2010年 2月10日頃、新ロータスF1チームの2010年用マシン「T127」のシェイクダウンが行われた。
このチームは伝統ある「ロータス」と命名されているが、その中身の人材はどういった者達なのかは筆者は全く知らない。
ロータス社のエンジニアが属するのか、それともロータスとは全く関係の無いF1エンジニアが全てを占めているのか。
ただ一つ云える事は、今回のロータスというチームは、
F1グランプリ史上最も偉大なる発明エンジニアの一人である、故コーリン・チャップマン
の意思によるコンストラクターでは無いのだと云う空虚感溢れる事実である。
エンジンは、今年からF1に復帰するコスワースを搭載する。
「ロータス・コスワース」、 オールドファンならば想いで深い呼び名であろう。
しかし現在のコスワース社のエンジニアの人材も何者かも分からないし、エンジン性能もまだ未知数である。
つまり今回は、1994年にF1から撤退した名門ロータス・チームの正式な復帰では無く、
ただ「ロータス」と云うブランド名をF1へ登場させるだけと云う形であると思われる。
彼は過去に数々のチーム、マクラーレン(1990年頃)、ティレル(90年代中盤)、ジョーダン(98年中盤から)、
ベネトン(2000年代前半)、トヨタ(2000年代中盤)、スパイカー(2007年頃)〜フォース インディア(2008年)、
と移動し続けて来たが、彼は結果的に一度もワールド・チャンピオンシップを獲得した事が無い。
筆者は昔から、各メディアはマイク・ガスコインをあまりにも過大評価し過ぎていると思って居る。
事実、彼は、自らの立場が危うくなる直前に他チームへの移籍を繰り返している。
1994年のティレル・ヤマハでの片山右京選手の大活躍は、彼の体重の軽さと、
医師から癌と宣告された事による心理面からきたものと(後に誤診であったと発覚した)、
ハーベイ・ポストレスウエイトによる功績が大きいし、
1999年のジョーダン・無限ホンダでのハインツ−ハラルド・フレンツェン選手の活躍は、
同チームを去ったゲイリー・アンダーソンが残した遺産による功績が大きい。
マイク・ガスコインが1998年の中頃にティレルからジョーダンへ移籍した際に、
同チームのチーフ・デザイナーであるゲイリー・アンダーソンへ、
「自分はキヤボックスのデザインすらした事が無い。」と告げた際に、アンダーソンは言葉を失ったそうだ。
サイドポッドの上方へ建てる「Xウイング」も彼の発明ではないし、(発案者はザウバー所属のエンジニアだったらしい)
筆者は、マイク・ガスコインが発案したと云うデバイスを聞いたり見た事は一度すら無い。
彼がルノー・チームへ残した遺産でフェルナンド・アロンソ選手がワールド・チャンピオンシップを獲得したと思う方も居るだろうが、しかしガスコインが居なくなってくれたからこそ獲れたチャンピオンとも云えなくはないのだろうか?
と云う訳で筆者は昔からマイク・ガスコインは凡人デザイナーであると確信しているが、
しかし過去の成績から、人選マネージメオントには優れた人物だと認識している。
以下、「T127」の概観から筆者の私見を記す。 写真はGPUpdate.net等を参照。
「T127」は他チームに比べて、ノーズコーンの長さは短く、先端の幅は狭い。
これにより空力的にクイックな挙動となると思われる。
ただし、短めのノーズは、クラッシュテストにパスする為に重量は重くなる。
フロントサスは、プッシュロッドの車体側取り付け位置のモノコック上面には、僅かに膨らみがある。
これにより、立体ロッカーとされており、ロッカー下側にピッチコントローラーを搭載している可能性が高い。
プッシュロッドのホイール側取り付け方法は、
ロワアームの前後アームの間にプッシュロッドを通して、アップライトへ接続している様だ。
これならばプッシュロッドの角度を立て、フロント・サスの作動性を良好にする事が出来る。
これは昨年のチャンピオンであるブラウンGPと同じ手法である。
だが車体上面の空力効率は車体底面のそれには遠く及ばず、空力性能でそれ程決定的な要素ではない様だ。
車体底面での空力効果は、アンダーパネルに髪の毛1本張り付けただけでも大ダメージを負うそうだが、
サイドポッド上面は鈍感で、仮に おまんじゅう を一個置いても、大して空力性能にダメージは受けないのだそうだ。
しかし、予選タイムアタックでは千分の1秒の差が勝負の明暗を別けるのであって、
車体の隅々まで徹底的に極限の性能を追求するのがF1GPというカテゴリーであるのだが…。
センター・ディフューザーは昨年のブラウンGPに似た形状で、
斜め後ろから見ると、ステップ・フロア側面に「開いた窓」がある事が確認でき、
多層ディフューザーとなっている状態が判り易い形状だ。
リヤウイング翼端板の上縁は切り欠きは無く、後端まで水平の形状が続いており、工夫は無い。
他チームの多くは、リヤウイング翼端板の上縁を切り欠き、
左右へ飛ばされている翼端渦の間の空間を利用して、リヤ上段ウイング下面の気流を翼端板の外側へ排出させている。
結論として、現在の「T127」は保守的な設計で、攻めたコンセプトでは無いと見られる。
車体バランスが良好なマシンならばそこそこの結果を出せるだろうが、「T127」のポテンシャルは如何に?
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