しかし今回のトロロッソの新車「STR5」は、
昨(2009)年のレッドブルRB5をフェラーリエンジン搭載仕様に改造した昨年のコピーマシン「STR4」を、
トロロッソチームが開発を進めたバージョンアップ版のマシンであって、よって今回の「STR5」は、
白紙からデザインされた物ではないので、「STR5はトロロッソ初の独自設計マシン」という表現は正しくない。
尚、トロロッソのテクニカル・ディレクターを務めるジョルジョ・アスカネリは、
「レッドブル・テクノロジー社」で空力部門のトップとしてレッドブルのアイドリアン・ニューウェイと共に働いている様だ。
「STR5」の写真はGPUpdate.net等を参照。 以下、筆者の私見を記す。
フロントウイングのフラップは3D形状で、外側へ向けて角度が寝ており、フラップ上面の高圧流を前輪の外側へ誘導させている。
ノーズ上面両端のコブは、高く、鋭利な形状となった。これはサスではなく空力面の理由からで、
ノーズ上面の気流の、左右へ別れる区間と、ノーズ上面に沿って上方へ流れる気流進路との区別を明確にし、
且つフロントウイングが跳ね上げる気流がモノコック上面の気圧に影響を与えない様にする為かと考えられる。
フットボックス下方のセパレーター前方のダミープレート(フラットボトム規定を満たす為)は、
丸みをおび、後方へと厚さを増してゆく、滑らかな形状。
これによりサイドポッド底面への気流進路が穏やかで安定するか、それともただ曖昧になるのか、果たして?
もし必要であれば、この厚いダミープレートの内部にウエイトを仕込む事が出来る。
サイドプロテクターは気流を左右へ別ける形状で、現規定下ではこの方法がベストなデザインであると筆者は考えている。
何故ならば、サイドプロテクターを通過する気流を上面へ向けてしまうと、どうしてもこの部分で揚力が発生してしまうからだ。
これも昨(2009)年のレッドブルのアイデアのコピーで、
規定で 75mm 以上のRをつける義務を制限されていないサイドプロテクターの側面から、ラジエーターの熱気を排出している。
サイドプロテクター周りの気流進路を考えると、このアウトレットの丸い膨らみはリヤウイングへの整流効果があるかもしれない。
ヘッドレスト上面は、後方へ向けて下がる形状。
これによりインダクションポッド下部のセパレーター前面にかかる高圧を軽減している。
エンジンカウルのシャークフィンは昨(2009)年同様、リヤウイング上面と接続するまで伸びている。
これによりリヤウイングが跳ね上げる気流進路がより明確になるだろう。
そして、このシャークフィンはレッドブルの格好の広告スペースとなっている。
後ろから見たアッパーアームの角度はほぼ水平で、ギヤボックス上面へ接続してある。
これはサスのジオメトリーの問題ではなく、空力デザインの構造上の都合からであろう。
ドライブシャフトは僅かに車体側からホイール側へ上あがりの角度。
水平に近い程、エンジン出力の損失が少なくて済むが、
ファイナル・ドライブ(デファレンシャル・ギヤ内蔵)が低い方が重心位置は低げられる。
よって、ファイナル・ドライブの位置は車体全体のパッケージ・レイアウトによって決められる項目だ。
エンジンの排気流の高熱の影響を調べる為に、テスト走行時には、
アッパーアームとリヤ下段ウイングには沢山の温度測定シールが貼られている。
尚、アッパーアームがカウルを貫通する箇所のカウルは交換可能なカウルで、(3箇所の止め具で装着されている。)
リヤサスのジオメトリーを変更したい場合に備えている。
ディフューザー下面のスプリッターは、片側に3枚、左右で合計6枚の構成。
サイド・ディフューザー後端の幅は規定一杯よりも15mm程狭め。
リヤ上段ウイング上側の翼端板の高圧排出スリットは、斜めに5本と細かく切られている。
尚、リヤウイングの縦のステーは無く、ロワ・ウイングで支持しており、この区間の空気抵抗の軽減を達成している。
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