的。

しかし本元のフェラーリと比べれば、カーテンとして機能する気流はあまりに少量で、且つラジエーター・コアを通過した分 気流の推進力が低下しているので、このデザインではカーテン効果は取るに足らない程度かもしれない。

(18) 93年のウイリアムズを模範した、下部を斜めに絞ったコークボトル・ライン。
こうする事でサイドポンツーン側面の下部の気圧を下げて、(18)
車体下の負圧が車体横側の空気を吸い込んでしまう量を抑える効果を期待でき、
且つサイドポンツーン側面の気流が斜め下方へ向けて流れ込む(18)ようになるので、
後輪に当たる気流(19)と後輪の回転方向を合わせ易くなる



(20) 93年からのレギュレーションで、リヤウイングの最大高が前年よりも50mm下げられたが、
その規定では後輪車軸より前方については抜け道となっており、
93年の開幕戦からフットワーク(アロウズ)が投入し、他チームも追従したメゾネット・ウイング(21)

(22) サイドポンツーン上面から続くボディ・カウルは、リヤのアッパーアームギリギリまで低くデザインするのが常套手段。
当時のリヤサスのジオメトリーの考え方では、アッパーアームも後斜。
トー・アームは、アッパーアームの後側にレイアウト。

ミッションケースの後流を考え、オイルクーラー(23の右斜め上)とテールランプ(23の右)をデフケース後端にレイアウト。
オイルクーラーの後流がボディ・カウル上面の気流と合流し易い様にカウルは翼断面(24)
(当時はテールランプ装着位置の最低高のレギュを知らず、のちにこれがレギュ違反である事を知ってバッテンを引いてある。)

(25) 次の3つ、
ミッションケースとロワ・ウイングを繋ぐステーと、
ロワ・メインウイングとフラップを繋ぐ小さなステーと、
リヤのジャッキアップ・ポイント、は一体型で、空力の為に各部で厚みを変えたデザイン。


巨大なディフューザーの後部を、ジャッキアップ・ポイント下端から テンション・ワイヤーで吊っている(26)
これはピット作業時に、ジャッキがピックポイントよりも前方へ行ってしまうミスを防ぐ意味も有る。



←(スケッチをコピー、左右反転、合成したもの。)

リヤ・ウイングは3D形状にせずにストレートタイプ。この(94)年からアクティブサスが禁止されたので、姿勢変化による空力の挙動を穏やかに抑える為の選択。

後方から見て、ディフューザーのテールランプの位置する区間は透明のカウル。

ディフューザー中央部は間隙フラップ式で、ギアボックス下の熱気を排出。


当時はディフューザー下面の排気。負圧区間に排出する事でエンジン出力のアップを狙っていた。

両サイドのスプリッター(27)の位置と長さが特徴的。(一つ上の画像を参照すると分かり易い。)
ディフューザーのスカートと気流の安定性を重視していた。

 [以上を踏まえて もう一度 ↑マシンデザイン全体を観る] ←(CLICK! )

(このページの最新更新:2004. 8.02
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