ザウバー C30   text by tw  (2011. 1.31月)


2011年 1月13日(月)、ザウバーの2011年用マシン「C30」が公開された。

昨年から引き続きフェラーリ・エンジンを搭載する。 以下、概観から筆者の私見を記す。



今季もかなりのハイノーズ、ハイ・フットボックスのマシンとなった。
これは、とにかく大量の気流を車体下方そして側面下部へと導き、そのエリアを高速低圧域として、
なるべく少ない空気抵抗で、大きなダウンフォースを発生させようと云うコンセプトである。

モノコックのフットボックス上面を観ると、コクピット開口部から前方へ上昇している様で、
コクピット前方で最も高くなっている位置は、ピトー管のあるモノコック先端とノーズコーン後端の部分で頂点となっている様だ。
これはフットボックス下面も、路面と大きな空間を持っていると云う事で、空力性能に大きく寄与する。

今季もフットボックス下に、湾曲した、「漢字の八の字」のベーンを装着している。
これは大切なノーズ下の気流を整った状態で後方へ流そうと云う意図が読み取れる。



フロントサスは、だいぶ設計が見直された。まずロワーアームはミニ・ツインキール接続とされた模様で、
車体を前から見た上下アームの角度は、まだ少しは下さがりしているが、フロントのロールセンターを昨年より低めている。

タイロッドはアッパーアームと同じ高さに戻り、空気抵抗を軽減している。

プッシュロッドの車体側取り付け位置は、モノコック上面よりやや低めで、
この高さからして、ピッチコントローラーは、トーションバー(=ロッカー回転軸)より上側に装着していると推察できる。
その場合、立体ロッカーで下側配置のプルストローク式よりも整備性が良いであろうし、構造も簡単で済む。

前輪のブレーキダクト上下に2つ開口しており、おそらく上側がディスクを、下側がキャリパーを冷却していると思われる。



フットボックス下方のダミープレート上面のセパレーターは無難な形状をしている。
空力デザイン的に突き詰めた形状ではないかもしれないが、空力挙動の安定性は良さそうだ。

サイドポッドも今季も引き続き、両端へやや高くされている。これは前輪が巻き起こす乱流を整流する効果を期待できる。

ラジエーター・エア・インテークは一新され、四角形となった。これの賛否は意見が分かれると思う。

アンダーカットは大胆に深くされ、大量に引き込んだノーズ下の気流を迎え入れている。
サイド・ディフレクター上縁は、階段状に3つの段差がつけられ、
そのエッジで意図的な渦流を発生させ、後流へ運動エネルギーを供給し、空力デザイナーの狙う気流進路へと制御している。



インダクションポッド下のセパレーターはマクラーレン風となった。
これにより後流の調整と、モノコック側面に邪魔な穴を開けずに済む。

今季もサイドプロテクター側面下部を、規定で許されたエリアをルーバースリットにして熱気を排出している。

ラジエーターを抜けた、運動エネルギーが低下した熱気は、ディフューザーへ流すと空力効率が悪い為、
エンジン・カウルの後ろ側を、2009年からのレッドブル風の大砲型・排気として、そこへラジエーターからの熱気を排出している。

サイドポッドのカウル後端の下部には、排気管が見える。
これは昨年レッドブルが先鞭をつけた、[吹きつけディフューザー]を採用している事を示す。
その更なる証拠として、リヤサスのロワアームに銀色の耐熱処理を施してある事で確認できる。

リヤサスは、無難にプッシュロッド式のままとされている。

この「C30」は中団チームのリソースから考えれば、開発の「攻め」が感じ取れると思う。
設計者の狙いと云うか計算が外れていなければ、日本のファンは今年も楽しめるかもしれない。そう願おう。

(このページの最新更新日:2011. 1.31月)

Site TOP ザウバー BMWザウバー