ザウバー C23　　　text & illustration by tw　(2004. 1.13〜18)

まず、C23はザウバーが設計開発したものでは無く、フェラーリF2003-GAのコピーマシンである。
C23はF2003-GAに酷似している、という表現では相応しくなく、F2003-GAそのものを少しだけ変更を施し ただけのマシンであって、サイドポッドのカウルの小さな膨らみまでもが同じなのである。
この１年落ちのフェラーリが製造された場所は筆者には分からないが、F1マシンというものは図面のデータ を得たらそれで即製造可能になる様なものでは無い筈である。


以下に1月12日の発表時で筆者が気付いたF2003-GAとの相違点を記す。

・ フロント・ウイングを過去のザウバーのウイングヘ交換。(発表時のみの仕様と思われる。)
・ 前側のディフレクターが取り外されている。
・ ヘッドレストは若干違う物に変更。
・ エンジンカウルを2004年の規定に対応させ、カウル後端は尾びれ状に変更。
・ リヤウイングも2004年仕様で、翼端板が2003年までよりも後方へ100mm長い。


そして、エンジンは型落ちではなく今年度のフェラーリと同タイプの物を使用できるとの事だが、これは今 季からの１GP／１エンジン規定に、昨年のエンジンでは対応できない為である。

テスト走行では早速F2003-GAと同じ形状のフロント・ウイングに交換された。


1995年に、リジェ・チームがベネトンの同年型コピー・シャーシで参戦したが、その時は両者に搭載エンジ ンの違いがあった。(ベネトンはルノー、リジェは無限ホンダ)。

今回のフェラーリは、ほぼセカンドチームの様な存在となっているザウバーの競争力を単に向上させる目的 よりも、ザウバーにフェラーリの開発部隊としての役割を担わせる事の方が主目的の様に筆者は思う。
今年からＢＡＲがミシュランへスイッチした事から、フェラーリはタイヤテストの有効なデータを確保する為 に今回の措置を考えたと思われる。

フェラーリ側としては、既にデータの豊富なF2003-GAになるべく近い状態でザウバーに走行してもらう方が 有効な開発データを得る事ができると思われるので、今年のザウバーの開発方向性は限られたものになるの かも知れない。
しかし、フェラーリとブリヂストンによるタイヤ開発の方向性が、フェラーリのマシンだけの都合を考えた ものとなって他のブリヂストンユーザーがそのタイヤを使いこなせない事態となった場合でも、ザウバーは その種の被害は被らないで済む可能性も考えられる。


今年筆者が“C23”で興味の有る事は、燃料タンクの容量である。
2003年からのレース・ルールの戦略上、F2003-GAのままのタンク容量では大き過ぎる筈である。
タンク容量を変更するには、マシン全体を考慮したそれなりの開発が必要となる。


筆者はF2003-GAの発表時から思っているが、インダクションポッド・エアインテーク下のセパレーターの部 分について疑問に思う。

 (右図:フィン構造)

 この様な形状とするならば、この部分はマクラーレン式のロープを通す穴とした方が良いと思う。


リヤ・ウイングは新規定により翼端板部分だけを後方へ100mm延長させているが、これにより翼端流が今ま でとは変わり、2003年に流行したリヤ・ウイング・フラップ後端の両側を前方へカーブさせる手法はあまり 有効ではなくなった事が考えられる。
このリヤ・ウイングの形状変更は、スリップストリームにどう影響する事になるだろうか？　従来よりコー ス上で追い抜き易くなるだろうか？

今年のこの新規定により、リヤ・ウイングの翼端板にはスポンサーロゴを描ける面積が増えた。
(個人的にはマシンを真横から観た時の翼端板の縦横比が前後方向に長過ぎてあまり好みではない。)


[総括]

 １年落ちとはいえマシンはF2003-GAであり、ドライバー２人はトップクラスのスピードを持つフィジケラと マッサなので、チームさえきちんと機能すれば、2004年のザウバーは躍進できる可能性が有ると思う。
但し、今後の開発について考慮すれば特に前半戦が重要であり、１GP／１エンジン規定へ問題無く対応しト ラブルを出さない様努める事が肝心である。


SAUBER PETRONAS C23　(発表値)
　全長　４６００ ｍｍ
　全幅　１８００ ｍｍ
　全高　１０００ ｍｍ
　ホイールベース　３１２０ ｍｍ
　フロント・トラック　１４７０ ｍｍ
　　　リヤ・トラック　１４１０ ｍｍ
　重量　　６００ ｋｇ　（空タンク状態でドライバー込み）
　エンジン型式　ペトロナス ０４Ａ
　クラッチ　ＡＰ社製　カーボンクラッチ
　トランスミッション　フェラーリ製　縦置き７速セミ・オートマチック
　ブレーキ　ブレンボ社製　６ピストン・キャリパー
　タイヤ 　ブリヂストン社製　 フロント 265/55R13 ： リヤ 325/45R13
　ホイール　Ｏ.Ｚ社製　　　　　フロント 12J-13　　： リヤ 13.7J-13
　ダンパー　ザックス社製
　シャーシ電気系統　マグネッティマレリ社製

（このページの最終更新：2004. 1.18）
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