2008年 1月21日、ルノーの2008年用マシン「R28」がシェイクダウンされた。
写真は、GPUpdate.net等を参照。
以下、概観から筆者の私見を記す。各部パーツの呼称については、[各パーツの名称]ページを参照。
ノーズ先端の位置は低く、長さは長めだ。
フロントウイングの上段フラップは昨(2007)年のマクラーレンを真似た、両端を渡るブリッジ式となった。
ノーズとフロントウイングとを接続する構造が特徴的だ。
2001年のジョーダンの様に、メインウイングはステップドタイプで、ステーはその両脇の高い位置へ接続している。
これはステーと呼ぶよりも、内側への水平方向へと続くメインウイングの延長と呼ぶ事も出来る。
この構造は強度面では有利だが、空力効率の面では若干不利かもしれない。
その理由はメインウイング上面中央部の高圧流を大気へ作用させられない為だが、
現在ではメインウイングの上方に上段フラップが存在する為、高圧流の大気への作用は考慮しなくても構わないのかもしれない。
フロントサスのアッパーアームは車体側からタイヤ側へ降りる角度となった。
この事からフロントサスは、昨(2007)年までのV型キール方式は廃棄され、
現在F1界で主流となっているゼロキール方式とされた事が予想される。
昨(2007)年あたりからF1界ではフロントサスはゼロキール方式が主流となっている。
そして昨(2007)年からF1GPではタイヤはブリヂストンの1社供給体制となっており、
全チームに供給されるタイヤはゼロキールのジオメトリーに対応できる構造の物となっている可能性が想像できる。
その為、供給されるタイヤは、Vキールの様に特殊ではない車体コンセプトに特化された物ではない事が想像され、
この事からルノーも従来の一般的な車体コンセプトを廃棄し、ゼロキール式としたのかもしれない。
昨(2007)年型ではミラーが車体両端に置かれサイドプレートと一体化していたが、
今年のR28ではミラーはコクピット寄りに配置された。
サイドプロテクターの新規定導入により、サイドプロテクターとヘッドレストとの間の溝の復活を余儀なくされた。
まだ写真ではよく確認できないが、昨(2007)年のフェラーリに習う形で、
エンジンカウル後端は排気口となっている様だ。この形状は上半球の様な丸めだ。
(このページのここまでの最終更新日:2008. 1.22)
F1速報誌ヨーロッパGP号にて、R28のステアリングホイール裏側の写真を観る事が出来た。
昨年までのステアリングホイール裏側のパドルは、シフトアップ・ダウンの2つと、
その下側にクラッチのパドルが左右に付いていたが、
今回観る事が出来た写真では、シフトアップ側にもう一つのパドルが追加されている。
このパドルは一体、何の役割を果たすのだろうか?
尚、メディアの情報によれば、マクラーレンはシフト・パドルを計4つ備えているらしい。
ここからは筆者が考えた事の一つであり、あくまで可能性の域を出ないが、
追加されたパドルはシームレス・シフト・ギヤボックスを操作している可能性は考えられないだろうか。
下はシームレス・シフト・ギヤボックスの想像図を示す。
シームレス・シフト・ギヤボックス搭載のマシンがシフトチェンジする際には、
事前に「次にシフトするギヤと」ドッグハブが接続されていなければならない筈だ。
車輌規定により、今(2008)年から、全チームのマシンが共通のECUを使用する事となっているが、
その共通ECUがシームレス・シフト・ギヤボックスの制御機能を元々持っていない場合には、
シフトチャンジを行う前に、次にシフトするギヤとドッグハブを接続しておく操作が必要となる。
例えば、ロング・ストレートを現在3速で全開で走行している際には、
既に4速ギヤとドッグハブが接続されていなければ、ギヤボックスはシームレスシフトとして機能しない。
その為、3速で走行している際にシフトアップ下側のパドルを操作する事で、ドッグハブを4速と接続するのではないだろうか。
マクラーレンのシフトパドルは4つとなっているそうだが、ルノーのシフトパドルは3つである。
この事から考えられる事は、ルノーR28は、トップギヤである7速に入った瞬間に、
自動的に一つ下の6速とドッグハブが接続する様に制御されている可能性はないだろうか。
ただしこの場合には、R28は7速以外のシフトダウン時にはシームレスシフトとして機能しないし、
そして共通ECUがシームレス・シフト・ギヤボックスのダウンシフト制御機能を元々持っている事にもなる。
その為、追加されたシフトパドルはシームレスシフトの操作ではないかもしれない。
シームレス・シフト・ギヤボックスを搭載する他の今季マシンのシフト・パドルはどうなっているのか興味深い。
(このページのここまでの最終更新日:2008. 1.22)
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このパーツがいつのセッションで使用されたかは不明だが、
11月に発売されたAUTO SPORT誌にルノーR28のリヤ部分の写真が掲載され、
元F1デザイナーのゲイリー・アンダーソン氏が誌面で解説した。
正確なイラストではないが、大体同等の形状を左に示す。
アンダーソン氏の解説を踏まえてから筆者なりに加筆をすると、
タイヤは形状上、タイヤ上面の気流が絞られ高速化する事でリフトを発生する。
(左図の赤い気流線で示す。)
そして今回ルノーは、後輪の横側のフェアリング フェンスにダクトを増設し、
そのダクトの排出口は出口を絞って横方向へ向けて、タイヤ上面へ向けて気流を供給し、
こうする事でタイヤ上面で発生するリフトを緩和する作用を持たせている。
アンダーパネルやウイングやタイヤ上面等の構造物は、前方から後方へ向けて真っ直ぐに気流が通過すると効率良くダウンフォースやリフトを発生する様だ。
その為、アンダーパネルやウイングは、気流通路の横側から気流が進入すると空力効率が低下する。
これを逆手に取って、タイヤ上面へ横方向から気流を供給すれば、“リフト効率”が低下すると考えられる。
尚、アンダーソン氏の解説に加え、筆者はこのデバイスはリヤ ウイングへの気流供給状態を良好化させる効果もあると考えている。
このデバイスが在る事で、回転する後輪が巻き起こす乱流を外側へ追いやる事が出来、リヤ ウイングへ綺麗な気流を供給する事が出来ると考えられる。
ルノーが登場させたこの斬新なアイディアを筆者は高く評価したい。 |
(このページの最新更新日:2008.11.08)
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