ザウバー C29   text by tw  (2010. 2.01月)


2010年 1月31日、ザウバーの2010年用マシン「C29」が公開された。

昨(2009)シーズンをもってBMW社がF1GPから撤退した為、
今(2010)シーズンのザウバーは、再びフェラーリ製のエンジンを搭載する事となった。
BMW社に買収される前のザウバーチームは、フェラーリ製エンジンを搭載するシーズンが多かった。

ザウバーチームは一旦 BMW社 に買収されたが、BMW社のF1撤退により、
元々のチームオーナーであるペーター・ザウバーがチームを買い戻し、
今年からまたプライベーターとしてF1に参戦し続ける。
ただし何故かチーム名は「BMWザウバー」のままである。

それでは、新車「C29」の写真は、Formula1 GPUpdate.net等を参照。 以下、概観から筆者の私見を記す。



ノーズ先端の位置は高い。(それでも昨年のBバージョンよりかはやや低いかも。)
物理的に、ノーズ先端を高くすればする程、車体底面と車体側面下部へ多量の気流を供給する事になる。
となると、それはそれだけの空気の量を車体の後方へ引き抜けるという事であり、
リヤエンド下部は多層ディフューザー(2010年まで可)として大量の気流を引き抜いている可能性が考えられる。
車体底面で稼ぐダウンフォース(=グランドエフェクト)は、
少ない空気抵抗で大きなダウンフォースを発生できる為、空力性能上、最重要項目である。



ビーグル・ダイナミクス上、フロントのロールセンター高は出来るだけ下げたい。
その為、C29はホイール内の最上部にアッパーアームを接続している様だ。
しかしホイールは円形であり、そうするとタイロッドをアッパーアームと水平の位置とする事が出来ない。
その為、タイロッドはアッパーアームよりもやや下方にレイアウトされている。
アッパーアームと水平の高さでない以上、空気抵抗が増してしまう筈だが、
それよりも何とかフロントのロールセンターを少しでも下げ様という設計だと思われる。

ダミーカメラの装着位置は筆者は懐疑的だ。何故あの場所にしたのだろう?
カメラはタイロッドかアッパーアームと水平の位置に置くべきではないのか?



昨(2009)シーズン、最も空力 L/D比 (エル・バイ・ディー=空力効率) が優れていたのはレッドブルであったと思われる。
そのレッドブルが作り出したスタンダードに則り、サイドポッド上面は、後部へ向けて極端に低く落としこんである。
これだけ極端なローバックダウンだと気流が剥離しないのか?と懐疑的になる程だが、
ザウバーチームは、近代的で高性能な風洞と、
高性能な CFD (=コンピュータ・フルード・デザイン=電子計算流体解析)を所有している。
これらは驚くほど巨大なスケールの設備であり、この為、空力面で大失敗をする可能性は低いと思われる。
ただしそれには、風洞、CFD、実車走行データの相関が正しく摂れているという前提がある。

サイドポッド上面を後方へかけて低く落とし込む意味は、車体とリヤウイングが一体となり、
サイドポッド上面を後方へ低く落とし込む事で結果として車体に凹形状を形成し、サイドポッド上面の圧力を上昇させる事にある。
つまりリヤウイング単体で考慮するのではなく、車体全体でウイング形状を達成するコンセプトである。

尚エンジンの排気管は、サイドポッドに穴を開け、リヤサスのアッパーアームの上方を通過する様になっている。
これは無難な設計だと思う。



ドライバーの頭部を保護するロールバーは、昨(2009)年のブラウンGPに似た形状で、剛性面で有利な形状だ。
ただし、フェラーリF10等の手法に比べると、空気抵抗がやや大きい可能性がある。

エンジンカウルはシャークフィンが採用された。
これはコーナリング時に、エンジンカウル上端を気流が横から乗り越えて発生する渦流を軽減する効果があると思われる。



リヤサスはプッシュロッド式で、昨(2009)年に成功したレッドブルの様にプルロッド式とはしていない。
大容量の燃料タンクとなった今(2010)年のマシンは、
リヤ区間のスペース上、プルロッドの採用は難易度が高いのかもしれない。

リヤのロールセンターは低い。
これはサスペンションのジオメトリーよりも、空力デザイン上の理由でこうしたアーム角度となった可能性が高いと思う。

本来、エンジン(重量物)をミッドシップに搭載するレーシングマシンでは、
前後ロールセンターはやや前下がりとするのが基本である。
それが、現代のF1マシンではゼロキールとした事でフロント・ロールセンターが異常に高く、リヤは空力上、低められている。

よって最早、現代のF1のサスペンションは、ジオメトリーや剛性や作動性などお構いなく、
前後荷重移動と縁石の乗り上げ時にストロークしてくれればそれで良いと云う感じであって、
極論すれば車体とホイールが繋がっていればそれで良く、全てを空力性能の追求に費やしている様だ。
ドライバーはこの状態を理知的に把握してドライビングする必要がある。

リヤサス、アッパーアームのカウルの開口部はストロークが必要な分よりも大きめで、
ここから排熱している事が判る。

発表当時のリヤウイング翼端板のウイング上面・高圧排出スリットは4本切ってある。



2009年シーズンをもって日本勢は、トヨタとホンダがF1から撤退し、
ブリヂストンも2010年シーズン限りでF1へのタイヤ供給を止める事が決定している。
これで2010年シーズンをもって、日本の大黒柱である3社はフジテレビへスポンサードしなくなる訳だ。

先日、日本のフジテレビはバーニー・エクレストンと2011年までの放送権の獲得を更新した様だが、
果たして2011年度にフジのF1放送にスポンサーは着くのか?、
そして2012年以降に日本でF1GPは放送されるのか?、と筆者は心配でならない。
ハッキリ言ってしまうと、筆者はこの状況に希望を見出せず絶望しているのが本音である。

唯一、残された希望の星は小林可夢偉選手の活躍であって、今後のザウバーのマシンに競争力がある事を祈るのみである。

(このページの最新更新日:2010. 2.01月 Am 1:28

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