レーシングポイント RP20

text by tw (2020. 2.20木)

レーシングポイントは先日、今年用のカラーリングだけを施したショーカーは公開していたが、
昨夜ようやく、本物の2020年用マシン「RP20」でテスト走行を開始した。
RP20の外観は、ツイッターで @KenichiKonoF1 さんが載せておられる写真を参照。



今回のRP20の登場により、メルセデスとレーシングポイントの提携関係が強調されるかたちとなった。
どうもRP20にはメルセデスのパーツが流用されている様に思える。

リヤエンドはレギュレーションで許される限りのエリア、ギヤボックス、リヤサスペンションが、
そして空力のデータも、レーシングポイントの独自開発ではないと思える部分が見える。

ノーズ先端は、昨年までの可能な限りハイノーズとする為にあった中央にコブのあるタイプではなくメルセデス風となり、
ノーズの下側にはメルセデスと同じ様なヒレがあり、

モノコック先端を幅広としてプッシュロッドを立たせるのもメルセデスと同じ手法で、
(まあこれはトレンドとなりつつあるので、そのまんまのコピーとは言えないが、)

モノコック側面の、幅の狭い下向き間隙カナードもメルセデスと同じ様なタイプで、

レーシングポイントが昨年中盤にせっかく導入した、フロントサスペンションのアッパーアームを弱いV字の角度としていた物を、
メルセデスの様に若干ハの字の方向の角度へ替え、(これでフロントロールセンター高が上がってしまう。)

昨年のレーシングポイントがサイドポッドのトレンドを取り入れ、リフトを軽減するタイプにしてあった物を、
RP20では、わざわざ昨年までのメルセデスの様にサイドポッド上面が厚く、リフトが発生してしまう古いタイプへと戻し、
(これは純損するリフトではなく、リヤビューミラー後部の気流を綺麗にする効果も一応はあるのだが、)

…と云った具合で、RP20の随所にメルセデスの技術資産が流用されている。



ただし、流用した各コンポーネントを自車としてパッケージしたのは、あくまでもレーシングポイント側の作業であるし、
レギュレーションにリストアップされた項目で許可される範囲での技術流用の筈であるだろうし、
モーターレーシングの最高峰の競争であるF1グランプリの厳しい闘いを生き抜く上で、
ライバルに勝つ為に手段を選ばないのは勝負の意識を徹底しているとも云えるが、
例えば、もし、本田宗一郎さんだったら、この道は選ばないだろう。
しかし、これらは結局はそれぞれ個人の価値観や感性で判断する領域となると思うので、筆者はここでそれの善悪を断じる事は許されないのだろうけれども。


ドライバーは引き続き、セルジオ・ペレスと、ランス・ストロールのペアだ。
メルセデス、レッドブル、フェラーリの次となる、“4番目のチーム”を目指す激しい闘いとなると思うが、今季は果たして…?


(2020年 8月08日(土曜) 更新)「ピンクメルセデス問題」

開幕後、レーシングポイント「RP20」のパフォーマンスが非常に高かった事から、「あれはメルセデスのコピーだ」と他チーム、特にルノーが抗議していた。
ルノーが指摘したのは、ブレーキダクト内部の形状である。
それは外から写真を撮ってコピーする事が不可能なエリアだからだ。

現在のF1マシンは、ブレーキダクトとその内部流路が、空力性能に影響を与えている。
昔の様に、空気を取り入れて、ブレーキをただ冷やすだけでなく、
前輪ホイールから外側へ排出される気流が、フロントウイングのアウトウォッシュや、非常に複雑なサイド ディフレクターと関連づけられて、
空力デザイナー/エンジニアが意図した気流進路の制御を行い、空力性能を高めている。
具体的には、車体底面へ侵入してしまい害を与える乱れた気流を、車体外側へ吹き飛ばしている。
よってブレーキダクトは重要な空力パーツなのだ。

このルノーの抗議で、FIAは問題のメルセデスとレーシングポイントから当該ブレーキダクトを提出させている。

そして8月7日(推定)、FIAはルノーの抗議を認め、レーシングポイントはチャンピオンシップから15ポイントが剥奪され、40万ユーロの罰金が科されるが、
レーシングポイントは上訴する事もできる。

つまり、昨年のメルセデス車と今年のレーシングポイント車のブレーキダクトは同一である。
ブレーキダクト「だけ」という事はあるだろうか? あるならば何故?
他のエリアでも、メルセデスからレーシングポイントへCADデータが渡っていると考えるのが普通であり、
昨年のメルセデス車と今年のレーシングポイント車はクローンであると断じれそうだ。
これはF1チームはレーシングカー コンストラクターでなければならないという精神に反しているのは明らかだ。

ところで今回の件は、テクニカル レギュレーションの違反ではない。
問題とされたのは、ブレーキダクトが「リステッド パーツ」か「ノン リステッド パーツ」かという事だった。

尚、FIAのニコラス・トンバジスは、2021年のレギュレーションを変更して、コピーマシンが選手権に参加できなくする計画があるとコメントした。

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