誰もが驚いたあのフロント・セクション。しかしフロント部分の空気の流れ方や通路そのものは、
見た目のインパクト程には大きな違いは無いと思われる。
ノーズを後退させた理由は、前回の考察のマクラーレン同様に、フロント・ウイングの上面正圧の有効化などが考えられると思う。
マクラーレンMP4-19「ノーズをコンパクトにした理由」を参照。
ノーズは、スラントノーズとするなどの空力利用をしないのであれば、空力的には邪魔な存在と言える。
とは言え、ノーズをフロント・ウイングからできるだけ遠ざけたくとも、構造的にノーズはフロント・ウイングと繋がなければならない。
この制約の中で、今回ウイリアムズが考え出したデザインが、あのFW26のユニークなフロント・セクションという事になる。
今回、非常に大胆と思われるデザインを選択したウイリアムズだが、
仮にこのデザインが原因となって改善不可能な問題が発覚したとしても、ノーズコーン自体は交換できる物なので、
シーズンを棒に振るような事にはならないと思われる。
このFW26のノーズは先へ行くに従い幅が広がっているが、
こういった形状は、正面衝突時の衝撃吸収性だけでなく、空力的な意味が有ると筆者は推察する。
ノーズ形状と一緒に外向きなウイング・ステーは、3D形状のフロント・ウイング上面の流れ方に対応、考慮したものであると思う。
他に、ウイング・ステーがこういった大きなフィン状だと、コーナリング時にフロント回頭性の抵抗になると思われるが、
それの対策としてステーが外向き、タイヤで言えば“トー・アウト”がついている可能性を思う。
但し、こうした場合、コーナリング時の気流に、車体の反応が過敏となる可能性が考えられる。
2001年にフェラーリがスラント・ノーズとして以降、2002年のジョーダンや2003年のルノー等、
多くのチームがクラッシュ・テストに不利なノーズ形状を採用できているが、F1では何かコンポジット面での技術革新が有ったのだろうか?
ウイリアムズのフロント・ウイング・ステーの内側には、今も「ダブルS」マークが入れられている。
前方から見るとサスアームの角度は、車体側からタイヤ側へかなり降りる方向で、フロントのロールセンターはかなり高い。
リヤサスは一般的な角度なので、前後ロール軸はかなり後ろ下がりの筈である。
プッシュロッドのモノコック側の接続部分は、モノコック上面一杯よりもやや低めに位置している。
ブレーキ・キャリパーの位置は、普通に後ろ向き。
エンジンカウルは、マクラーレン同様、新レギュレーションに対応して後方へ長く延ばされた。
コークボトル開始位置を早めたい為か、ラジエーターの煙突はミニ・ウイングより前方へ離れている。
ラジエーターの煙突からの熱気は、斜め外側へ向けて排出されており、これはリヤ・ウイングへの気流の乱れを抑える工夫であると思われる。
コークパネルは、サイド・ディフューザー区間までカウリングしている。
一般的に、カウリング区間が長ければ、流速の若干の低下と引き換えに空気の流れ方を制御し易くなり、短ければその逆となると考えられる。