トロロッソ STR11 text by tw (2016. 3.02水)
トロロッソの2016年用マシン、「STR11」は2016年 2月23日頃からテストで走り出したが、ようやく写真を入手できて今このページを更新している。
今季のパワーユニットはルノーではなく、一年落ちのフェラーリを搭載するが、ギヤボックスはトロロッソ製だ。
新車「STR11」の写真は、F1通信 等を参照。 以下、概観から筆者の私見を記す。
規定を満たす為のノーズ中央部分は滑らかに成型してある。
下面には丸みがついており、気流変動に穏やかになりそうだ。
ノーズ上面からフットボックス上面へのラインは、全体として綺麗なRを描けている。
現在の規定では、モノコック下を上げたい、プッシュロッドを立てたい、しかしノーズ上面で穏やかなラインを描きたい、と、
パッケージさせる要素が複雑に絡み合って簡単には済まないエリアで、今回のトロロッソの仕事ぶりは高く評価できるだろう。
この辺りのまとめ上げ方にハイレベルな設計センスを感じる。
フロントウイングはトレンド通り、全体的に前輪の外側へと気流を導く処理がなされている。
カスケードの最も内側のエレメントにはフラップが無く、カールさせた物としているのが特徴的だ。
フロントウイングのフラップはメルセデスの様に、外側部分の間隙数が多い。
これは、外側部分ではウイングが気流を上方だけでなく外側へも導くのでここで剥離し易い為、間隙を増やしそれを防止する目的だ。
前輪アップライト内側の空力付加物は控えめで、今後アップデートの余地がありそうだ。
ノーズ上面には、Sダクトのノーズホールが開き、この部分にピトー菅が1本立っている。
ノーズのカメラはメルセデスの様に、ステーを使って上方へレイアウトしている。
ここでノーズ上部の正圧が、左右へ別れる進路を制御している。
モノコック前部下側のディフレクターは、左右4枚の間隙タイプで、後方へ行く程湾曲しており、緻密な造りを見せる。
フロントサスペンションを前から見た時の、上下ウィッシュボーンのハの字の角度は昨年よりも僅かに強くなり、
フロントロールセンターが若干高くなる代わりに空力性能を優先した設計となった。
しかし、他チームと比べればまだハの字は弱めの部類だ。
ハの字の角度が弱いにも関わらず、タイロッドをアッパーアームと同じ高さにパッケージできているのも評価できる。
ロワアームはメルセデスが先鞭をつけたY字型とし、フロントウイングの後流を改善している。
サイドポッド上面前縁のリフト抑制フィンは左右2枚づつで、内側へ傾斜して装着しており、配慮が細かい。
サイドポッド前側のベーンは他チームの様に上部を囲う事はしていない。
ここは簡素な造りだが、囲うデザインと比べ上部を開放している分、干渉抵抗は確実に少ないだろう。
トロロッソは今年もサイドポッド側面下部を狭くしており、コークボトルは狭く深い。
サイドポッドの排熱は余裕が無いかもしれない。
コークボトルラインは、リヤサスペンションのプルロッド車体側取り付け位置までギリギリのパッケージだ。
サイドプロテクターの側面は気持ち厚さがあるかもしれない。
厚みがあれば安全性は高まるが、純粋に空気抵抗となる。
インダクションポッドは縦に2本仕切りが入り、ここはエレガントさに欠けるかもしれないが、荷重テストには有利そうだ。
リヤサスペンションのアッパーアームは、アップライト側取り付け部分がスムーズな成型を見せる。
プルロッドは車体に対して角度がだいぶ立っており、作動性が良さそうだ。
リヤウイングの翼端板とモンキーシートの翼端板は、高圧排出スリットが翼端板前縁まで切れており、新しい形だ。
前縁を切り欠いた分、干渉抵抗が少なそうだが、気流変動に敏感になるかもしれない。
規定下で翼端板を立体に形成できる20mmの幅を、工夫を凝らして使い込んでいるのも感心できる。
モンキーシートは立体形状の翼断面で間隙式。中央1本のリヤウイングステーから接続しており、無駄のない造りだ。
排気管はメインが上側で、ウェイストゲートが下側に2本。
フロントエンドとサイドポッドのパッケージがハイレベルで、且つ未だ改善の余地もある。
シーズン中にどんなアップデートを見せるか、そして何レースでレッドブルを食えるか注目したい。
ドライバーは引き続き、マックス・フェルスタッペンとカルロス・サインツJrが務める。
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