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ザウバー C36   text by tw  (2017. 2.20月)



ザウバーは、昨年7月にロングボウ・ファイナンスからの買収で財政難から抜け出した。
新車開発の為に1年落ちのフェラーリ製パワーユニット(2016年型)を搭載する事を早めに決断していた。

そして2017年 2月20日、新車「C36」を公開した。
この新車の概観は、F1通信 等を参照。以下、車体の概観から筆者の私見を記す。



C36で最も目を引くのは、中央に支柱があるインダクションポッドだろう。
メルセデスが2010年の5月から使っていた形状と同じ種類だが、
メルセデスは翌年マシンでこの部分を廃案にしているし、筆者もこのタイプのメリットが解せない。
ザウバーが来年もこの中央支柱タイプとしているのか注目したい。

しかしC36の空力面で最も影響を及ぼしている部分は、サイドポッド後部が非常に高いパッケージとしてある事だ。
(*これで、2017年のテクニカルレギュレーションでも、ロワウイングが禁止されている事がほぼ確実となったと見れる。)
これはリヤウイングの効率よりも、ディフューザーの効率を重視する考え方で、ザウバーの昨年のマシンと真逆のアプローチだ。



フロントウイングは90年代に流行した様な、微妙に上下にうねった形状だ。それ自体に問題は無いのだが、
翼端板の下部が、現代の空力で必須な筈のトンネル状とはなっていない!
色が黒で見えないだけで、スプリッターがあるのだろうか?
もし翼端下部にトンネルデバイスもスプリッターも無いのなら、これはちょっとした事件だ。
翼端から吸い込む気流をどう緩和しているのだろうか?

フロントサスペンションのハの字マウントは今のF1マシンという意味では常識的な角度だ。
(つまり古くからのクルマのサスとしての設計を完全に無視しているのが10年前からのF1の常識だという意味。)

前輪のブレーキダクトは非常に小さく、冬のテストでもこのサイズで十分なのか不思議なくらいだ。



今季から再び、外側にサイドディフレクターを設置する事が許された事を考慮した上なのか、
サイドポッド下部前方にアンダーカットの“えぐり”が無い。サイドポッドの前方の面が垂直に続いている。
これはディフレクター内側とサイドポッド側面を通過する気流進路を考慮したのだろうが、
先日公開されたウイリアムズには深いアンダーカットのままとされているので、C36のここにも不安を憶える。

サイドディフレクターは久々に観る、大きめの3D形状。
ディフレクターの高さは低めだが、前後長は実用的なサイズだ。

サイドポッドのエントリー位置は前方から始まっている。この位置はできるだけ空力的な理由から決めたいが、
先日のウイリアムズも同じ様な位置である事から、今季の側面衝突規定をクリヤする為にはこの位置となるのかもしれない。
尚、車体を上から観ると、新規定で、サイドポッド前縁が外側へと後退している。

サイドポッド前部は全体に囲いのベーン(ポッドウイング)があり、下部は2枚構成で気流を細かく制御している。

コークボトルラインは下部を狭め、上流と下流を明確に別けている。

後輪手前のアンダープレートには背の低いベーンが、少なくとも2枚づつ見えるが、
これは外側へカーブしている様だ。この空力の解釈が正しいのか興味深いところだ。

リヤサスペンションの上下ウィッシュボーン位置が高く、下流を重視している。
具体的には、ディフューザーの気流の抜けを阻害しない様にする配置だ。



サイドプロテクターの後部にはフィンがあるが、現在のレギュレーションクリヤの為の物なのか空力パーツなのか筆者は知らない。

エンジンカバーは全体的に斜めの造形で、近年流行りつつあるタイプの形状だ。
これはサイドプロテクターの後流で発生しがちな有害な渦を整えようとしているのかもしれない。

エンジンカバーは噂に上がっていた大きなシャークフィンを装着している。これはリヤウイングが低くなった事の対策だ。
コーナリング時にインダクションポッドを乗り越える気流が渦を巻いてしまうので、それを真っ直ぐにしてリヤウイングへ流す意図だ。

リヤウイングはスワンネックで支えている。(ロワウイングが禁止されている証拠。)

リアウイングの翼端板は複雑なカーブを描いている。
これは単純な要素としては、翼端板と後輪との干渉抵抗を軽減する狙いがあるが、
リヤウイング後方へ向かっても湾曲しているので、リヤエンドの後流全体を意図した流れへとまとめあげる狙いがあるのだろう。
昨年までは翼端板を自由にデザインできる幅が20mm以内であったが、
新しい今季のテクニカルレギュレーションで、この自由な幅が拡大された様だ。



筆者はC36へ、全体的にあまりエレガントなパッケージではない様な印象を受けたが、
ザウバーの開発陣は、実利的なCFDや風洞の数値を重視したのかもしれない。
そして、各部にクラシックなアイディアを採用しているところが面白い。

しかし個人的には、このC36はクエスチョンだらけだ。
これがこのまま競争力を持ってまともに走るのか、ちょっと興味がある。

ドライバーは、マーカス・エリクソンと、新加入のパスカル・ウェーレインが勤める。

(このページの最新更新日:2017. 2.20月)
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