トヨタ TF105   text & illustration by tw  (2005. 1. 8 〜)

シャシー部門テクニカル・ディレクターマイク・ガスコイン
チーフ・デザイナーグスタフ・ブルナー
エンジン部門テクニカル・ディレクタールカ・マルモリーニ


2005年シーズン用の「TF105」は1月8日(土曜)にスペインのバルセロナで発表された。
(マシンの写真は F1 Live.com(日本語版) や、F1Racing.jp 等で参照。)

マイク・ガスコインが2003年12月にトヨタへ加入し、
今回のTF105が、最初から開発に関わった初のマシンとなる。

新車発表会でのガスコインのインタビュー記事に拠ると、
TF105は3月の開幕戦の前に、全く新しい空力パッケージでテストをするとの事で、
それまではTF105について明らかになるものは少ないかもしれないが、
まずは発表会の時点での写真から、筆者が目についたポイントを記す。



フロントウイングは明らかに発表会用のダミーと思われる。
 実戦仕様では、少しでも地上効果を得る為に中央へ湾曲させた低い形状となると思う。
 新規定でフロントウイング両端区間の最低高が50mm高くされたので、
 前輪へ向かう気流を作り出す翼端板の形状もリニューアルされると思う。

(黄色い区域がフロントのボディワークが許される範囲)


発表会でのフロントウイング形状


(例) 地上効果を重視するウイング形状



・フロントサスはセンターキール式。

・昨年のBARの様に、フットボックス脇に小さな水平板が見える。
 これは前輪内側ディフレクターと連携しているかもしれない。



・ガスコイン作だが、サイドディフレクター式ではなくボーダーウイング式。
 過去にガスコインがテクニカル・ディレクターを勤めたマシンは、
 ジョーダン時代はボーダーウイング式、ルノー時代はサイドディフレクター式だった。

 筆者はガスコインの能力について、彼がティレルに居た頃からずっと疑問に思っているが、
 彼を評価する際に問題となるのが、彼と一緒に働いているエンジニアやデザイナーだと思う。



・サイドポッドの両端は、流行に乗らず 下部を斜めに絞るタイプとはなっていない。
 まさか今はダミーのカウルで絞込みを覆い隠しているとは思えないが、今後このままだろうか?

・ラジエーターの置き方は、普通に昔からの斜め前進型。

・サイドポッド上面両端のラジエーターチムニーは、前後へ細長く、真上へ排出するタイプ。
 近年このチムニーはもはや排熱目的だけのパーツではなく、
 サイドポッド上面の圧力制御に関わる重要な部分となっていると思われる。

 チムニー外側とフェアリングフィン上面との空間のとり方も、
 車体側面と上面の気圧制御のポイントになっていると思われる。

・サイドポッド上面両端の小型ウイングは、昨年に比べて両端が大型化した。

・フェアリングフィンは昨年風の形状。
 ダウンフォース不足ぎみな形状に思うので、開幕までに変更されるかもしれない。

・コークパネル・エンドは後方まで延ばさず、後輪より手前の位置で終わっている。
 幅狭く絞り込んであり、この部分ではだいぶ開発努力のあとが見てとれる。
 今年からサイドディフューザーの高さを大幅に制限する規定となったので、
 少しでも多くのダウンフォースを得る為にコークパネルの絞り込みが要求されているのかもしれない。



・車体下面フロアの、後輪下部手前の部分は、新規定[3.8.4]でだいぶ切り取られた。

[3.8.4] (訳tw・意味は一応合っていると思う)

後輪中心線から前方へ400mmの地点より後ろで、
車体中心線から左右へ500mmより外では、
ボディワークがあってはならない。

ただし、その角となる部分に限っては、
140mm以内の半径のボディワークを許される。

(右は、上側がフロントで 下側がリヤの、車体を上から見た図。
色を塗ってある範囲でボディワークが許可される。)

 この規定によって、後輪手前とフロアに大きな空間ができて、
 ここへ外部から空気が進入してしまう事で、車体下面でのダウンフォース発生効率を損ねる効果がある。



・今年からサイドプロテクターの厚みが 25mm増されて 100mmとなった模様。
 これは安全性を向上させて且つ空気抵抗を増すので、現状に合った良いレギュレーションだと思う。

