ルノー R26   text & illustration by tw  (2006/ 1/10〜 2/ 1)


1月10日からルノーの2006年用マシン「R26」のテスト走行が開始された。
写真は、F1Racing.jpや、F1 Live.com等を参照。
サーキットはスペインのヘレスで、シェイクダウンを担当したドライバーはG.フィジケラ。
今回のR26では、昨(2005)年のマシンで特徴的だったサイドポッド上面全体のシャークルーバーは廃止された。

以下、R26の概観から筆者の私見を記す。
各部パーツの呼称については、[各パーツの名称]ページを参照。



現在、フロントウイングは昨年と同じタイプを装着しているが、開幕戦までにアップデートされるかもしれない。

昨(2005)年車同様に、モノコック下部のロワアーム取り付け部は、V型キールを採用している。
このV型のキールとノーズ下面の空間を、フロントウイングの後流が通過する。

フロントサスのジオメトリーも、ほぼ昨年型を踏襲している模様。



今(2006)年からの規定で、エンジンが3.0リッターの10気筒から2.4リッターの8気筒となり、
エンジンの発熱量は大雑把に2割程度減少したと思われる。
その為に昨年車と比べてサイドポッドのインテーク開口面積が小さくなった。

そしてサイドポッド側面下部の絞込み方も若干リニューアルされ、
インテーク形状の外枠が、車体内側へ寄せ込む様なデザインとなっている。
これは昨(2005)年のマクラーレンを模範した様な形状。


サイドポッド内を通過するラジエーターの廃熱流量が減少した事から、
サイドポッド上面を大きく落とし込む事ができている。

この様にサイドポッド上面を後方へ向けて低くデザインする事で、
サイドポッド上面前端からリヤウイングまでの車体上面を凹型にして、
車体上面の流速を低下させ、流れの圧力を上昇させる事でダウンフォースを加算していると考えられる。



ラジエーター・チムニーは昨年同様、上方へ向けたタイプで、排出口の幅は狭い。

サイドポッド上側のミニウイングは、
昨(2005)年車では、ミニウイングの中央位置から1本のステーでフェアリングフィン上面へマウントしていたが、
今回のR26では、ミニウイングの車体内側の翼端板をステーとして、
そしてこのステーは外側へ湾曲させて、フェアリングフィン上面にマウントしている。



サイドポッドのフェアリングフィンは、昨年の後半仕様と同様なので、
これも開幕前にアップデートされるかもしれない。



ミラーは、昨年よりもやや左右へ離して設置された。
ミラーは気流を乱してしまうので、
ミラー、サイドプロテクター、サイドポッド上面、この3つは
一つのパッケージとして空力デザインを考慮する必要がある。

サイドプロテクターは、規定逃れの為のフィンが撤去された。
(2月1日 訂正) フィンが確認できる写真が見つかりました。

ロープを通す穴は、昨年同様モノコックを横に貫通するタイプ。



インダクションポッドのインテーク形状は、やや縦長となった。
エンジンの吸気効率面では円形のインテーク形状が理想だと思われるが、
リヤウイングへ向かう気流は縦長のインテーク形状の方が有利となる。

ミッドウイングは昨年同様、ダウンフォース発生型で、幅が狭めのタイプ。



排気管の出口はほぼ円形で、ボディ上面をやや膨らまさせて排気している。

リヤサスは、作動性を良くする為にプッシュロッドの角度を立ててあり、
その為にロッカー(ベルクランク)の位置を左右へやや離して設置してある模様。


昨年同様、リヤのブレーキダクトを空力利用する為に、ダクトは高さが大きい物となっている。
現時点で筆者はこの部分を確認できる写真を入手できていないが、恐らく、
ブレーキダクトとして合法化する為に後部を開口させてあると思われる。

そして、ダクトの上下は翼断面に近い形状とし、
こうする事で、後輪が巻き起こす乱流を少しでも整える事に貢献し、
尚且つダクトを、サイドディフューザーとロワウイングの
フォワードウイングの様にして関連付ける事ができていると思われる。



サイドディフューザー下面のスプリッターは、両端に近い場所に設置されている。

センターディフューザーは昨年とは異なるタイプとなった模様。
車体を後方から見た時に、昨年車ではセンターディフューザーの中にロワアームが見えたが、今季のR26では見えない。

車体底面のスキッドブロックから続く、下段のセンターディフューザーは、
気流を跳ね上げる為の間隙フラップが設けられている模様。



リヤウイングは正面から見ると、上段ウイング底面の中央が高く、両端へ向けて下がる形状となっている。
この様なリヤウイング形状は、昨(2005)年のイタリアGPでレッドブルが使用していた。

上段ウイングの翼端部分は、ルノー独自のアイディアを継続して使用している。
これはウイング上面の高圧流を外側へ排出して、翼端渦を抑制するものと考えられる。

リヤウイングの支持法は、昨(2005)年のトヨタを模範して、上段ウイングの中央に1本のステーを立てて補強している。
上段ウイングにステーを設けて空力荷重を受け持つ事で、
ロワウイングは強度上の制約が少なくなり、空力を重視した形状とする事ができる。



今(2006)年からの新規定により、エンジンは最大排気量2.4リッター、V型8気筒、バンク角90度、その他細かく規制された。
そして、走行中に吸気管の長さを可変させるシステムも禁止された為、 そのコースレイアウトと、セッション中の予想気温によって、 エンジンに装着する吸気管の長さを変更する必要がある。



筆者個人の印象では、R26は無難に纏めて正常進化させたものに思えるが、
大きく進化した雰囲気はあまり感じられないと思う。ただし、
開幕前に施される筈の空力のアップデートまで真のポテンシャルは判断できない。
マシンの素性としての速さは合同テストの雰囲気からある程度察する事ができると思う。
(このページの最新更新日:2006/ 2/ 1
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