(このページの内容は、2001年12月のものです。) | |||||
1. |
ノーズ下とフロントウイング中央のフラップがかなり接近している。 ここで気流を絞る事でノーズ下部とその付近の流速が上がり、 その流れにフロントウイングからの気流はつられる様にして速いまま後方へ流れ、 そして車体下へと速い気流を上手く吸わせられる、という狙いなのかもしれない。 この場合フロントウイング中央の後流は、 発生できたダウンフォース量の割りに上方へは広がって行かず、 且つ翼下後方で渦を起こし変動する量も少ないのではないかと思う。 ただ、風洞を使った事のない筆者には、ノーズ下とフラップがこれだけ狭くて 上手く流れるものか少し疑問に感じる。 | ||||
2. |
フロントウイングのスプリッターの向きは、 湾曲したフロントウイング下の流れ方と、前輪の影響を全体的に捉えて 調整された印象を受けた。 | ||||
3. |
ディフレクターの位置は、モノコック側面とかなり接近している。 この空間の取り方は、車体下、ラジエーターインテークへの流れ方と、 その気流の変動具合に影響を及ぼすポイントと思われる。 | ||||
4. |
モノコック前端上面の、ピトー官の両サイドに穴が有る事から、 フロントサスはフェラーリやBARの様に、 「トーションバーの先端にレバーが有り、モノコック上面にリンクさせ、 ノーズコーンを装着したままプリロード調整可能なタイプ」かもしれないが、 それにしては2つの穴の間隔が広い為、他の何かの可能性もあるかも知れない。 | ||||
5. |
その後方では、サービスホールのカウルに、穴が6つ有るが、 カウル止めなら3〜4つで足りるし、サイズも大きめなので何なのか不明。 もしカウル内面に電気系を取り付けたとしたら、整備性で便利な事があっても、 やや強固な造りとする必要があるので重くなるし、 場所が高いので重心高も上がってしまう。 | ||||
6. |
フロントサスのアッパーアームは、 後ろ側のアームは、モノコック側の取り付け位置が他車より高めに見える。 サス・アームの取り付け位置と角度は、加減速時のノーズの浮き沈み具合に影響を及ぼす。 | ||||
7. |
プッシュロッドの角度を立てる為に、モノコック上角は切り欠いてあり、 サスの作動性を優先して、モノコック剛性は少し犠牲にするタイプ。 これはデザイン上、「左右のロッカーで、サードダンパーを挟むレイアウト」とする事が難しい為、 「サードダンパーはT字アンチロールバーにリンクさせたタイプ」かもしれない。 後者の方が前者より低重心だが、サードダンパーの作動のし易さはやや劣ると思う。 | ||||
8. |
コクピット開口部は、99年からのミナルディと同じく、 ドライバーが膝を上げた際に当たる箇所を切り欠いたデザイン。 これはモノコック剛性が不利で、コクピット内へ巻き込む気流も増えてしまう様に思う。 | ||||
9. |
サイドプロテクターの上面は、前半区間のラインが急に立ち上がっているが、 これはプロテクターの後半区間へ向かう気流に「回り込むような慣性力」を与えて、 後半区間で気流を沿い易くする狙いなのかもしれない。 しかし、これは前半区間の抵抗と、横方向へと乱れる量は増す様に思う。 安全面でこの形状は、斜め前方へ頭部が振られた際にプロテクターとしての役割は劣り、 これは筆者は個人的に好まない。 | ||||
10. |
ヘッドレストとサイドプロテクターとの間には通路が設けられている。 筆者も1995年の秋頃に、こういった通路を設けるアイディアは考案していた。 | ||||
11. | サイドポッド上面は厚いが、側面衝突対策でここには厚みをつけざるをえない。 | ||||
12. |
空力的にサイドポッド外側の重要な仕事は、筆者は主に以下の2つだと考えている。
この2つからは、サイドポッド側面のベストな形状は翼形という事となるが、 翼形である以上、その形状によって速度域で特性が変化する事を意味する。 一概に善し悪しを言い切れないが、今筆者が持っているイメージからは、 どうしても TF102のサイドポッド側面の「後方へ絞り込み始める箇所」は後ろ寄り過ぎな気がする。 | ||||
13. |
サイドポッド開口部の形状は、サイドポッド側面の下方へ多く気流を導くタイプ。 そして、サイドポッド側面の前半分の形状も最近のトレンドに添った形。 (この形状を文章で表現すると大変面倒だが、) まず、サイドポッドの「前半の絞り区間」の側面はリファレンスプレーンから垂直で、 後方へ幅1380mm程まで広がった所で、サイドポッド前半の最大幅となる。 そして、ここから後方へは、側面下部の幅だけはこのまま広げずに、 アンダーパネルと側面上部が幅1400mmまで広がる事で、 サイドポッドの後半は「僅かに逆台形」となっている。 上方から観た写真で、「サイドポッド上面の両端」から 「フェアリング兼アウトレット(最大幅まで使いたい)」がストレートに繋がっている事から、 サイドポッド側面上部の後半の幅は1400mmの筈である。 こういった処理は、サイドポッド側面の下方で速い流れを作り、 「前輪が回転する事で発生した乱流」を若干下方に抑え込む様にして絞る事で、 この乱流に安定して対応し、 サイドポッド側面からコークボトルへの吸い込み具合も安定しそうに思われる。 | ||||