 小さいが、レギュレーション・フィンは有る。

 サイドプロテクター上面のラインは、後方への落とし込みが急となっており、
 これはガスコインが関わったマシンに共通しているポイント。

・昨年ルノーとフェラーリは、サイドプロテクターとエンジンカウルとの間の溝の頂上部を平らにしたが、
 今回のトヨタには今まで通り、浅いが溝がある。

・マシンを吊り上げるロープを通す穴は、昨年までのマクラーレン式ではなくなり、
 ヘッドレストの後ろ側で縦に穴を開ける形となった。

・インダクションポッドのエアインテークの下には、
 2003年からのフェラーリの真似をして縦のスプリッターがある。

・ミッドウイングの上面にようやくロゴが書かれた。



・排気管エンドは円形。

・サイドディフューザーは今年からのレギュレーションの為に低い。
 (リファレンスプレーンから上に 125mm以下。)
 跳ね上げたディフューザー両端の角の形状は丸められている。

・リヤのロワ・ウイングは、前後方向へ湾曲して外側が前進するタイプ。
 ロワ・ウイング中央部は、センターディフューザーと一体化している模様。



・リヤウイングの上段には、中央部分で2枚のウイングを支えてつなぐステーが有るが、
 写真をよく見ると、ボディカウルの後部上端とリヤウイング上段下面とをつなぐ黒いステーの様な物が見える?
 強度上必要無いと思うが、一体何の為に有るのだろう?

・リヤウイング翼端板は特徴的な形で、
 アッパーウイング横の部分だけを幅広くしてあって、それ以外の区間では20mm程狭くしてある。

 そして昨年トヨタが始めたアイデアで、リヤウイング翼端板の上部には、
 高圧流を外型へ排出するスリットが左右3つづつ開いている。

 昨年BARが始めた様に、リヤウイングより後ろ側の翼端板上端はラインカットされている。

 昨年からリヤウイングの広告面積を増す為に、
 レギュレーションで翼端板の最低面積が規定され、翼端板が後方へ延ばされたが、
 そのデメリットとして、斜め横からの角度でマシンを見た時に、
 リヤウイング裏側のスポンサーロゴが隠れてしまった。
(ここまではTF105発表後の内容。最終更新日:2005/ 1/11



そして、2月15日のバルセロナ・テストから、予告されていた新型空力パッケージが登場した。
マイク・ガスコインに拠れば、ノーズコーン、フロントウィング、バージボード、アンダーボディ、リアのボディワーク、
そしてブレーキシステムを新しくしたと言う。

この新型空力パッケージの最大の特徴は、
昨(2004)年にジョーダンが登場させた
「アッパー・ボーダー・ウイング」を採用した事。

このウイングの目的は、サイドポッド上面の前縁でリフトを発生させない様にする為だと思う。
このウイングは、サイドポッドの前側に設置してあり、
フラットボトムの規定が有るので、アンダー・ボーダー・ウイングを備えるマシンでなければ装着できない。

筆者も1999年頃にアッパー・ボーダー・ウイングを考案したが、
ウイング両端の形状をどうするか机上で試行錯誤を繰り返していた。
それは前輪内側からサイドポッド横側へ通る気流と合わせたい為だが、
ジョーダンやトヨタは単に直線的な翼端板を付けてある。

トヨタのアッパーボーダーウイング両端の跳ね上げ角度はだいぶ大きい。
翼端板はウイングよりも上側まで伸ばしてある。



今回の新型空力パッケージの他の部分について。

・ノーズ先端はやや細く、丸められた。

・フロントウイングは中央を低くして、その中央部は平たいウイング形状となっている。
 ルノーの様に中央部を丸くカーブさせれば更に低くできるが、
 平たい形状の方が、気流の変動と挙動の関係が穏やかかもしれない。

 ウイング両端は持ち上げた形状。これは下面が横から吸い込む気流の対処。

・翼端板のサイドフィンは無いまま。

・フロントウイングのフラップ上縁とノーズ下面は接近したままとなっている。
 これ程狭い空間だと、気流は流れ難くくなって横側へ溢れ出すと思うが、
 その辺りにノーズ横のダミーカメラが設置してある。

