フォース インディア VJM09   text by tw (2016. 2.29月) [English language]

2016年 2月24日頃から、フォース インディアの2016年用マシン「VJM09」が合同テストで走り出した。
マシンの写真は、F1通信 等を参照。 それでは以下、車体の概観から筆者の私見を記す。



これはマイナーアップグレード版で、抜本的は新しいクルマではないのではないか…?というのが筆者の第一印象だ。
昨年中盤に投入したマシンに対して、ここが大きく進歩した、ここを攻めている、という部分が見えない。

もし大幅に違う点があるとしたら、(これは見た目では僅かな差の筈なので、確かな事ではないが、)
もしかするとレーキ角(車体の前傾姿勢)が昨年までよりも強めとなっているかもしれない。
フラットボトム規定下のレーシングマシンでは、レーキ角が車体底面の空力に重大な要素となる。
理論的にはレーキ角が強い方向で空力開発を進めた方が、車体下面で発生できる最大ダウンフォースは増せる可能性があると言えるかもしれない。

そしてレーキ角はフロントウイングの効率も左右する。
フロントウイングは、路面との隙間を小さくする事で流速を高める、グランドエフェクト(地上効果)を利用している為、
レーキ角が強いと、フロントウイングと路面との距離が接近し、この効果が高まるのだ。



フォースインディアの特徴アイテムである鼻の穴ノーズは継続している。
これはノーズ上面の高圧域をノーズ下面へ流し込む事で、単純に車体下方への気流供給量を増せるだろう。
ただし、狭い鼻の穴を気流が通過する事で、干渉抵抗が発生し、空気抵抗の一部となるが、
車体底面の空力は効率が高いので、多少抵抗があっても、車体下方の流量を増せるのならば得策だろう。

ただ、せっかくノーズの下へ取り入れた気流を、Sダクトのノーズホールが上へ抜いている。
これでは抵抗ばかり増してしまう様に思えるが、ノーズ下の気流の運動エネルギーを活性化させている可能性がある。
現代の空力は、精密な風洞や高性能なCFDで検証を行える為、単純なアイテムの損得は計算し易いだろう。
ただし風洞もCFDも、正しい空力デザイン学の大局を見極めるツールでは決してないので、人間の知恵やセンスは無意味とはならない。



クルマの最高速は、パワーユニットの出力と走行抵抗が釣り合ったところだが、
走行抵抗の内の空気抵抗は、速度の二乗で増すので、高速域では、ある程度パワーを犠牲にして空気抵抗を削減した方が有利となる。
マシンの設計段階で、パワーユニットの出力と空気抵抗のバランスを調整する要素となるのが、サイドポッドでの冷却容量だ。
これはサイドポッドのエアインテークにどれだけ空気を通過させているかで判断できる。
空気抵抗の軽減を重視するならば、ラジエーター(強い干渉抵抗となる)の容量は小さくなり、
パワーユニットの出力を重視するならば、ラジエーターの冷却容量を大きくせねばならない。

VJM09のサイドポッド・エアインテークの開口量は小さい部類だろう。
インテークの形状は、昨年よりも四角ばったものへ変更されたが、
三角のものよりも、四角く高い位置にある方が、車体側面への流量が増し、車体底面へ流れ込む流量をシールできる。



小細工かもしれないが、インダクションポッド両脇のカメラは斜め上へ角度をつけている。
これはサイドプロテクターが20mm高くなった事の対応かもしれない。

エンジンカウルは昨年のトロロッソの様な斜めのボリュームがついた。

横から見て、エンジンカバーには最小面積を満たす為の三角の縦フィンは着いているが、
実質のインダクションポッドの絞込みは位置は手前で完結している。
これは今年あたりから再び流行の兆しが見える造形だ。

コークパネルエンドは、縦にメルセデスの様な間隙がついた。

排気管は、メインを上側にし、ウェイストゲートを下側に2つレイアウトしている。
モンキーシートは大きめで、排気流を多少は吸い出す効果があるだろう。

テストでは好調の知らせが届いているが、タイムは何をテストしているかによって意味合いが異なる為、
単純にこの時期のタイムの速い遅いでは車輌を評価できない。
しかし速いタイムが多く出ている事自体はマイナス要因ではない訳で、失望のシーズンを過ごしそうな雰囲気は感じられない。

ドライバーは引き続き、ニコ・ヒュルケンベルグとセルジオ・ペレスが勤める。

(このページのここまでの最新更新日:2016. 2.29月

Site TOP ジョーダン MF1 スパイカー フォース インディア