2007年1月12日、ドイツのケルンで、全F1チーム中、トヨタが最も最初に2007年用のF1マシンを発表した。
新車「TF107」の写真は、トヨタの公式サイト、F1racing.net、F1Live.com等を参照。
以下、概観から筆者の私見を記す。
各部パーツの呼称については、[各パーツの名称]ページを参照。
全体的な車体空力デザインは昨年のTF106Bと大差は無い様だが、
昨年よりもL/D比が、ロー・ドラッグ方向へ修正されているかもしれない。
ノーズは若干下方へスラントし、フロントウイングの気流を迎え入れる形となっている。
フロントウイング両端のアッパーエレメントは、
その前端の付け根以外では、翼端板と別体となっているのが特徴。
ノーズコーン上端に装着された、フロントウイングが跳ね上げる気流を制御するカナード
の位置は前寄りにあり、付け根はガルウイング風に折り曲げられている。
モノコック側のプッシュロッドの付け根部分には、カバーが装着された。
今年もフロントサスの上下アームはモノコックに直付けとなっており、キールは存在しない。
フロントサスの前側アッパーアームは、太く、立体的な形状となった。
このアーム内にステアリングロッドを収納している。
このアーム形状は空力的な理由だけでなく、
上下ウィッシュボーンが無理な角度で取り付けられているので、
アームに強度が必要な事もあるかもしれない。
フットボックス下面の両端から下へ向かってディフレクターを装着しており、
フットボックス下をトンネル状としている。
よく観ると、このディフレクターの下部は左右2段式となっている様だ。
今年も基本的にはボーダープレート式の空力パッケージだが、
背の低いサイド・ディフレクターも装着されている。
これは昨(2006)年中盤から投入されている。
他車と比較してトヨタのマシンで特徴的な部分は、フェアリングフィンと後輪内側のフェンスで、
後輪内側のフェンスがフェアリングフィンよりも前方まで延びており、
他車の様にフェアリングフィン上面の気流を車体内側へは誘導していない。
尚トヨタのこの形状は昨年にも使用したレースがあった。
フェアリングフィンの下方には、後輪手前の高圧を軽減する縦のベーンと共に、
フェアリングフィンと同調する形でシャドーフラップも装着されている。
テールライトは低い位置に配置された。
リヤ・クラッシャブルストラクチャーの上面には三角形のツノの様な形状が在るが、
よく確認できる写真が無く、どういった意図の物かは不明。
現時点では昨年のTF106Bと概観に大差の無いTF107だが、
現代のF1では、風洞やCFDでの空力開発が日々着々と進行する為、
開幕戦までにまたエアロパッケージのバージョンアップが行われる筈である。
TF107 スペック |
燃料タンク | ATL社製 |
ショックアブソーバー | ペンスキー社製 |
ホイール | BBS社製 鍛造マグネシウム |
タイヤ | ブリヂストン社製 |
ブレーキ・キャリパー &マスターシリンダー | ブレンボ社製 |
ブレーキ・ディスク | ヒトコ社製 |
ステアリング | トヨタ製パワーステアリング |
ステアリング表示板 | トヨタ/マグネッティマレリ社製 |
エレクトロニクス | トヨタ/マグネッティマレリ社製 |
トランスミッション | 7速 +リバースギア |
シートベルト | タカタ社製 |
HANSデバイス | トヨタ製 |
ホイールベース | 3090mm (注:公表値) |
全長 | 4530mm (注:公表値) |
全高 | 950mm |
全幅 | 1800mm |
総重量 | 600kg (ドライバー及びカメラ含む) |
| |
エンジン主要諸元 |
エンジン・コード | RVX-07 |
気筒数 | 8 |
排気量 | 2398cc |
出力 | およそ740馬力 |
最高回転数 | FIA規定に則り19,000rpm |
スパークブラグ | デンソー社製 |
燃料及びオイル | エッソ社製 |
|
(このページのここまでの最新更新日:2007. 1.14)
トヨタは2007年シーズンの開幕を前に、2月28日あたりのテストから、
新型デザインのノーズとフロント・ウイングを登場させた。
このフロントのデザインは、フロントウイングが上下2段構成となっている。
そしてノーズから左右へウイングが生える形ではなく、
上段ウイングの上面からノーズが生えるデザインとなった。
上下2段式のウイングとした場合、
上段ウイングと下段ウイングの間隔が接近し過ぎていると干渉抵抗が発生してしまうが、
元々今季のトヨタTF107はノーズ先端の位置が高いので、
上段ウイングと下段ウイングの間隔をとるには余裕があり、
この様な2段式ウイングのデザインがし易かったと考えられる。
しかしそれでも今回の上段ウイングと下段ウイングの間隔では、
上側ウイングは、ウイング単体としてはダウンフォースを増加させられない距離と思われ、
フロント区域全体の気流進路を変える事でダウンフォースを増加させようという意図だと思われる。
フロントウイングがダウンフォースを発生する原理は、
ウイング下面の高速(=低圧)流が路面と吸着し合う事と、
ウイング上面の低速(=高圧)流が大気へ作用する事の和である。
その為、今回トヨタがフロントウイング上面に近い高さにウイングを追加した理由は、
フロントウイングの後流のコントロールや、エアロ・マップの調整等が考えられる。
そして、発生ダウンフォース量の総量に大差は無くても、
ダウンフォースの発生中心位置が前寄りとなる効果があるかもしれない。(右図) | |
|
(このページのここまでの最新更新日:2007. 3.03)
|