トヨタ TF104   text by tw (2004. 1.18 〜 2.28)

TF104は全体的な印象は昨年のマシンとあまり変わらず、TF103の進化型であると思われる。
ノーズは昨年とほぼ同じ様なデザイン。
フロント・ウイングは、TF104のテスト初期段階ではTF103と同タイプの物を装着していたが、後のテスト でメインウイングの上下カーブやフラップ形状の異なる物を装着している。
ウイング下面はスプリッター付き。
フロント・ウイング翼端板は、昨年ルノーが導入してトヨタも追従したトンネル形状を引き続き使用。
翼端板のサイド・フィンは翼端板の後端まで延びている。

トヨタの昨年までの空力コンセプトは、「サイドポッド手前にディフレクターを置くタイプ」が基本で、 シーズン中に何度か「ボーダ・ウイング・タイプ」を試す事をしていたが、今年のTF104では最初からボ ーダ・ウイング仕様での登場となった。その為に、前輪の内側にディフレクターが配置されている。

前輪のブレーキ・キャリパーの配置は後ろ向き。
後輪のブレーキ・キャリパーは重心を下げる為に下置き。キャリパーが真下ではなくやや後ろ側に配置され ている理由は、キャリパーがリヤサスのロワアームと干渉する為と思われる。



TF104が昨年のTF103と大きく異なる点は、フロント・サスと、車体の前後ロール軸である。
昨年車では、フロント・サスのアッパーアームは車体側からタイヤ側へ向けて降りる方向だったのが、今年 のTF104ではそれとは逆方向となった。
これにより、昨年と比べてフロントのロールセンターは低くなった。
リヤ・サスのアーム位置はあまり変化は見られない様なので、車体の前後ロール軸は、昨年よりも前下がり となっていると思われる。

このフロントサスの開発は、同じミシュラン・ユーザーであるウイリアムズやマクラーレンとは逆の方向 性となるが、この選択は今後のトヨタとミシュランの開発にどう影響するだろうか?



TF104ではボーダウイング・コンセプトとなった事から、モノコック下部のスプリッタープレートの辺りの デザインはここ数年のウイリアムズ風。
この部分は空力上重要な車体下への気流の進入具合に影響する部分である。


ボーダウイング上面は湾曲しジョーダンのそれの様に厚みがつけられ、形状は斧タイプだが角に丸みがつけ られている。
ボーダウイング上面の両端にはガーニーが付き、この部分のプレートは後方へ延びて、サイドポッド両端の 下部へ繋がっている。
但し、接続されているのは両端の部分だけで、ボーダウイングとサイドポッド前端との間には隙間がある。 この隙間が、ボーダウイングの空力コンセプトで重要な部分である。


サイドポッド・エアインテーク入口部分のモノコック側面は、2002年からのフェラーリの様に上方へ絞り上 げられており、モノコック下部のセパレーターから左右へ別れてサイドポッド内へ入る気流を吸い出す様に している。
このコクピット開口部前端の位置にあるモノコックの側面は、モノコック上端から400mmの高さがなければ ならないが、この規定の部分から後方へはルール抜け道となっている様である。こういった形でこの後方 を絞り上げるデザインとしたのは1999年のベネトンが最初であったと思う。

このモノコック側面の部分には、取り外し可能なカウルの線が見えるので、この内部には電気系統の パーツか何かが配置されていると思われる。



インダクションポッドのロープをかける穴は、昨年同様マクラーレン式の手法。
エンジン・エアインテーク下のセパレータ部分には、小さな穴が開けられている。これはエンジンルームの 冷却が目的だろうか?


