スーパーアグリ SA06  text by tw (2006. 7.20)

2006年 7月19日(水曜)、スーパーアグリF1チームはシルバーストンサーキットで、
次戦ドイツGPから投入される予定の新車「SA06」を佐藤琢磨のドライブによりシェイクダウンした。

尚、メディアの記事では、SA06はリーフィールドのファクトリーで開発されたとされているが、
筆者はこのマシンの「開発陣」の実態を知らない。
スーパーアグリF1チームは、もう既に「コンストラクター(製造者)」として機能しているのだろうか?
それともまだ「チーム」に過ぎない状態であろうか?

鈴木亜久里代表によれば、SA06のパーツは発注ではなく自チーム製で、
使用した風洞は3年程前までマクラーレンが使っていたロンドン近郊の施設であるという。



SA06のポイントは、
1. 空力性能の大幅な向上、
2. 車体の軽量化によりウエイトの搭載を実現する事、
3. 新型ギアボックスを採用する事でエンジン搭載位置をアンダーカウルまで下げ、車体重心高を低下させた事である。

1が最もラップタイムの向上に寄与すると思われる。
チームによれば、SA05よりも10%以上のダウンフォース発生量の増加を見込んでいるという。

2は車体重心高を低下させるだけでなく、
サーキットごとに前後重心位置のセッティング変更を施す事ができる。
チームのチーフ・テクニカル・オフィサー、マーク・プレストンは、
SA05よりもSA06は約20kgの重量軽減を達成したとコメントしている。
しかしこれではSA06のウエイト搭載量は約20kg程という事になり、
50kg〜80kg程度のウエイトを搭載していると思われる現在のF1ではまだまだ競争力不足となる。

3はF1マシンの設計基準として当然となるものである。
SA05では古いギアボックスを使用していた為にシャフトの位置が高く、
現代のエンジンを搭載するにあたって、エンジン搭載位置を半インチも高くせざるをえなかったという。



{SA06の概観から}

フロントウイングは2階建て式で、翼端板にスリットを開けたタイプ。
このスリットはコーナリング時の気流への対応と関係があるかもしれない。

正面から見た時のメインウイングの湾曲はゆるやかな形状で、
グランドエフェクト効果が弱い代わりに、空力挙動は安定するかもしれない。



SA06は旧SA05同様に、基本的にほぼアロウズA23のモノコック設計を踏襲している。
これは時間的な制約からだと思われる。
この為、フロントサスは必然的にアロウズA23と同様のデザインのツインキールとなっている。
前側のロワアームはツインキールに接続し、
後ろ側のロワアームはモノコックに接続している。

現在のフロントサスの仕様は、旧SA05と同じ物となっている模様。
メディアの記事では8月下旬あたりから新型サスペンションが実戦投入されると言われている。



サイドポッド上面の前端には、衝撃吸収構造を収める膨らみがある。
この膨らみのついた形状は、サイドポッドへ当たる気流の、上側へ向かう気流と、
横側へ向かう気流とを制御する意味合いもある筈である。

サイドポッドのインテーク(開口部)の上端の高さは低い位置となっている。

サイドポッド側面下部は流行通りに狭く絞り込んである。

ラジエーター・チムニーは幅が薄く、後方へ向けて車体内側へカーブしている。
この内側へ向けたカーブは、サイドポッド上面の高圧を増すと思われる。
そしてチムニー外側は、下部を絞り込んだ形状となっており、
内側へ向けたチムニー本体のカーブと合わせて、
フェアリングフィン上面で気流が滞らない様に流そうという意図があるかと想像できる。

ミニウイングは中央1本のステーでフェアリングフィン上面で支持している。

フェアリングフィンは跳ね上げ角度が寝かせ目となっている。

フェアリングフィンから続く後輪内側のフェンスは、後輪との隙間が広く、
この隙間へフェアリングフィン下面からの流れを吸い込んでいると思われる。



サイドプロテクター側面が膨らんでいるのは純粋に空力面で不利となると思う。
これはクラッシュテストをパスする為に必要な補強であると思われる。

ミッドウイングはダウンフォース発生型となったが、幅は規定一杯までは使っていない。

排気管の出口は車体中央へと寄せてある。これは空力に寄与する為。



サイド・ディフューザーの上側には気流を跳ね上げるフラップが設置されている模様。

リヤウイングは簡単なストレート・タイプの形状に見える。
ウイングの支持法は、上側エレメントから2本のステーでリヤエンドに接続して荷重を受け止めている。

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