「空力デザインのやり方」

文章&イラスト by tw (りゅーき)
Web掲載日: 2019.11.27水

少し再編集: 2024年 8月16日(金曜)


過去に「空力デザイン作業」を経験された事がない方は、そもそも「空力デザインってどうやるの?」と思われるかもしれない。
そこで今回は、筆者の空力デザインのやり方の基本的な考え方を、このページへ記します。
ただし、筆者は社会的ステータスは空気力学デザインの専門家ではないし、あくまで書籍等から独学で34年間の考察から築いた理論内容である事をご承知頂きたく存じます。

このページで綴る内容が、もし事象として誤っている部分があれば、大変恐縮ですが、
お読みの皆様のそれぞれのお考えから、その問題部分の内容を改めて、ご理解頂ければ幸いです。
このページをお読みの方が空力デザインを行う際に、少しでも役に立てたら幸いです。

(所々、スケッチが少し雑ですが、その部分は補正する思考をお願いします。)



以下、気流が 左から右へ 流れている状況を示す。

この物体の空気抵抗を軽減するにはどうするか?



粘性の影響で、後半から流れが剥離(ストール)している。
物体の後方で空気の塊(ウエイク)を引きずっているので、それが空気抵抗となる。

その為、翼断面のカウリングをして、後半からの流れの剥離を防止すると良いだろう。



こういった形状を「ティアドロップ」(涙粒型)などと呼ぶ。
採用例はフォーミュラカーのサスペンションのアーム類など。



次は、四角形の物体では?



正面の高圧(正圧と呼ぶ)も、後面の低圧(負圧と呼ぶ)も大きい。
角の部分で気流を跳ね飛ばしてしまい、気流が大回りしている点と、
そして乱流を作り出している事も空気抵抗となる。
そこで、以下の翼断面カウリングの処理をしよう。



元の四角形よりも、上下に少しだけ断面積を増したところがポイントだ。
形状に平面の区間があると(粘性の影響で)境界層が成長してしまう。
境界層が成長すると、気流の運動エネルギーを削がれてしまう。
正方形くらいの四角形ならば、全体を「曲面」にカウリングした方が空気抵抗は少なくなるのではないかと筆者は考えている。


では長方形の場合は?(電車やトラックなど。)



この場合は前後長が長過ぎるので、全体を曲面とするのは良策ではないかもしれない。(前面投影面積が増し過ぎてしまうからだ。)



シンプルにこう。境界層の成長は、ある程度諦めなくてはならないかもしれない。
しかし、平面部分の表面をザラザラにすると、微小な渦流を発生して、結果的に流れが良くなるかもしれない。(採用例は海を泳ぐサメの肌など。)


後部を流線形にできない場合は?



上スケッチの様に、後縁に丸みがあると、コアンダ効果で空気が回り込み、空気抵抗となる。
(これは残念ながら、既存の乗用車のリヤエンドに多く見られる。これは各自動車メーカーへ改善を期待したい。)



上スケッチの様に、後縁を絶壁として、気流とウエイクとを「スパッ!」と切り放した方が、空気抵抗は少なくなる。
(そういった乗用車も、今では少しづつ観られる様になってきた。しかしその処理もまだ全域ではなく、徹底されてはいない。)



もっと鋭利な形状でバッサリ切り放すのが「カット スポイラー」だ。
後面を、単に絶壁にするよりも、こちらの方が空気抵抗は少なくなる。
後縁を鋭利にする事で、より、気流とウエイクとを切り放す事ができるからだ。
(採用例は、市販車のホンダ・インサイトやトヨタ・プリウスの車体上面の後端など。)


寸法に制限がある場合は?(四角の枠中に収めねばならない。)





ウエイクの発生量を最小限にする努力をした上で、
後縁を前述のカットスポイラー形状として、気流を切り離す。
前半の高圧(正圧)よりも、後半の流れの剥離の抑制を重視した方が、空気抵抗は少なる筈だ。


物体と、地面と近い場合は?
上下対称の翼断面でも、物体と地面の流路が狭くなる事で、下面の気流の速度が増し、ベルヌーイの定理によりダウンフォースが発生する。





クルマの場合は地面との距離が近いので、上スケッチの様に、上下へ流す量を、形状で調整すると良さそうだ。
下面の流量は少なく、上面の流量は大きく設計する。


筆者はこういった思考を基礎に、空力デザインを行って居ます。
これから空力デザインを始める方々へ、このページが何か少しでも参考になれば幸いです。

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