第2戦マレーシアGPの初日から、ウイリアムズ・チームとしては久々にサイド・ディフレクターを使用して走行している。
そして筆者の無謀なリクエストから、カメラマン澤田賢志様がその部分を撮影してくださったので、
このページではその写真を元にスケッチ化しました。
澤田カメラマン様、有難うございました。
| 写真は、澤田カメラマン様の個人サイトの 「お気楽掲示板」2005年3月21日の部分で観られます。 (左図) マシンはこれまでの空力デザインのままで、 後からサイド・ディフレクターを追加した状態となっている。 ウイリアムズは1999年中盤から、前輪内側ディフレクターとボーダーウイングの空力パッケージとしていたが、恐らくグランプリ・セッションでサイド・ディフレクターを装着するのはほぼ6年ぶりとなるのではないだろうか。 2003年にFW25の発表時と初期テストでサイド・ディフレクターを装着していたが、この時は空力に問題が発生した模様で、開幕戦からはまたボーダーウイング型の空力パッケージへと戻した。 (左図:筆者が2003年当時に観た写真の記憶から大まかな流れ示す) 問題が発覚した初期テストでは、 ディフレクター表面に白いオイルを塗布して気流進路を視覚化した結果、 ディフレクター上部の流れ方に問題が発生していた。 この様な流れ方となった理由は、 ディフレクター上部で表裏の圧力差が大きかったり、 ノーズ周辺の流れ方が影響及ぼしている可能性等が考えられると思う。 |
(1) | 前輪が回転する事で巻き起こる渦と乱された流れ。 これが車体下面と路面との空間に入り込むと、空力性能は大幅に低下してしまう。 |
(2) | 前輪内側ディフレクター。次の3つの役割があると思われる。 1.気流を外側と下側へ向けて、前輪の乱流から車体下面の流れを守る。 2.前輪の後ろ側の低圧域へ気流を誘導する。 3.フロントウイング中央部とノーズ下の気流を、前輪内側ディフレクターの裏側(=低圧域)へ引き抜く。 尚、前輪内側ディフレクターをモノコックへ取り付ける為の板(3)は、ロワアーム(4)の前に付ける事であまり空気抵抗を増さない様にしている。 |
(5) | サイド・ディフレクター。 場所と流し方は異なるが、大まかに役割自体は前輪内側ディフレクターと同じ様なものと言えるかもしれない。 近年のF1マシンでは前後2段構成のディフレクターでそれを行う様になってきている。 サイド・ディフレクターの方が距離的に、モノコック下部のセパレーター、車体下面、サイドポッドへの流れにダイレクトに影響すると考えられる。 |
(6) | サイドポッド下部手前の小さなプレート。モノコック下部のセパレーターから車体下面への流れ方を制御する重要部分。 |
(7) | サイドポッド両端の斧型プレート。車体下面への流し方と、サイドポッド側面への流し方に影響を与えていると思われる。 サイドポッドの前面から側面の気流は、その後方のコークボトル部分で吸引されるが、 そこへ吸い込まれる気流を、事前に斧型プレートで道筋を決めておく事で、気流変動が穏やかにできているのかもしれない。 |
今回のウイリアムズの場合、サイド・ディフレクターの装着は、元々からの開発予定や選択肢の一部として有ったものだろうか? それとも、冬のテストで空力に問題が発覚した事で、それに対処した結果だろうか? 筆者は、デザインに後付け感が感じられる事から後者である可能性が高い様に思う。 サイド・ディフレクター未装着を前提に空力設計したマシンが、 後付けでサイド・ディフレクターを装着した場合の空力性能は、 メリットは、より空力デザイナーの意図通り厳密に流れ方を決められるであろう事。 デメリットは、表面積の増加から空気抵抗が増す可能性等が考えられる。 しかし筆者は、後付けの場合であってもそれはシーズン中の致命的なハンデとはならないと思う。 今後、(もしほぼ同じ概観のものであっても)形状の調整を煮詰めていく開発作業が進む事で、 刻々と空力性能が向上していく筈である。 |
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