スーパーアグリ SA05  text by tw (2006. 3.22)

2005年に急遽、新チーム[スーパーアグリ]が発足し、今シーズン(2006年)からのF1GP参戦を果たした。

このチームは、元F1ドライバーの鈴木亜久里氏(45歳)が代表を務め、チームの本拠地は東京に置く。
チーム運営事務局長は秋田史氏。マネージング・ディレクターはダニエル・オーデット氏。
ドライバーは佐藤琢磨選手井出有治選手を起用した。
1つのF1チームが2人共日本人ドライバーを起用するのはF1GP史上初となる。

佐藤 琢磨 (さとう たくま) 29歳。身長163cm/体重60kg
1977年 1月28日、東京生まれ。
1997年 SRS-F(鈴鹿・レーシング・スクール・フォーミュラ)を首席で卒業。
1998年 全日本F3選手権に参戦開始したが、免停が発覚し日本国内でのレース参加資格を失い、渡英。
2000年 英国F3選手権に参戦開始。
2001年 英国F3で日本人初のシリーズチャンピオン獲得。
2002年 ジョーダン・ホンダからF1デビュー。
2004年 BAR・ホンダで、米国GPで3位表彰台を獲得。
2005年 BAR・ホンダで、獲得ポイント1、ランキング23位

井出 有治 (いで ゆうじ) 31歳。身長178cm/体重63kg
1975年 1月21日、埼玉県生まれ。
1990年 カート・デビュー。
1994年 全日本F3選手権へ参戦。
1999年 フォーミュラ・ドリームに参戦し、シリーズチャンピオンを獲得。
2002年 フランスF3選手権へ参戦、シリーズ7位
2003年 フォーミュラ・ニッポンにデビュー。
2004年 フォーミュラ・ニッポン年間総合3位
2005年 フォーミュラ・ニッポン年間総合2位


この「スーパーアグリF1チーム参戦計画」は急に発足した為に、当然新車をする時間は無く、
2006年からのF1参戦を果たすには、既存のF1マシンを入手する以外に手段は無く、
そして同チームは、2002年のアロウズのマシン「A23」を入手した。
(アロウズ・チームは2002年シーズン途中に破産し、チームのマシンや機材等はオークションにかけられ、
 そのシャーシを、当時のミナルディ・チームが購入していた。)

スーパーアグリチームは、旧アロウズ・チームのファクトリーのリーフィールドで、
2002年のアロウズのシャーシ「A23」を、2006年のF1車輌規定に合致させる改造を施した。
その改造内容は、モノコックと衝撃吸収構造の強化と、ボディワーク形状の対応等である。

そして、ボディワーク形状の変更により失ったダウンフォース量を増す為に、空力面の開発も行われ、
ローラ社の施設で風洞実験が行われたとの事。
2002年当時と現在(2006年)ではボディワークの規定が大幅に異なり、
単に車体形状を規定寸法通りに対応させただけでは、約30%ものダウンフォースを失う。
その為、サーキットを走行する為に必要な性能として、少しでもダウンフォース量を向上させる必要があった。

このマシン開発体制は、F1経験のあるヨーロッパ人のエンジニア達と、
ホンダの日本人エンジニアとの共同作業となっていると思われる。

そしてこのマシンは「SA05」と命名され、今(2006年)シーズンの前半に使用されている。
エンジンはホンダのワークス仕様のV8を搭載し、タイヤはブリヂストンを装着する。
そして、今(2006年)シーズン途中からは、スーパーアグリのオリジナルマシン「SA06」を実戦投入する予定となっている。



SA05は、2006年 2月21日からバルセロナでテスト走行を開始した。
写真は、F1 Live.comや、F1Racing.jp等で参照。

以下、2006年F1開幕戦でのSA05の概観から筆者の私見を記す。
各部パーツの呼称については、[各パーツの名称]ページを参照。

「SA05」は、2006年のF1車輌規定に合致させる最小限の作業には留まらず、
少しでもダウンフォースを増やす為に、新規開発の空力パーツが作成され、装着されている。
ノーズコーンは新しく造り直され、形状は先端部をやや低くした。
フロント・ウイング規定に合わせる為に50mm高く設置した。ウイング・ユニット自体はほぼ旧車のままと見られる。

サスペンションのアームも旧車の物を使用している。これは安全性に関わる重要な部品だが、
チームスタッフのインタビューによれば、検討した結果、走行荷重に耐えられると判断されたとの事。
尚、このアロウズA23のフロントサスのアッパーアームは、
アームの中央部を境に捻る形で、アームの内側区間と外側区間で断面を変化させる工夫が施してある。
これは何らかの空力的な効果を得ているのかもしれない。

