ルノーRS17 text by tw (2017. 2.22水)
まず、ルノーにはレッドブルからピート・マチンが移籍しており、空力責任者に就いている。
彼はアロウズでシニアCFDエンジニアを務めた後、ジャガーへ移籍し、
レッドブルが2010年から2013年までタイトルを4連覇したマシンらの開発を風洞で担っていた。
彼の任命により、これまで空力責任者だったジョン・トムリンソンは空力副責任者となった。
チーフテクニカルオフィサーはボブ・ベル、
シャーシ担当テクニカルディレクターはニック・チェスター、
チーフレースエンジニアはキエロン・ピルビームが務める。
そして2017年 2月21日、ルノーの2017年用マシン「RS17」が公開された。
この新車の概観は、F1通信 や、F1 Gate.com 等を参照。以下、車体の概観から筆者の私見を記す。
そして今回のRS17では、ここに側面下部クラッシャブルストラクチャー(衝撃吸収構造)を内包している可能性が高い。
映像では、この上面には取り外し可能なパネルが見えたので、何か、内部へ手を入れる必要があるのだ。
そしてサイドポッド両端手前の縦のベーン(ポッドウイング)を観ると判るが、アイディアがよく練られていて独創的なマシンだ。
このポッドウイングはS字型で、上が後ろへ、下が前進している。
下部は3本のスリットが切ってあり、間隙フラップの効果を持たせてある。
このスリットはサイドディフレクターが気流を外側へ跳ね飛ばす関係で必要なのだろう。
ポッドウイングとサイドポッド両端との接続の造形も複雑だが、色が黒で現時点では詳細が判らない。
無難なテンプレマシンにはせず、様々なトライを試みているのは観る側としては面白い。
ただ、このマシンで最大の懐疑点はインダクションポッドの下だ。
昨年のメルセデスの様にインテークが幅広なのはいいのだが、
その下のセパレーターが無駄に大きく、かなり多くの気流を左右へ別けてしまっている。
それはサイドプロテクター後部の流速を高めてリフトを発生させる恐れがあるし、
多くの気流を左右へ別けるのは純粋に空気抵抗の無駄ではないのだろうか?
フロントウイングはノーズ側のフラップが極端に急角度で、外側へかけて角度が寝ていく。
こうすると、フロントウイング上面の気流を外側へ導く事ができ、前輪と気流との正面衝突角を軽減する事ができる。
車体下へ綺麗な気流を供給する為に、ここはできるだけ前輪から内側へ巻き込む乱流を軽減したいところだ。
フロントウイング下面のスプリッターはストレートな物が3枚づつある。
これも前輪へ向かう気流の進路を制御する重要パーツだ。
ノーズ上からモノコック先端にかけてはSダクトのノーズホールがある様で、
これはノーズ下の気流を活性化させ、境界層を軽減する。
上から見てフロントサスペンションのタイロッドは後退角がほとんどなく、ほぼストレートで、
するとパッケージレイアウト上、ホイールベースが長くされている可能性が高いだろう。
サイドディフレクターは下面に水平プレートが着いていて、下方へ流れる空気量を制御している。
サイドディフレクターの上端が、最初はしばらく水平ラインが続くのも面白い。
サイドプロテクターの外側にはシャークルーバーが開いている様だ。
エンジンカウルは低くなったリヤウイングを考慮してシャークフィンとされた。
リヤサスペンションはプルロッドで、上下ウィッシュボーンが高い、現代のスタンダードデザイン。
リヤウイング翼端板は、自由に造形できるスペースを利用して3枚程の(ガーニー作用の?)フラップがある。
翼端板の下部は多数のスリットがあり、気流を活性化させている。
ドライバーは、ニコ・ヒュルケンベルグとジョリオン・パーマーが勤める。
筆者はこの最低重量のあまりの重たさに、安全性について危惧している。
例えば満タンの燃料を積んだレースのオープニングラップに、もしブレーキが故障してコースアウトした場合はどうなるか?
(1999年イギリスGPでこれは起きて、M.シューマッハは死にかけた。現在のマシンにこの故障が起きるの確率は低いが、機械である限りゼロにはならない。)
その際は、マシンを減速させられる要素は「地面」の抵抗と、空気抵抗だけだ。
マシンを減速させる「地面の抵抗」で最も効果的なのは、波打ったサンドトラップで、
その逆に最も減速効果が無いのがターマックの舗装だろう。
現在のトラックを目にしている限り、後者の比率がだいぶ上がってきている。
筆者がF1を観始めた1990年の最低重量は、ドライバーを除いた状態で計測して505kgであったが、
当時のドライバーが75kg程で、それを勘定すると今年は1990年より148kg(!)も重いのだ。
そして重い車重は、ドライバーの技量の差が小さくなってしまうと考えられる。何故なら軽いマシン程、挙動がピーキーとなるからだ。
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