ザウバー C22   text by tw  (原文:2003. 1.22 / 再編集:2004.12.13)

SAUBER PETRONAS

(今(2003)年もフェラーリ製のエンジンを搭載し、名称はペトロナス。)
(以下の通り略す)
DFダウンフォース
Drag空気抵抗
Fwフロント・ウイング
Rwリヤ・ウイング
レギュレギュレーション
 


ザウバーの2003年用F1マシン「C22」は、ここ数年のザウバーマシンを、
フロントをフェラーリの2001年風に、リヤはフェラーリの2002年風にした感じで、
且つフロントサスはツインキールなので、全体的にDFの大きそうな構成。

ここ数年ザウバーは空力開発の方向が迷う事なくハッキリしている点はとても良いと思う。
ただ、全体的にシンプルなデザインだが、各部分で角の形状がシャープで、そこで渦が発生していそう。



Fw前端の、両端部分は僅かに上に反らせて、翼端の流れに細かく配慮している。
翼端板内側の三角フィンは直線的で流れが悪そう。何故もっとRをつけないのか疑問。



ノーズは2001年のフェラーリの様に大きく下げて、ノーズ下面の広い空間へ、Fw中央からの流れを多く迎え込んでいる。
この手法は、車体全体のDF分布を見た時に、もっとフロントにDFを得ようという開発方向だが、
こうしたデザインとする場合には、リヤのDF量も十分に確保できている必要がある。

下げたノーズとツインキールの組み合わせはフロントのDFが大きく採れそうだが、
左右のキール間が狭いと干渉抵抗で流速を多少は損なうかもしれない。

C22はノーズの角も角張っており、上面からこぼれる気流や、下面へ巻き込む気流の特性がピーキーそうに思うが、
それとこのキールの間隔(モノコック前端と同じ幅となっている)との組み合わせはどうか。



フロントの後側のロワアームも、モノコックからキールを出して接続しているが、
この後側キールは、モノコック下部のセパレーター周辺の流れを制御しているかもしれない。



モノコック脇のディフレクターは、フェラーリの様にモノコックと離れぎみの位置で、形状も似ている。

モノコック脇に小さく冷却口が有るので、ここには電気系統を配置してあると思われる。



モノコック下部のセパレーターからサイドポッド下部への流し方は、前年までとは変わった。

サイドポッド下端の手前の小型プレートは有る模様。これは車体下への気流を制御する為の物。



サイドポッド上面の前端は流行に乗らず薄く、Dragが小さそう。



昨(2002)年と異なり、ドライバー2人(フレンツェンとハイドフェルド)に身長差が有るので、
今年はドライバーの位置と姿勢、背中の下の燃料タンク形状等で、
ドライバーの体型に特化したパッケージレイアウトとは出来ない。

C22は、長身側に合わせて頭部の位置は高く、安全面、エンジンへの吸気、車体空力面で損だが、
長身ドライバーは寝かせればモノコック下部のセパレーターが前寄りとなってしまい、
その損得を考えた結果のシートポジションなのかもしれない。

ヘルメットの高さに比べてヘッドレストが低く、ヘルメットの後流が乱れないか疑問。



サイドプロテクターの前側は、前方へなだらかに延ばすタイプではなくなった。
後部は、左右の気流を合流させるタイプ。



サイドプロテクターとエンジンカウルとの間の溝は深め。
この部分では干渉抵抗が大きそうだが、車体全体で見れば低リフト/低Dragの空力設計と出来る様に思う。



2001年のフェラーリ似のインダクションポッドだが、ロールフープの前後長は短い。
ロープの穴は、やはりマクラーレン式。



コークボトル絞り開始位置は前寄りで、
そしてサイドポッドの上下2段式のフィンが、後輪へ向かう気流を上方に向けて、
それは同時にコークボトル下部の空間を大きくしている。

この様にコークボトル下部の空間を大きくするデザインは、
前輪からの乱流や、車体下面が横方向から吸い込んでしまう気流や、後輪へ向かう気流に、効果的に対処するデザインに思う。

ただC22の場合、上段のフィンとサイドポッド上面の周辺は、まだ工夫の余地が有ると思う。



昨(2002)年からのフェラーリを真似て、
車体上面の後部を低くするデザインと、排気流をサスアームに当てない事を両立する為に、
排気はカウル表面よりも上方に進路をとり、半筒状トレイで排気流の筋道をつけている。

ただ、現時点のC22の半筒状トレイの下面は疑問で、
フェラーリの様にカウル内外をハッキリと流れに沿う様に区切るべきと思う。



コークパネルやリヤカウルが、後輪前端辺りで終わっているのも昨(2002)年のフェラーリと同様。
カウル内の気流を後方へ乱さずに流せていれば、内部抵抗が少なくなって良いかもしれない。
その為には、ミッションケース幅を狭く、コークパネル絞り込み幅も狭く出来ている必要があると思う。



ザウバー独特だったセンター・ディフューザーは一般的な手法となり、サイズも大きめでDFが大きそう。
もしかすると昨(2002)年のフェラーリの様に、Rw下段と一体式となっているかもしれない。



[総括] 昨年よりかなり全体のDF量が増えたと思う。 今年もトップレベルではないが揚抗比は良いと思う。
ただ、長身ドライバーの損は多少ある筈。
シーズン序盤はかなり速いと思うが、例年同様、中盤以降の開発はどうか。

(このページの内容は、2003年 1月のものです。)

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