レッドブル RB7   text by tw  (2011. 2. 1火)

2011年 2月 1日、レッドブルの2011年用マシン、「RB7」が公開された。
写真はESPN F1 ニュース速報 Live等を参照。 以下、RB7の概観から筆者の私見を記す。



マシンの概観では全体的に昨年車とラジカルな違いはあまり無さそうだが、細かく観ると確実に変化・進化している。

ノーズ先端は、カメラ一体型の、幅広く、空力的にダルな仕様が選択された。
どんなにL/D比が優れた空力デザインとしても、それが結果的に走行中のダウンフォース変動量が大きい物であれば、
ドライバーはダウンフォースの低い際の領域に合わせて走らさぜるをえず、
結局、L/D比は若干落ちても、ダウンフォース発生量の安定したマシンの方が速い訳だ。

ノーズコーン上面から側面にかけては丸みをおび、ノーズ上面は気流を左右へも分けている。

ノーズ側面には、幅の小さく前後に長さのあるガーニーが斜めの角度で装着されており、
これで意図的に小さな渦を発生させ、空力挙動を穏やかにしている。
これはノーズが気流を左右へ分けるデザインとした事から必要となったと思われる。



フットボックス上面両端に盛り上がるコブは、高さがかなり低くされた…と云うより、
フットボックス上面自体が高くされた様だ。
これはフットボックス下面も高くなった事を意味する。
これにより、ノーズ下の空気の通路を拡大し、空力性能向上を狙った設計となる。

そして、コブの断面積が縮小した事によって、モノコック下部の断面積の軽減量が少なくなり、
結果、モノコック下部の断面は少ししか削れず、ロワアームの接続位置は昨年よりも外側へ離れている筈だ。

サスアームは、短い方とストロークによるトレッド変化量が大きくなってしまうが、
サスの性能よりも、ボディワークの空力面を優先した形となった。



前輪のブレーキ・ダクトは、更に、事実上のディフレクター部品の装着を許してしまっている。
このディフレクターは操舵時にもタイヤの方向と連動する事もあり、見た目以上の重大な空力性能を発揮していると思う。

フロントサスのアームレイアウトは昨年方を踏襲している様で、アッパーアームが後傾している事も変わりはない。
上下サスアームの前傾・後傾の角度は、車体を横から見た時のサスのストローク時の瞬間中心を決める要素で、
これにより、アンチ・ダイブ、アンチ・スクワットの設定がされる。
しかしこの十年間程のF1では、サスのジオメトリーはほぼ無視状態で、
全てが空力性能と、ホイールと車体との取り付けに最低限必要な強度・剛性によって設計されているのが現状だ。



コクピット開口部の最も低い地点から見て、サイドプロテクターの高さが、他チームよりも低い様に見える。
と言う事はもしかすると、RB7のコクピット側面の高さは、規定最低の 550mm よりも高くされているかもしれない。
これは確かに空力面では良くなるし、モノコック剛性も向上するが、肝心のドライバーの視界は確実に悪くなる。
それでも操縦可能ならば、ドライバーはラップタイムの速い方を選ぶのであろう。



今季からのボディワーク寸法規定により、エンジンカウルとリヤウイングとは物理的に接続不可能な為、
昨年のFダクトは使用できず、カウルはシャークフィンとされた様だ。

シャークフィンはリヤウイングを横からの風へ対応させる為であると思われ、
例えば、氷の上で車がコーナリングする様子を上から見たイメージが解り易いと思う。
後輪を軸にしたグリップ・コーナリングでも、後輪を外側へ滑らせるドリフト・コーナリングでも、
どちらにせよ車体のどこかは外側から空気を受ける事になる。
それを、シャークフィンはリヤウイングへ真っ直ぐな気流を供給させる為に設置されている。(と思う。)



コークボトルは、更に狭く絞り込まれた模様で、
サイドポッドの側面・上面・ボディ中央とは、全てが流れる様に一体化して合流しているデザインだ。
これは狙い通りに作用すれば素晴らしいエアロダイナミクスとなるだろうし、
逆に想定外の事態となれば、もう設計大幅変更でしか手がつけられなくなる様なギリギリのデザインと云えるかもしれない。

リヤサスの、プルロッドの車体側取り付け位置は、かなり左右へ離れている。
本当に写真のあれがサスのプルロッドなのか疑う程だ。
今季からマルチ・ディフューザーが禁止された事から、プルロッドの車体側取り付け位置の空間を考慮する必要は軽減され、
RB7のプルロッドは、車体のステップ・フロアより下方で接続されている可能性がある。
ただし写真で観て判る様に、エンジンからの高熱の排気流にプルロッドが耐えられるのか疑問でもある。



現在筆者が観ている写真は停車時だが、リヤ・サスアームは下さがりしており、リヤのロールセンターは高い。
一般論で云うとロールセンター高さは、若干前下がりがセオリーであり、これは特別問題ではないと思う。

気になる点として、リヤ上段ウイングには中央に若干太めのセパレーターがある。
これは今季から可変フラップの為なのか、それとも他の何かの狙いがあるのか。
開幕戦に登場するレッドブルの姿がどの様な物か、筆者にはまだ予想がつかない。

(このページの最新更新日:2011. 2. 1火

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