「現在のレーシングインシデントの問題」

text by tw 2021/ 7/20火

2日前のF1イギリスGP決勝の1周目、旧1コーナーの進入でレッドブルのフェルスタッペンとメルセデスのハミルトンが接触し、フェルスタッペンがコースアウトした。
フェルスタッペンの右後輪とハミルトンの左前輪が当たったので、フェルスタッペンが前に居た。
接触によりフェルスタッペンの右後輪が外れ、彼の車体がコースアウトし、コースのバリヤへ衝突し、51 Gが発生したという。高い値だ。
現代のF1の安全テクノロジーのお陰でフェルスタッペンは命に別状はない模様だが、筆者が観ていたアイルトン・セナの時代のF1マシンでなら100%即死の事故である。

筆者の近年の疑念は、殆どのサーキットの縁石の外がサンドトラップではなく高摩擦アスファルトとなった事だ。
筆者がF1を観始めた時は、縁石の外はサンドトラップであったと記憶している。
サンドトラップは耕運機などで適切に耕してさえあれば、コースアウトした車体は砂の山にガンガン追突し、十分に減速していた。
1999年イギリスGPでM.シューマッハがブレーキの問題でコースアウトした際には、サンドトラップが何故かフラットで、あまり減速せずバリヤへ衝突し脚を折った。
これはサーキットを管理する側に問題があったと思う。

現代の、縁石の外が高摩擦アスファルトで問題があるのは、車輌の脚周り(サスペンション等)に故障があると減速度が低下する事だ。
今回のフェルスタッペンの場合、接触により右後輪が外れてしまったので、3輪状態で十分な減速力が得られるのか非常に疑問であった。
実際、映像を観るに、非常に高い速度でバリヤへ激突していた。

ランオフエリアについて筆者がFIAに英文だろうとどんなに提言をしても素粒子1個分も影響が無いだろうから諦めるが、
それでも筆者は現在のドライバーの意識については、どうしても綴っておきたい。
30年前のドライバー達は、接触してコースアウトすれば自分も相手も死ぬかもしれないという自覚があったと思うし、そのリスクを受け入れた上で出走していたと思う。
要はコース上でバトルをするにしても騎士道精神があった筈なのだ。

ちなみにこの時代で意図的にぶつけたケースもあったので説明すると、
1989年のA.プロストは鈴鹿で最も速度の低下するシケインでA.セナへぶつけて両者停車した。
1990年のA.セナは鈴鹿でスタート後の1コーナーで報復でプロストへぶつけて両者コースアウトした。
これはスタートして8秒後の事なので、少々速度が高めでリスキーだったが、両者バリヤへ激しくは衝突してはいなかった様だし、両者無傷であった。

1993年はウイリアムズ・ルノーのA.プロストが最速で、マクラーレン・フォードのA.セナは劣勢だったが、
スタートから何かとセナの方が前に出るケースが多く、セナはプロストをコーナーの大外からブロックラインを取るシーンが多々あった。
これはプロストが徹底してリスクマネージメントを行う相手であるとセナは熟知していたので出来た走り方で、相手を見ていた。
セナがとうとうプロストに攻略されると、セナへ次に迫って来るのはベネトンのミハエル・シューマッハで、彼は引く事を知らないだろうから、セナはインを突かれると無理にブロックしなかった。
相手を見て対処の判断をするのもドライバーの仕事だったのである。

1994年のラッツェンバーガーとセナの事故死を受け、F1界は安全性の向上へ努力し、2021年現在は、もうほぼ死なないF1となっている。
しかし、これで現代のドライバー達はリスクにあまりに寛容になってしまったフシがあると筆者は強く感じるのである。
いいのだろうか??

1999年頃か、F1のサーキットの設計者が、車体がコースアウトしたらどの方向へ飛んでゆき、どれだけランオフエリアが必要かというシミュレーションができるソフトウェアが出来た。
しかしそれは車輌が単独でのコースアウトのシミュレーションであって、おそらく他車との接触によるコースアウトのケースは網羅してはいないと思う。
それはあまりに数が際限ないので、近い将来、量子コンピュータでソフトウェアを作らない限り実現は不可能かもしれないが、
もし、そうした場合でも、実施すればサーキットのランオフエリアは果てしなく広大になってしまうだろう。

結局、筆者が云いたいのは、可能性として、現代であっても全てのケースで100%安全が保障される事は無いという事なのである。
もし回転するタイヤ同士が接触して車体が激しく飛び上がったらどうなるのか??
まず死なないF1になったけれども、最悪の場合、人が死んでしまう可能性はあるのだという事をドライバー達には自覚して出走して頂きたい。
これは全ての国で、全てのカテゴリーで出走する、全てのドライバー達へ筆者は云いたい。もういい加減、ぶつかる可能性のある行動をやめませんか??

しかし、また誰かトップドライバーが重傷や死亡する事故が起きない限り、ルールや意識が改善される事は無いのだろうね。


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