トヨタ TF108   text & by tw  (2008. 1.11〜 1.13)

2008年 1月10日、トヨタの2008年用マシン「TF108」が発表された。
写真は、GPUpdate.netや、F1-Live.com等を参照。
以下、概観から筆者の私見を記す。
各部パーツの呼称については、[各パーツの名称]ページを参照。


記事によれば、シャシー部門シニア ゼネラルマネジャーのパスカル・バセロンは、
TF108は昨年度のTF107よりもホイールベースを延長したとコメントしたという。
これにより、マシンは荷重移動が発生した際のグリップ変動が減少し、
また一方で、規定上、サイド ディフレクター周辺の空力開発の自由度も大きくなる。
ホイールベースとマシン性能については、フェラーリF2008のページを参照。



フロント ウイングは昨年のマクラーレンを真似たブリッジ式の上段フラップとされた。
これでノーズ先端は上下フロント ウイングの空間に挟まれる形となる。

ノーズ先端は低くされた。
ノーズ先端の高さは、そのマシンの空力コンセプトが反映される。

ノーズ先端が高ければ、多量の空気を車体底面へ供給でき、車体中央からリヤへかけての最大ダウンフォース発生量の上限を高められると考えられるが、しかし一方でノーズコーンがフロント ウイングの気流の向きと合わずに気流進路を阻害しがちとなってしまう事が考えられる。

ノーズ先端が低ければ、車体底面へ供給できる気流の最大量は少なくなってしまうと考えられるが、ノーズコーンをフロント ウイングの気流進路に沿った形状とする事が出来、フロントの最大ダウンフォース発生量の上限を高められると考えられる。

よって、ノーズ先端が低いマシンは、フロントのダウンフォース発生量の上限を高めたいコンセプトである事が考えられる。
また、車体の前後 空力ダウンフォース発生中心位置が前寄りならば、車体の前後重心位置も前寄りに設定されていると考えられる。



フロントのメイン ウイングは規定で許された区間で前方へ延ばしてあるが、上段フラップはほとんど前進させてはいない。
規定で許された区間については、フェラーリF2004Mのページの右図を参照。

フロント ウイングの翼端板は前から見て「く」の字に曲がった形状。
翼端板の外側の水平フィンは小さい。
このフィンは、フロント ウイングの上段フラップ上側の高圧流が外側へこぼれる量を制御する。

(このページのここまでの最新更新日:2008. 1.11


フロントサスのタイロッド&前側のアッパーアームと、プッシュロッドには、
モノコック側に気流を乱さない様する為のカバーを着けている。

前側のアッパーアームは、昨年は上下にカーブした物だったが、TF108ではストレートで細めの物となった。

後ろ側のアッパーアームのモノコックへの取り付け部分は、規定で許されている範囲内で翼形状として後方へ延長している。
これは後傾しており、フロント ウイングが跳ね上げる気流の制御する役割があるかもしれない。

後ろ側のロワアームのモノコックへの取り付け部分は、モノコック下端よりも若干上側となっている。
この取り付け位置は、車体を横から見た時のロワアームの取り付け傾斜角に影響し、
ブレーキング時のアンチ ダイブ等のジオメトリー設定に影響を及ぼす部分である。

前輪ホイールの外側には昨年のフェラーリの真似をした無回転カウルが備えられている。



空力コンセプトは、ここ数年のアンダー ボーダー ウイング方式から、サイド ディフレクター方式にあらためられた。
このサイド ディフレクターの高さは低めとなっている。
サイド ディフレクター底面のプレートは昨年から流行している細かい工夫が施されている。
現行のフラットボトム・レギュレーションでは、構造物の端の部分に半径50mm以内の丸みをつける事が許可されており、
この規定を利用して底面プレート前端を丸く迫り上げ、気流を下面へ導いている。

ミラーはサイドポッド外側前方のサイド プレートで直接支持している。

サイドポッドは、前側下部が凹む様にして絞り込まれた。
昨年までのアンダー ボーダーウイング方式では、サイドポッド側面が直接前輪からの乱気流を受ける為にこの様な絞込みはできなかったと考えられる。
ただし今回のTF108でも、サイドポッド側面下部の幅が最大となる部分は狭くは絞り込まれていない。

フェアリングフィンは現在トヨタ独自の処理となっている。
後輪側面のフェンスを前方へ延長してフェアリングフィン内側の翼端板としており、
サイドポッド側面から流れ込んでくる気流はフェアリングフィン上面で受け止めている。
サイドポッド側面からフェアリングフィン上面へ流れ込む気流は流速が低下している筈なので、
この部分で高圧によるダウンフォースを得られると考えられる。
フェアリングフィンが勢い良く気流を跳ね上げているのはそれよりももう少し上流の区間の筈である。

フェアリングフィン下側には、補助のフラップを備えると共に、
後輪へ向かう気流をカーブさせる縦のベーンが建てられている。



新規定となったサイドプロテクターは無難な形状とされた。気流は上方にも横方にも向かうと思われる。
サイドプロテクターとヘッドレストとの間の溝は浅めとなっている。

ロープを通す穴はヘッドレストの後ろで縦に開けられている。
これではこの部分を通過する気流を乱してしまうと思われるが、
気流を乱さないマクラーレン式としないのか筆者は疑問に思っている。

インダクションポッドのミッドウイングは、規定最大幅よりも短くされた。
このウイングには後退角がつけられ、後流を制御しよいうという意図が読み取れる。

エンジンカウルの後ろの部分は規定で必要な区間を残し、空力的に不要な面は切り取ってある。
不要な構造物が有ると境界層が発生、成長してしまう為、空力的に不要な部分は存在しない方が良い。



フェラーリに習い、後輪ホイールの外側にもカウリングがされている。
駆動輪の後輪は無回転カウルとは出来ないので、回転中心に排出口を開けている。

テールライトの下部は丸みをおびて下方へ膨らんでいる。
これはこの部分で一旦気流を絞り、その後、気流を跳ね上げ、テールライトの後面へ気流を供給する為の処理と思われる。

上段リヤウイングは翼端渦を軽減する様にデザインされており、ウイング両端は下面を持ち上げている。

リヤウイングの翼端板は、昨年の凝った3D形状から、側面がフラットな物へと戻された。

翼端板の上縁の後端は丸く切り取られている。これにより気流変動が穏やかになるかもしれない。



TOYOTA TF108 スペック(公表値)
全長4636mm
全幅1800mm
全高950mm
車重605kg (ドライバー及びカメラ含む)
エレクトロニクストヨタ/マグネッティマレリ社及びマクラーレン システムECU (FIA規定に則る)
トランスミッション7速+後退ギア
タイヤブリヂストン社製
ホイールBBS社製 鍛造マグネシウム
ダンパーペンスキー社製
ブレーキブレンボ社製キャリパー&マスターシリンダー、ヒトコ社製ディスク
ステアリングトヨタ製パワーステアリング
ステアリング表示板トヨタ/マグネッティマレリ社製
燃料タンクATL製安全タンク
ドライバーシートカーボンファイバー製
シートベルトタカタ社製
HANSデバイスHubbard-Downing社製


TOYOTA RVX-08 エンジン スペック(公表値)
気筒数8
排気量2398cc
最高出力およそ740馬力
最高回転数19,000rpm (FIA規定に則る)
スロットル油圧駆動
スパークブラグデンソー社製
燃料エッソ社製
オイルエッソ社製

(このページの最新更新日:2008. 1.13
Site TOP トヨタ index