・昨年のウイリアムズの様な、ノーズ上面の両端にウイングが付けられた。
 昨年のウイリアムズよりも前側に設置してあり、翼端板は付いていない。
 これはノーズ上面とフロントウイングが跳ね上げる気流の安定板だと思われる。

・サイドポッドのフェアリングフィンは若干調整された様子で、
 TF105発表時よりも前端がやや下方から始まっているかもしれない。

(ここまでの最終更新日:2005/ 2/16


[スペック] (注:あくまでチームの発表値)  ( )内は昨(2004)年の発表値との比較
シャーシ: トヨタ TF105
ホイールベース3090 mm (同)
全長4530 mm (−17 mm)
全幅1800 mm
全高 950 mm
重量600 kg (ドライバーとカメラ含む)
トランスミッショントヨタ設計 トヨタ/Xトラック社製
7速+リバース ・ セミAT
燃料タンクATL製安全タンク
ステアリングトヨタ製パワーステアリング
ドライバー拘束具スパルコ社製
HANSデバイストヨタ・デザイン
エンジン: トヨタ RVX−05
排気量2998 cc
レイアウトV型 10気筒
最高出力900 馬力以上
最高回転数約 19000 rpm
バルブ駆動圧搾空気式
スロットル駆動油圧式
サプライヤー
タイヤミシュラン社製
ホイールBBS社製 マグネシウム製
ブレーキ
キャリパー&マスターシリンダー
ブレンボ社製
ブレーキ・ディスクヒトコ社製
ダンパーザックス社/トヨタ製
エレクトロニクストヨタ/マグネッティ・マレリ社製
スパークプラグデンソー社製
燃料&油脂類エッソ社製
[トヨタの1月のテスト・スケジュール]
ヘレス 11、12日新車ラルフ
13、14日新車トゥルーリ
13、16日TF104Bゾンタ
バルセロナ 18、21日新車ラルフ、
トゥルーリ
20、22日TF104Bパニス
バレンシア 25、26日新車パニス、
ゾンタ
27、28日新車ラルフ、
トゥルーリ


[Rd.1 オーストラリアGP (メルボルン市街地)  3月 4日(金曜)の写真から]

最近のテストで投入したアッパーボーダーウイングを使用。

サイドポッドのフェアリングフィンの上側に、小型フラップを追加した。このステーは中央1本式。
この部分はジョーダンが以前からフラップを付けている。

リヤウイングのフラップステーは、中央1本式と、左右に離れた2本式とをそれぞれ使う機会があった。



[Rd.2 マレーシアGP (セパン)  3月18日(金曜)〜19日(土曜)の写真から]

フロントウイングは中央部を更に低くしたステップド式を投入した。

ラジエーターチムニーは横方へ排出するタイプ。
チムニーの断面は、上面は直線的になり、下面はカーブしたダウンフォース発生型の断面形状となった。

排気チムニーの前側にシャークルーバーが開いている。

発表時から引き続き、ディフューザーは上角が丸みのある形状を使用している。
角に丸みがあると車体下の気流を引き抜く容量は少なくなるが、気流の挙動変化は穏やかになるかもしれない。


Rd.5 スペインGPの写真から (5/07更新分)

アッパー・ボーダー・ウイングは中央部分が無くなり、両端部分だけとなった。
これにより上部は「サイドポッド両端の手前のディフレクト・ウイング」と言う様な物へと変化した。




Rd.6 モナコGPの写真から (5/29更新)

フロントウイングの両側部分に追加のフラップを立てた。
これは翼端板とは少し間隔を空けて別体となっている。
支柱はセンター1本式なので、正面から見るとT字となっている。

前戦からサイドポッド手前の空力形状が新しくされた。
これは、サイドポッド両端部分から前方へ突き出すタイプのプレートと、
車体中央から左右へ生えたアンダーボーダーウイングとを、隙間を空けて設置した状態となっている。
サイドポッド両端から前方へ突き出すプレートの形状と合わせる様にして、
アンダーボーダーウイングは複雑な変形タイプとなっている。

リヤは、テールライト上方のフラップを装着した。


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