サイドポッドは高めで、前方から見るとボリューム感がある。
インテークは下方へ狭める形状。これはサイドポッド周辺の、車体下面へ進入する気流に影響を及ぼす。

サイドポッド上の小型ウイングは、車体内側が小さく、外側が大きい形状。
このウイング形状の目的は、小型ウイングが跳ね上げる気流が、リヤ・ウイングへの気流を乱さない様にす る為と思われる。
TF104の小型ウイングは、上から見ると外側が前進している形状。



後輪手前のフェアリングは、昨年中盤以降の仕様では厚いウイング状となっていたが、TF104では他のマシ ンと同じ様なフェアリングの形状となった。

このフェアリングの取り付け位置は高く、跳ね上げ角度が少ない。
取り付け位置が高い事で、サイドポッド側面の気流の多くは、フェアリング下側のコークパネルへと流れる事となる。

サイドポッドの側面から後部への空気の流れ易さは、フェアリングの下側は低圧となるので流れ込み易い が、フェアリングの上側は圧力が高いので、流れが淀んでしまい、後方へ進み難い状態となっている事が 考えられる。
この様な状況が起きている場合は、サイドポッド側面のフェアリング取り付け位置は、高い方が車体自体の 空気抵抗は少なくできると言える。

一方、フェアリングの跳ね上げ角度が少ないと、フェアリング下側の気流の圧力はあまり低下せず、フェ アリング下側へと吸い込まれるサイドポッド側面下部の気流の圧力もあまり低下しない。
サイドポッド側面下部の気圧は低い程に、気流がこの部分(車体横側)から車体下面へと進入してしまう量 を少なく済ませられると思われるので、よってフェアリング取り付け位置が高ければ、車体自体は低ドラ ッグ/低ダウンフォース型となると思われる。


TF104のフェアリングは部分的に厚みが付けてあり、サイドポッド側面からフェアリング下方への流れ方に 配慮した形状となっている。

フェアリングから続く後輪側面のフェンスは、規定で許可されている後輪車軸の位置までは延ばしていない。
ここフェンスは、長い程に気流の安定性があり、短い程に後輪横側とフェンスとの間を通る気流の干渉抵抗 を少なくできると思われる。



排気チムニー(=煙突)は、周辺の気流の向きに合わせ、チムニー自体の向きを内側へ向けている。

排気管の後端は、昨年車ではフェラーリそっくりの縦長の形状だったが、TF104では丸くなった。
排気管の断面を円とすれば、排気管内を排気ガスが流れる際に触れる面積を最小とできるので、排気抵抗 の面で有利となると思われる。
排気管を縦長とする意味は、その車体の気流との兼ね合いで決められたものであると思われる。

TF104の排気は、トレイを設けて排気に独立した道筋をつけるタイプではなく、カウル上面に直に流すタイプ。



エンジンカウル後端の取り付けネジは、エンジンカウル中央のフィン状の部分を避けて、車体の左側で取り 付けられている。

サイド・ディフューザーのスプリッターはフェラーリの様に湾曲した形状。

リヤ・ウイングの翼端板は、手前側は後輪を避ける為に少しだけカーブしている。

リヤの下段ウイングは流行通りに、外側へ向けて大きく前方へカーブしている。
テールランプは縦置き。

センター・ディフューザー側面フェンスは、内側へのカーブが大きめ。
これは車体下からの後流に大きく影響する部分であると思われる。


    TOYOTA TF104 (発表値)
 全長 4547mm
 ホイールベース 3090mm
 フロント・トレッド 1425mm (前年発表値よりも+1mm)
   リヤ・トレッド 1411mm
 重量  600kg (ドライバー含む)
 エレクトロニクス マグネッティマレリ社製
 バッテリー パナソニック社製
 ダンパー ザックス社製/トヨタ
 ブレーキ ブレンボ社製
 エンジン トヨタ RVX−04 (3000cc ・ 10気筒 ・ V型90度)
 最高馬力約 約 900馬力
 最高回転数 約 19000 rpm
 スパークプラグ デンソー社製
 燃料&油脂類 エッソ社製
 ミッション トヨタ社製 7速セミAT
 キアボックス チタニウム
 タイヤ  ミシュラン社
 ホイール BBS社製 マグネシウム製
 ホイールサイズ フロント 13×13 / リヤ 12.5×13.7 (インチ)
 (昨年のホイール発表値) フロント 13×12 / リヤ 13×13.5 (インチ)

(このページの最新更新日:2004. 2.28

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