ルノー R24   text by tw (2004. 1.21 〜 1.23)

ルノーの2004年用マシン「R24」は、1月20日からテスト走行が開始された。

2004年のルノーの最大の課題はエンジンである。
ルノーは2001年から2003年の間、111度付近であるらしい広角バンクのエンジンを使い続けていたが、現段 階のこのエンジンでは、今年からの1GP/1エンジン規定へ対応する為の耐久性を達成できなかった為に 、2004年は72度程のオーソドックスなV10エンジンで凌ぎ、2005年から90度バンクのエンジンを投入するプ ランであるらしい。

2004年のエンジンのベースは、過去にルノーが設計し、スーパーテックの名称で2000年までグランプリで使 われ続けていた71度(であったらしい)バンクのエンジンであると言われているが、振動の害を最小限に抑 える等間隔爆発とするには、V10エンジンではバンク角は72度である。
2004年のルノーのバンク角度は何度だろうか?



下の表はバンク角の異なる3種類のエンジンの、筆者の考えるマシン性能へ及ぼす要素の一部。


バンク角72度90度110度 
重量 ×軽い程にバラストに置き換える事ができて車体性能面で有利。
重心高×低い方が荷重移動が少なくなり車体性能面で有利。
全幅 ×広過ぎるとラジエーター・カウル内の通気性で不利。
出力 ×トルク変動や吸排気効率に影響。左右の吸気管の距離も変わる。
振動 ×エンジン以外のセクションの耐久性にも影響及ぼす。
耐久度× 


エンジンの振動が大きい程に、エンジン本体だけでなく周辺のクラッチやトランスミッション、油圧系統や 電気部品等に、必要な耐久度を満たす為に強度や工夫が必要となり、エンジンや車体の総重量が増えてしま う筈である。
その他にエンジンの振動は、ドライバーが車体の挙動を感知する妨げや、疲労の蓄積、視認性の悪化といっ た悪影響も考えられる。


72度エンジンの欠点は重心の高さだが、余計な振動対策の重量増加の無い分、その分をウエイトへ変換して 重心を下げたり、前後重心位置を変更できるメリットが有る。

上の表の要素だけでは72度が有利の様になってしまうが、エンジンには他にも様々な要素が有るし、傾向を 単純に表では表わせない要素も有る。
その一つはエンジンをストレスメンバーとした際の車体の剛性面で、バンク角が狭いほどに上下方向の曲げ に強く、横方向の曲げに弱くなるが、広角の場合でも2001年から2003年のルノーの様にフレームを使用する 事で一概に有利不利が決められなくなると思う。


ルノーの2004年用エンジンは、開発期間が短くても、広角エンジンの開発で得たアイディアやノウハウを生 かせれば単純にゼロからの開発とはならないと思われる。
2004年は狭角バンクとする事で2003年よりも重心は高くなってしまう筈だが、代わりにエンジン出力は昨年 よりも大きいかもしれない。
ルノーは昨年とは異なるコンセプトと性格の車体パッケージで、2004年をどう戦うか注目である。
筆者は個人的には、72度が、90度や110度よりも必ずしも不利とは考えてはいない。



R24のノーズ上面先端の角度は、空気を自然に迎え入れられる様な穏やかラインであり、この部分の空気抵 抗が少なそうに思う。
但し、姿勢変化や気流の変化にやや敏感な空力特性となる可能性も思う。

ノーズ下面のラインは、昨年よりスラント度が穏やかになり、ノーズ先端が高くなった模様。
2003年のマシンのノーズ・スラント度は、筆者はどうしても大き過ぎる様に考えて居たが、空力は車体全体 で考慮しなければならないので、ノーズのスラント度だけをとりあげて正解不正解は一概に言えないと思う。


フロントのメイン・ウイング形状は昨年とは違い、中央が上がるウイリアムズ、マクラーレン風となった。
こちらの方が、スラント・ノーズが吸い上げるフロント・ウイング下面の気流の安定性が高いかもしれない。

ウイングステーは強度をつける為にRをつけてあり、この形は、1991年のベネトン時代に「ハイノーズ・吊 り下げ式フロント・ウイング」を初登場させた時と同じもので、発案されてから13年経つ現在でも十分に通 用する、合理的で優れたデザインであると思う。
しかし今後ショートノーズの空力コンセプトが有利となっていけば、上記のデザインのステーは姿を消して いく事となる。


ノーズ下面はスラント式だが、フロント・ウイングのフラップ中央部はあまり大きくは延びていない。

フロント・ウイング翼端板は、マクラーレンがMP4-19で登場させた、翼端板の上部が内側に傾斜しているも のとなった。ただMP4-19の物よりも傾斜度は穏やかとなっている。

翼端板の下面は、ルノー・オリジナルのトンネル状を継続。
翼端板のサイドフィンは間隙式の2枚構成。



今年もルノーはフロント・サスのアーム角度が車体側からタイヤ側へ持ち上がる方向となっている。
筆者は2003年のルノーのコーナリング速度はトップクラスであったと思うが、ルノーは同じミシュランユー ザーのウイリアムズやマクラーレンとはアーム角度が逆方向であり、このフロント・サスの考え方の違いが 興味深い。



ディフレクターは前後2段構えで、前輪内側には背の低いディフレクターが配置されている。
後側の大きめのディフレクターの上側のラインは、後端の背が非常に低い。この部分は、サイドポッドの形 状とワンセットで考えなければならない。

サイドポッド手前のモノコック側面下部は、ノコギリ型のプレートで車体下への気流の進入を調整している。

サイドポッド前側下部は、2003年のフェラーリを習った、3D形状の大きな絞り込みとなった。


(このページの最新更新:2004. 1.23

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