旧車通り、ツインキールの間にはロッドで補強してある。



サイドポッド周辺の空力は近代化が施された。
サイドポッド前部には、控えめなサイズのアッパー・カナードを装着し、
その端に装着する垂直プレートは大きなサイズ。

アンダーパネルは両端が前進する形状となり、サイド・ディフレクターと接続されている。
流行通り、サイドポッド側面下部はやや幅を狭めた。

空力開発上ポイントとなると思われるフェアリングフィンも全体的に改められた。
そしてラジエーター・チムニーも新設された。
ミニウイングは中央のステーでフェアリングフィン上面にマウントしている。

フェアリングフィン下面とアンダーパネル上面とを縦に繋ぐ形で、
サイドポッド側面から後輪にかけての流れを制御する縦のベーンを設置した。
そしてこのベーンには、フェアリングフィン下側のシャドーフラップを装着し、後輪前部の高圧を軽減している。
このシャドーフラップは、低めの位置に設置されており、後輪前部の高圧を軽減する効果が高いかもしれないが、
気流変動には敏感になるかもしれない。



サイドプロテクターは規定に合わせた幅の広い物となった。
モノコックはサイドプロテクター側面からサイドポッド上面にかけてボリュームのある膨らみが付けられたが、
これは空力上の理由ではなく、規定に対応する為に強度上必要となったのかもしれない。

インダクションポッド両脇のミッドウイングは、幅は恐らく規定一杯の600mmで、リヤウイングへ向けて気流を下げるタイプ。
このタイプのミッドウイングを装着している事から、ある程度煮詰めた風洞実験がなされている事が判る。

サイドポッド上面は後方へかけて低くされ、ラジエーター排熱補助の為のルーバースリットを開けている。
排気管を覆う排気チムニーは幅は狭く、背の高い形状。

リヤ・サスペンションは恐らく2002年当時のままで、
コイル・スプリング&ダンパーユニットはギアボックス上面に置かれている。
中央にはピッチコントロール・ダンパーを装着している。

規定に合わせ、リヤウイング前端は後輪車軸の位置まで前進した。



[車体とエンジンのスペック]  (注: 数値はあくまでチームから公表されているもの)

シャーシ名称SA05
全長 4666 mm
全幅 1800 mm
全高  950 mm
フロント・トラック 1472 mm
リヤ・トラック 1422 mm
ホイールベース 3100 mm
シートベルトタカタ社製
ステアリング&
パワーステアリング機構
チーム内製
燃料タンクATL社製
クラッチザックス社製
ミッション7速・セミAT
ギアボックス・ケーシングカーボン製
ダンパーオーリンズ社製
ブレーキ・キャリパーAP社製
ブレーキ・パッドヒトコ社製
ホイールBBS社製
タイヤブリヂストン社製

エンジン名称HONDA RA806E
排気量2.4リッター
エンジン形式V型 8気筒 バンク角90度
最高出力700 bhp以上
最高回転数19,000rpm以上
イグニッションホンダ PGM-IG
スパークプラグNGK社製

[2006年 開幕戦 バーレーンGP結果]

予選結果
順位チームドライバータイムトップとの差
PPフェラーリM.シューマッハ1'31.431 
3位ホンダJ.バトン1'31.549 + 0.118
19位MF1・トヨタT.モンテイロ1'35.900 + 4.469
20位アグリ・ホンダ佐藤 琢磨1'37.411 + 5.980
21位アグリ・ホンダ井出 有治1'40.270 + 8.839


決勝レースでのファステスト・ラップ
順位チームドライバータイムLap
1 位ウィリアムズ・コスワースN.ロズベルグ1'32.40842周目
3 位ルノーF.アロンソ1'32.53421周目
20位アグリ・ホンダ佐藤 琢磨1'37.10417周目
21位アグリ・ホンダ井出 有治1'38.30211周目


決勝レース結果
順位チームドライバートータルタイム周回平均速度
優勝ルノーF.アロンソ1:29'46.20557周206.018 km/h
16位トヨタJ.トゥルーリ1:30'51.46656周199.978 km/h
17位MF1・トヨタT.モンテイロ1:30'15.64355周197.703 km/h
18位アグリ・ホンダ佐藤 琢磨1:31'13.62953周188.489 km/h
リタイアアグリ・ホンダ井出 有治メカニカル35周159.851 km/h

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