ルノーR.S.20

text by tw (2020. 3.12木)

ルノーのニューマシン、「R.S.20」は先日の冬のテストで既に登場していたが、
車体全体が黒いカラーリングの為、ボディワークの形状がよく判らなかった。
そして2020年 3月11日、今年用のカラーリングが施された「R.S.20」の姿が公開された。
この新車の概観は、F1通信を参照。以下、車体の概観から筆者の私見を記す。



「R.S.20」は、インダクションポッドが太い事以外、あまり特徴のないマシンに見える。
昨年車と変わった部分はノーズで、メルセデス型の低く細いタイプとなった。
ノーズ上面は丸みをおびて、気流をより左右へ導いている。
左右にはRのついた“ヒレ”を装着し、これはノーズ下部の気流を外乱から守っているものと思われる。

フロントウイングのアウトウォッシュは弱めへ変えられた。
その代わりに、前から見たフラップ面積が広いので、フロントのダウンフォース発生量自体は多いだろう。

翼端板の上縁に、小さく狭幅の“フタ”が着いているが、
これはフラップ上面の気流を絞る作用があり、やや速めの気流をフラップ後端から外へ噴き出している。
この部分は細かい空力チューニングの跡が見える。



モノコックはトレンド通り、先端の幅が広い。
これで、フロントサスペンションのプッシュロッドの角度をより立たせ、作動性に寄与している。

ワイドなモノコック先端をフル活用して、ノーズホールの排出口は幅が広い。
このエリアの気流変動を穏やかにする為、L字フィンで気流を安定させてある。
モノコック上面両端には、前後に長いフィンがあるが、これはガーニーフラップの役割かもしれない。
ガーニーを付けると、気流をガーニーを乗り越える際に細かい渦を発生させ、気流変動の挙動が穏やかになるのだ。
フロントサスペンションのウィッシュボーンは今年もハの字マウント。

アッパーアームは、アップライトから腕を上へ伸ばして接続するハイマウント方式となった。
これでステアリングロッドはアッパーアームと同じ高さにはできなくなる。
ステアリングロッドはロワアームと同じ高さにはせず、上下ウィッシュボーンの中間に露出させたが、
ルノーは昨年も中間位置にステアリングロッドをレイアウトしていた。



モノコックサイドには流行のブーメランベーンを装着。これで前輪の回転が巻き起こす乱流を斬っている。
サイドディフレクターは凝っている様子だが、色が黒いので詳細な形状がまだ判らない…。

サイドポッドのエントリーは引き続きレッドブルタイプで、上面のリフトを軽減している。
サイドポッド上面から左右へ気流をこぼすラウンド形状は控えめな部類だが、
マシンの速さを追求したいならば、もっとアグレッシブに攻めた形状の方が良いのではないだろうか?

ルノーは毎年、インダクションポッドが太いのが特徴だが、筆者はその意図がよく解らない。
インテークの仕切り方も独特で、内部流路が他チームと異なっていそうだ。

アンダーパネル両端のスリットは凝った形状で、ここも空力チューニング作業の跡が見える。

リヤサスペンションのロワアームは、後輪車軸と同じ程の位置と高くして、ディフューザーの効率に寄与している。
ただ、アッパーアームのレイアウトはコンベショナルだ。

リヤウイングステーは今年も2本のスワンネック式で、ウイングの下流を重視している。
縦に折れ曲がる翼端板にはいくつか穴を開け、ウイング下面の低圧を有効に作用させようとしている。

「R.S.20」全体的に、開発の跡は見えるが、ここが他チームに比べて特に優れているというエリアが筆者には見えない。
今年、コンストラクターズ4位を狙うには、まだまだ多くのアップデートが必要かもしれない。

ドライバーは引き続き、ダニエル・リカルドとエステバン・オコンのペアだ。

[Site TOP] [ルノー] [ロータス] [ルノー]