ウイリアムズ FW28   text by tw (2006. 2. 2)


ウイリアムズの2006年シーズン用マシン「FW28」は、2006年1月27日に発表された。
写真は、F1 Live.comや、F1Racing.jp等で参照。

ウイリアムズは、2001年にミシュランがF1GPに復帰した当初から同社のタイヤを使用してきたが、
今(2006)シーズンからはまたブリヂストンへチェンジした。
既にミシュランが今シーズン限りでF1から撤退する事が決まっているので、
今シーズンのタイトル争いに絡む見込みの少ないウイリアムズチームは、
このタイミングでブリヂストンタイヤへスイッチする事は正しい選択かもしれない。

そしてエンジンも、2000年から使用してきたBMW製からコスワース製へ変更となったが、
今シーズンから2.4リッター・V型8気筒の新規定が導入された為、
エンジンの寸法が大幅に変わるという事情は他チームでも同じである。

以下、FW28の概観から筆者の私見を記す。
各部パーツの呼称については、[各パーツの名称]ページを参照。


[コンセプトと特徴]

フロントの空力は、昨(2005)年に最速マシンとなっていたマクラーレンMP4-20型のコンセプトが採用された。
ノーズ先端を低くし、ノーズ下面を持ち上げてフロントウイングからの気流を迎え入れ、
モノコック下面はロワアームを取り付ける為のキールを撤去し、
フロントの流れの邪魔をする要素を無くす努力をしている。

こういった空力デザインパッケージとする為に、フロントサスの上下アームを高く設置し、
且つ、アームには車体側からタイヤ側へやや下がる角度となっている。

ウイリアムズは1999年中盤からボーダーウイング型の空力パッケージとしてきたが、
昨(2005)年の第2戦目からは再びサイド・ディフレクターを付け加えた。
そして今回のFW28では、サイド・ディフレクターを前提にした空力開発が成された模様で、
サイドポッド側面下部の幅を狭く絞り込む空力デザインとなっている。


[フロントの空力]

ノーズ先端には小さな冷却口が開けられている。
フロントウイング・ステーは、ノーズ両端から下方へ向けて直線的に降りている。
ノーズ上面は、気流を若干左右へ分ける形状となっている。

フロント・ウイングは、メインウイング1枚+フラップ2枚の3段構成。
中央部を路面へ近づける為の湾曲は、シンプルなカーブを描いている。
シンプルなデザインの方が、コーナリング時の流れ方が複雑化しないで済むかもしれない。

テスト走行では、昨年終盤に登場させた上下2段式ウイングを使用した。
メインウイングの下面はスプリッター付き。
フラップは、ノーズ両脇の部分が後方へ延ばされている。
翼端板の底面プレートはトンネル状。
翼端板のサイド・フィンは使用していない。

フロント・ブレーキ・ダクトは斜め下方へ向けられ、フロントウイング下面の気流をブレーキの冷却に使用している。
この手法は、車速の高いストレートエンドでのブレーキ温度の低下を多少抑える効果があるかもしれない。

そしてこれは本サイトの掲示板に寄せられた情報で、
セナ・マークはメインウイング上面に貼られており、ノーズに隠れて見え難い。


[サイドポッドの空力]

昨(2005)年、ウイリアムズは非常に低いサイドポッドのコンセプトとしていたが、
今回のFW28では現在のF1で標準的な、最大高の高いデザインとされた。

サイド・ディフレクターを使用する理由の一つは、
サイドポッド側面下部の幅を狭く絞り込んだ区間に、
前輪の巻き起こす乱流が入り込まない様にする目的が考えられる。

サイドポッド両端の前側には、迎角が浅めのミドル・カナードを装着している。

サイドディフレクターの両端部分にはボーダープレートが装着され、
これは車体下面への流れ方を制御する役割もあるが、
このプレートが存在する事で、サイドポッド前側のカナードを設置してもフラットボトム規定を満たす事が出来る。



ラジエーター・チムニーの排出口は大きく、横側へ向けたタイプ。
これはトヨタTF106も同様で、それついて先日、F1der誌に童夢の空力エンジニアの見解が掲載されていた。それによれば、 ラジエーターを通過した空気は流速が低下しており、この遅い流れをコークボトルエンドから排出するとディフューザーやリヤウイングの効率を低下させてしまうので、ラジエーターを通過する流量の多くをチムニーで排出しておく事で、コークボトルエンドを小さく済ませる設計となっている、という解説であった。



サイドポッド上方のミニウイングは間隙フラップ式で、ウイング外側は上面に翼端板が無いタイプ。
そしてミニウイングとフェアリングフィンとの間にはミドルフラップが設置されており、これも間隙フラップ式。

サイドポッド側面でフェアリングフィンが始まる位置は低めとなっている。

後輪手前の縦のベーンは前後長が短い控えめな物で、上部が前進する形でややカーブしている。
この縦のベーンを設置する事で、フェアリングフィンとアンダーパネルを接続し補強できるので、
アンダーパネルを多少は薄く設計できるかもしれない。


[コクピットからリヤボディへ]

サイド・プロテクターの規定を満たす為のフィンは大きめ。
プロテクター上面のラインは緩やかで、リフトは発生するかもしれないが抵抗は少ないかもしれない。

ロープを通す穴は、エンジンのシュノケール型インテークの下側に作り出すタイプ。

ミッドウイングの幅は、規定一杯までは使っていない。

エンジンカウルの側面は、後部が急に絞り込まれているのが特徴。
この部分でリヤウイングへの気流の向きやボディ上面の圧力の制御を行っているのかもしれない。
尚、ボディワークの規定で必要な上の区域がプレート状で残され、不必要な下の部分は切り取られている。

エンジンの排気は排気用チムニーから行っている。


[リヤエンド]

リヤブレーキ・キャリパーは、重心を低くする為にディスク下側のやや後ろ寄りに配置されている。
真下ではなくやや後ろ寄りに配置されている理由はロワアームを避ける為。

センターディフューザー側面のフェンスは、下部が内側へカーブしているが、
その縦のラインが他チームの様に緩やかなカーブではなくメリハリのついたカーブとなっている。

テールライト上面は、この辺りの気流の向きに合わせる為に上方へ向けてあり、
そして気流が左右へこぼれない様に、上面の両端を持ち上げるカーブをつけてある。

リヤウイングの上段は、ウイング両端の下面を高くして、翼端渦を抑制するタイプ。
そして翼端板のスリットから、ウイング上面の高圧を外側へ排出して、翼端流を制御している。
翼端板は、2005年からトヨタが登場させた立体的なタイプだが、
フラップの後端で翼端板を一旦切り欠いた後方でまた高くなる形状とするのはウイリアムズ独自の形状。

(ここまでの最新更新日:2006. 2. 2
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