2009年レギュへ向けて、上面の段差付きサイドポッドが復活?

 text & illustration by tw  (2008. 8.11)

まずはフォーミュラーカーにおけるサイドポッドの空力的な役割の一部について筆者の見解を述べる。
フォーミュラーカーでは回転するタイヤが車体からむき出しの状態で走行する為に、
タイヤに当たる気流はかき乱され、この乱流が車体へ影響して、大きな空気抵抗(Dragと呼ぶ)を発生する。

フォーミュラーカーにおいて空力的に重要な区間は、車体底面と前後のウイングの流れの3点である。
タイヤが巻き起こす乱流は、この重要な3点の流れを乱し、空力効率を著しく悪化させてしまう。

そこでタイヤの巻き起こす乱流を整流する為に、サイドポッド側面の形状で空気の流れを絞る事で整流している。
具体的には、上から見て翼断面となっているサイドポッド側面で気流を絞り、この部分の流速を高めて気圧を低下させ、
この低圧部に乱流を引き寄せ、且つ空気を絞り込む事で乱流を整流している。

その為、タイヤが巻き起こす乱流を整流する為には、サイドポッドはなるべくタイヤと同じ高さである事が望ましい。
しかしサイドポッドを高くすれば、リヤウイングへの気流供給量が少なくなってしまう。

そこで筆者は、サイドポッド上面の内側を低くし、外側を高くするデザインを発案した。
筆者のこのアイデアの発案時期は1991年の終わりか1992年の初頭くらい(13才頃)であったと記憶している。
F1GPで初めてサイドポッド上面に段差を付けたマシンを登場させたのは1994年のベネトンであり、
筆者の方がF1界よりも2年程このアイデアを先取りしていた事となる。




1994年当時、サイドポッドの最大幅は車体中心線から左右へ700mm以内であった。
当時はまだドライバーの頭部を保護するサイドプロテクターの規定が導入されていなかった為、
サイドポッド上面の内側を低く、外側を高くできるデザイン・スペースが有った。


しかし1996年からドライバーの頭部を保護するサイドプロテクターの規定が導入された為、
コクピットの幅は、最低でも車体中心線から左右へ580mm必要となった。
これにより外側の高いサイドポッドとコクピット側面との空間が狭くなり、
デザインの余地が厳しいものとなった。
気流の通路が狭いと空気抵抗となる。

そこで段差付きサイドポッド車としたチームの多くは、
段差を控えめなデザインとしたり、フラットな上面へ戻したりしていた。


グランプリ トクシュウ」誌の6月号に拠れば、
2009年度のF1テクニカル レギュレーションのボディワーク規定は、
サイドポッドの最大幅は車体中心線から左右へ800mm以内と、2008年までよりも200mmも拡大された。
そして左右のタイヤの装着可能範囲も、2008年までの1800mm以内から、2000mm以内と200mmも拡大された。
この車幅の拡大は、車体底面と前後のウイングの空力効率を高める事となる。
安全面でも、側面衝突時の衝撃吸収力が高められる。

そして、このサイドポッド最大幅の拡大は、
従来よりもこの部分に100mmもデザインスペースが増加した為、
サイドポッド上面に段差を付けたデザインを復活させる可能性も生み出す事になると考えられる。
規定による側面衝突時の衝撃吸収能力テストにパスする為にサイドポッド上面内側はあまり低くはできないが、
サイドポッド上面に段差を付けるデザインは十分に検討価値があると考えられる。




2008年 8月11日のこのページの更新で、

> 2009年度のF1テクニカル レギュレーションのボディワーク規定は、
> サイドポッドの最大幅は車体中心線から左右へ900mm以内と、2008年までよりも400mmも拡大された。
> 従来よりもこの部分に200mmもデザインスペースが増加した為、

と書きましたが、実際には、

2009年度のF1テクニカル レギュレーションのボディワーク規定は、
サイドポッドの最大幅は車体中心線から左右へ800mm以内と、2008年までよりも200mmも拡大された。
従来よりもこの部分に100mmもデザインスペースが増加した為、

の誤りでした。お詫びして訂正します。

(このページの最新更新日:2008/ 8/17
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