ザウバー C34   text & illustration by tw  (2015. 1.31土)


昨年のフェラーリのパワーユニットは、規定で最小限の145kgを超えている様で、
それもあって昨年のザウバーはマシンの重量オーバーに苦しんだ為、今季への課題は軽量化だっただろう。

2015年 1月30日、ザウバーは2015年用マシンC34を公開した。今年度も引き続きフェラーリ製のパワーユニットを搭載する。
この新車の概観は、F1通信 等を参照。以下、車体の概観から筆者の私見を記す。



写真で観た物は発表仕様のマシンだが、異常に地上高が高い。そこまで高くできる設計とする必要があったのだろうか?

ノーズは先端に大きなコブが設けられ、ウイングステーの側はノーズ高を高めている。
単純に云ば、車体下方へ多く空気を流せる程、ベンチュリー効果による空力効率の良いダウンフォースを得る事ができる。

フロントウイングは4枚+ケスケードの構成だが、2枚目と3枚目が中央付近で一体となっており、この部分に肉厚がある。

ノーズ下のディフレクターは左右恐らく3枚づつの間隙式で、ノーズ下の流れの勢いを落とさない様にする意図が見える。

上下ウィッシュボーンは普通にハの字マウントで、タイロッドはアッパーアームと同じ高さにある。
この場合アッパーアームはホイールの中で最も高い位置(円の頂点)には配置できず、そこより少し低い位置となる。
タイロッドが高い位置にあると、モノコックの中でステアリングシャフトはその関節を大きく曲げずに済むので、抵抗が少なく操舵できる。

アッパーアームは後斜している様で、 横から見た前輪の瞬間中心(アッパーアーム車体取り付け軸とロワアーム車体取り付け軸を後方へ延長した時に交わる点)を低めている。
ダブルウィッシュボーンでのフロントのアンチダイブジオメトリーは、ロワアームを前斜に、アッパーアームを少し後斜させるのが一般的だ。

フェラーリとは対照的に、ブレーキダクトが奥まった位置で小さい。
アップライトに備えたディフレクターの方が目立つくらいだ。

バージボードは、その前側にもう一つ小型の物が着いており、ここは細かさがある。

サイドポッド上面前端にあるフィンは外寄りに配置された。
このフィンは進行方向に角度がついて備えられており、
フィンで意図的に発生させた小さな渦流でサイドポッドにリフトを発生させなくする目的であると考えられ、
内側はリヤビューミラーが気流を乱すので、ザウバーの場合内側にはフィンが必要なかった可能性はある。

正面から見てサイドポッドは怒り型で、外側が600mm程まで高い。
これは前輪が巻き起こす乱流をサイドポッドで絞り、後方へ整えて流す目的だ。

ザウバーは2011年からそうだが、ヘッドレストが四角く、頂点が平なのは何故だろう?
ヘルメットに合わせるなら、他車の様に丸みのついた形状とすべきではないだろうか。

エンジンエアインテークの両脇には、耳の様なオイルクーラー用と思われる流路が備えられたが、
この形状ではリヤウイングへの気流に悪影響はないのだろうか?

エンジンエアインテーク下側のセパレーターの開始位置は奥まっており懐疑的だ。何故なら、
昨年のイラストで恐縮だが、右図の様にカウルの膨らみの位置が後ろにある程、リヤウイングへの気流を乱してしまうからだ。

コークボトルラインの下部はやや狭く絞り込んであるが、段が四角いのが気になる。

リヤウイングを支えるステーは2本と多く、取り付け方も芸がない。


空力デザイン面でここが良い、ここを頑張ったというエリアが見つからない。
ドライバーはマーカス・エリクソンと新人のフェリペ・ナスルだが、マシンの中身が良くないと今年も苦しそうな雰囲気が…。
まず総重量を軽くできているか否か。それが鍵を握ると思う。

(このページの最新更新日:2015. 1.31土)

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