ウイリアムズ FW26 text & illustration by tw (2004. 1. 5 〜 1.12)

誰もが驚いたあのフロント・セクション。しかしフロント部分の空気の流れ方や通路そのものは、
見た目のインパクト程には大きな違いは無いと思われる。
ノーズを後退させた理由は、前回の考察のマクラーレン同様に、フロント・ウイングの上面正圧の有効化などが考えられると思う。
マクラーレンMP4-19「ノーズをコンパクトにした理由」を参照。

ノーズは、スラントノーズとするなどの空力利用をしないのであれば、空力的には邪魔な存在と言える。
とは言え、ノーズをフロント・ウイングからできるだけ遠ざけたくとも、構造的にノーズはフロント・ウイングと繋がなければならない。
この制約の中で、今回ウイリアムズが考え出したデザインが、あのFW26のユニークなフロント・セクションという事になる。
今回、非常に大胆と思われるデザインを選択したウイリアムズだが、
仮にこのデザインが原因となって改善不可能な問題が発覚したとしても、ノーズコーン自体は交換できる物なので、
シーズンを棒に振るような事にはならないと思われる。

このFW26のノーズは先へ行くに従い幅が広がっているが、
こういった形状は、正面衝突時の衝撃吸収性だけでなく、空力的な意味が有ると筆者は推察する。
ノーズ形状と一緒に外向きなウイング・ステーは、3D形状のフロント・ウイング上面の流れ方に対応、考慮したものであると思う。
他に、ウイング・ステーがこういった大きなフィン状だと、コーナリング時にフロント回頭性の抵抗になると思われるが、
それの対策としてステーが外向き、タイヤで言えば“トー・アウト”がついている可能性を思う。
但し、こうした場合、コーナリング時の気流に、車体の反応が過敏となる可能性が考えられる。

2001年にフェラーリがスラント・ノーズとして以降、2002年のジョーダンや2003年のルノー等、
多くのチームがクラッシュ・テストに不利なノーズ形状を採用できているが、F1では何かコンポジット面での技術革新が有ったのだろうか?



ところで、フロント・セクションをあれだけ新たな形としたならば、個人的にはカラーリングもそれに合わせたものにしてほしいと思う。
一つの案としては、ステーを紺や黒に、ノーズも細く見せるラインを描けば、マシンの印象はもっとシャープなものにできると思う。





(クリックすると拡大します。)



フロント・ウイングは、1994年のウイリアムズFW16の様に、規定の範囲内で中央部分が少しだけ前進した形状。
翼端板の下側は、2003年のルノーの後期型と同じ様な段差付きのトンネル形状。

ウイリアムズのフロント・ウイング・ステーの内側には、今も「ダブルS」マークが入れられている。



フロント・サスは、以前からの予想通りにツインキール式となった。
これはフロント・セクションとワンセットで考えなければならない部位である。

前方から見るとサスアームの角度は、車体側からタイヤ側へかなり降りる方向で、フロントのロールセンターはかなり高い。
リヤサスは一般的な角度なので、前後ロール軸はかなり後ろ下がりの筈である。
プッシュロッドのモノコック側の接続部分は、モノコック上面一杯よりもやや低めに位置している。
ブレーキ・キャリパーの位置は、普通に後ろ向き。



最近ウイリアムズのモノコック上面のピトー管は上下2段構えだが、
FW26の発表時には、車体を覆う布を取り去る際に布が引っ掛からない様にか、2つのピトー管がUの字に繋がれていた。


サイドプロテクター高は高めで、レギュレーション・フィンは小さめ。
ロープをかける穴は、マクラーレン式は採用していない。
筆者は毎年思うが、ウイリアムズはこの辺りをもっと攻め込めないものだろうか?

エンジンカウルは、マクラーレン同様、新レギュレーションに対応して後方へ長く延ばされた。



サイドポッド前端のフィンは、以前までの物より厚さを増しているかもしれない。
FW25ではサイドポッドのインテーク下に、車体下への流れに影響を与える「えぐれ」が設けられていたが、
今回のFW26は簡素でフラットな形状となった。
サイドポッド高は相変わらず低め。

コークボトル開始位置を早めたい為か、ラジエーターの煙突はミニ・ウイングより前方へ離れている。
ラジエーターの煙突からの熱気は、斜め外側へ向けて排出されており、これはリヤ・ウイングへの気流の乱れを抑える工夫であると思われる。

コークパネルは、サイド・ディフューザー区間までカウリングしている。
一般的に、カウリング区間が長ければ、流速の若干の低下と引き換えに空気の流れ方を制御し易くなり、短ければその逆となると考えられる。



リヤ・ウイングは上下段共に、前方に位置しており、テールランプもやや前方に置かれている。
ロワ・ウイングは前後へ強いカーブを描く形状で、綿密な風洞テストの後が窺える。
アッパー・ウイングは現在、3D形状ではなく、簡素な仕様がやや前進して装着されている状態だが、
恐らく開幕戦で実戦仕様のウイングを装着してくると思われる。
(このページの最新更新日:2004. 1.12
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