14. |
サイドポッドの側面下部をアンダーパネルよりも僅かに狭幅とした事で、 サイドポッド下端は薄いフィン状となっている。 このフィンは、「サイドポッド前半の側面下部」の気流を、 コークボトルが吸う分と、アンダーパネルが吸い込む分とを、 多少はキチッと分け目を付けてやり、気流の安定度を上げる役割と、 「サイドポッド両端から車体下へ巻き込む気流」に対してのガーニーの働きをして、 気流変動を穏やかにする目的ではないかと思う。 | ||||
15. |
フェアリング兼アウトレットの丸いデザインが、このマシンの見た目で特徴的な部分。 フェアリングの上側は、高さ方向に規定一杯に物を置く事よりも、 後輪、リヤウイングへの流れを意識したデザインとなっている。 (筆者の感覚では、両端はもう少し上方向へ流す様にした方が良いと思う。) アウトレットから排出したエアが流れている所の付近に、排気管の出口が有る為、 スロットル・オン時には流速が上がり、ラジエーター通風量が少し増すかもしれない。 | ||||
16. |
フェアリングの下側は、 サイドポッド側面からの気流を、後輪の回転方向に合わせる様に一旦下方へ向ける形状。 コークボトル自体は、下部を斜めには絞らないタイプ。 コークボトルは僅かでも斜め絞りの方が、フェアリング下と流れがマッチする様に思うが、 そうすると絞り込みが強過ぎたのかもしれない。 フェアリング下は翼形の為、この部分でも少しダウンフォースを発生していると思う。 | ||||
17. | リヤサスは(写真でよく確認できなかったが)、トーアームは大型の空力アームの様に見える。 | ||||
18. |
現在F1では7速ミッションが主流の中、TF102は発表によると6速。 筆者の素人考えに、 前進6速+後退1速=奇数となり、 わざわざリバース・ギアの為だけにもう1つシフトフォークが必要ならば、 前進7速+後退1速=偶数の方がミッションの「重量と嵩あたりの効率」が有利なのではと思う。 それとも、滅多に使われないリバースギアの作動にはシフトフォークは使用せず、 リバース専用の軽量な機構を用いているのだろうか? | ||||
19. |
車体のパッケージとミッションの関係について。 まずミッションの全長に関しては、 現在のマシンパッケージ的に(特にエンジンが前後に短い事から)、 ギア1枚分の長さ重さの違いよりも、ギア1段の有無の性能の違いの方が重要に思う。 シャーシ面で7速車に対する6速車のアドバンテージは、 減量分バラストを増やせる事と、少しだが車体中央へ向かって物を詰める事ができ、 車体の慣性モーメントを縮小できる事が主なものだと思う。 7速車と6速車を比較して、例として7速車からギア1枚分を取り去ると、 その分、重心が前に移るが、これを 「同ホイールベースのまま、車体の基本レイアウトの変更で元と同じ“前後重心位置”とする」 には、以下の2つがある。
だが、エンジン搭載位置を後退させると、 エンジン後端からギヤボックス側面へ向かって急に絞り込む形となるので、 空力的に不利となる場合があると思う。 これを理由に、エンジンを後退させずに車体の前後重心を後方へ移したい場合は、 バラストを移動させれば簡単である。 目的が車体の慣性モーメントの縮小であるならば、バラストを後退させる条件として、 元々「バラスト自体の前後重心位置」は、 「バラスト抜きでの車体の前後重心位置」よりも前方に位置していなければならないが、 近年モノコック下のダミープレート上面にバラストを置く場合にあえてプレート前端へ搭載したマシンが見られた事や、 他には単に筆者の個人的な観た目だが、車体のパッケージレイアウトが後ろ寄りの感じを受ける事などから、 バラスト重心は車体重心よりも前に有るのではと想像している。 | ||||
20. |
6速という選択について。 ここでは7速のパッケージが有利という前提に基づいての考えとなってしまうが、 TF102の開発チームは、「6速のパッケージが総合的に有利」と考えて6速を選択したのか、 それとも7速のパッケージが有利という考えでも、 「戦略上の理由(一部のコースで有利・車体パッケージが若干有利)」から6速を選択しているのか、 これが後者であれば、個人的にはどうかと思う。 後に7速化する事となると、熟成していきたいエンジンの開発もそれなりの影響を受けるのではないだろうか。 | ||||
(このページの内容は、2001年12月のものです。)
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