今季からF1グランプリへ参戦するハースの2016年用マシンが、2016年 2月21日に公開された。
チームのEU本部は英国バンベリーとの事だが、フェラーリと技術提携を行い、マラネロの風洞を使用できる。
搭載するパワーユニットはフェラーリ製だ。昨年のフェラーリは優秀な評価ができたので前向きになれる要素だろう。
マシン名の由来は、ハース・オートメーション社が1988年に製造した最初のCNC(コンピュータ数値制御)工作機械の「VF-1」から来ているという説と、
ハース・オートメーション社の“Very First One(本当に最初)の製品”だからだと言う説がある。
この新車の概観は、F1通信 等を参照。以下、車体の概観から筆者の私見を記す。
上下ウィッシュボーンは前から見てハの字の角度が弱めで、近年のF1にしてはフロントロールセンターが低めだろう。
フロントのアッパーアームは後傾が強めに見える。ここはアンチダイブのジオメトリーと関係がある。
モノコック上面はフロントサスユニットを収めるバルジ(膨らみ)がある。
これはロッカーの上側にピッチコントローラーとコンペンセーターを装着しているのかもしれない。
コンペンセーターはロッカーの上側にあった方が設計が簡単にできるが、ステアリングシャフトと干渉しやすいのが悩ましい。
斜め上から見た写真で、サイドポッド前端のアンダーカウルが左右非対称に見える事に気付いた。
これは写真の具合でそう見えて実際に左右対称なら問題は無いが、ここは空力のキモで、左右非対称は常識的に考え辛い。
サイドポッド上面の前縁には、リフト抑制の為のフィンを装着しておらず、
開発中で後に装着するのであれば良いが、無いまま開幕へ突入だと空力的に辛いかもしれない。
サイドポッドを囲うベーンは、リフト方向の角度がついており珍しい形だが、メリットが判らない。
ここの気流を下へ向けて一体どうしたいのだろう?
サイドポッド側面下部の最大幅は狭め。この場合、ここの流量のシール性は高いが、流速はやや遅めとなり、一長一短だ。
コークボトルは狭く深く絞り込んである様に見える。もちろんこれは車体下の空力に寄与する。
インダクションポッドの後方絞込みが断崖絶壁なラインを描くのが特徴的だ。
こうすると横方向から気流が合流し、この部分ではリフトを抑制できそうだが、
リヤウイングへ向かう気流の角度を考えると、トータルでは損をしているかもしれない。
後輪のアップライトから内側へ腕を伸ばしてアッパーアームに接続しているが、この長さは少しやり過ぎかもしれない。
アッパーアームが短過ぎる事で、ストローク時のトレッド変化量が問題になるかもしれないからだ。
リヤサスペンションは流行のプルロッドで、それはアッパーアームに接続している。
リヤウイングはほぼスワンネック。その後ろにモンキーシートがある。
排気管はメインが上側、ウェイストゲートが下側に2つある。
全体として、空力的にも機械的にも中段グループと差を感じるが、デビューイヤーなら仕方が無いと言えるだろうか?
大昔の話ならば、1991年にジョーダンがデビューした際はトップに迫る空力デザインであったが。
ただし、最初のテストにも関わらず、VF-16は4日間で281周も走れて、信頼性は評価できる。
これは同じテストに参加していたマクラーレン・ホンダより多い周回数であった。
ドライバーはロマン・グロージャンとエステバン・グティエレスが勤める。
グティエレスはフェラーリでテストドライバーを務めたので今回の縁があった様だ。
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