2009年用 F1マシンデザイン by tw デザイン日:2008年 8月20日〜8月21日
 Web公開日:2008年 8月23日(土)

来季2009年用の筆者によるF1マシン空力デザインスケッチ。
筆者は英文が読めず、2009年度の車輌規定を断片的にしか分からない為、暫定的なデザインである。
尚、これは筆者の作成した、[F1マシンデザイン・テンプレート]をA4紙にプリントアウトして描いた。
緑や青の線はボディワーク規定の範囲線を示す。

 では、画面のスクロールバーで上下左右へスクロールしてご覧ください。
(空力デザインの解説文はこのページの下の方にあります。)














 以下は、図と共に記述する。



上図、車体底面の、ステップドボトムの後方への絞り方を2段階に分けて絞っててある点が重要ポイント。
ステップドボトム側面の狭め方を2段階に分けて絞り込んでいる理由は、
車体底面のアンダーウイング開始点でアンダーウイングの幅を最大に使いたい為だ。
狭め方のカーブが2段階となってしまっている理由は、
後輪中心線から前方へ330mmの地点まではステップドボトム側面の幅が300mm以上なければならない為である。(規定変更がなければ)

さあ、来年 他のF1チームも同様の形状としてくるだろうか?
2009年は、ピットでアンダーカウルが置いてあったり、マシンがクレーンで持ち上げられたシーンを目にできたら必見のポイントだ。

ただし、もしもエンジンの後部の底部の幅が300mm以上あるとこの形状は実現できない。
発電機やオイルポンプ等の補機類の配置が重要となってくるのである。
現状のエンジン開発凍結ルールの中、各チームのエンジン形状が空力性能へ影響する可能性がある。


フロントウイングの幅は、2008年までの1400mmから、2009年の新規定では1800mmまで大幅に幅広となり、
且つ、フロントウイングの高さが恐らく50mm低くされた模様で、フロントウイングによるダウンフォース発生量の増量が大幅に期待できる事となった。

そして前からと上から見て、ウイング幅の広さから、前輪下部がフロントウイング・エリアの気流に隠れる様になった為、 フロントウイング両端の部分を色々と工夫して、前輪下部になるべく気流が当たらない様にしたり、
前輪の回転が巻き起こす渦流を軽減しようという工夫の余地が大幅に大きくなった。


(右図) 今回の筆者のデザインでは、フロントウイング両端を単なる翼端板とせずに、見た目が大昔のF1のスポーツカー・ノーズの両端の様な物とした。
この前輪カバーによって、前輪下部に気流がなるべく当たらない様にし、
且つ、その底面はウイング状に跳ね上げてダウンフォースを発生させ、
尚且つ、外側では跳ね上げ状のカナードを装着し、ダウンフォース発生量の増量に努めた。
ただし跳ね上げの後流は、前輪の回転によって進路が下方へ向けられる為、この部分はダウンフォースが少量しか期待できない。(右図)





(上図) 車体底面のディフューザーの跳ね上げ開始位置は、2008年までは後輪中心線から前方へ330mmの地点であったが、
2009年の新規定では、後輪中心線から前方へ600mmの地点となった為、
車体底面によるダウンフォース発生量の大幅な増量が見込める。



更に、車体底面の幅が、2008年までの1400mmから、2009年は1600mmと幅広となった事もダウンフォース発生量の増量に寄与する。



これらの事から、2009年の新規定では、フロントと車体底面によるダウンフォース発生量が大きく見込める。
その為、今回の筆者の空力デザイン・コンセプトは、
フロントウイングのスペースの工夫でフロントに必要なダウンフォース発生量を実現し、
ノーズ先端は高くして、車体底面へ大量の気流を供給して、車体底面のダウンフォース発生量を大きくしようというコンセプトとした。

車体底面(サイドポッド底面)によるダウンフォースの発生地点は、
フロア前端区間と、リヤ・ディフューザー区間の2箇所で最も大きくなる。
その為、車体底面でダウンフォースを大きくすると、ダウンフォース発生中心位置がリヤ寄りとなる。

この事から、ノーズ先端を高くして車体底面のダウンフォース発生量を大きくするコンセプトの場合は、
フロントウイング・スペース単体でのフロント・ダウンフォース獲得が必須条件となるのだ。

(右上図) 尚、フロントウイング裏面には、外側へカーブさせたスプリッターを備え、
前輪の回転が巻き起こす渦流による車体底面への悪影響を少しでも良好化しようとしておく。


フロントウイングの上段エレメントは、フロントウイングが跳ね上げる気流進路を制御する。
そしてハイノーズと低いフロントウイングとを繋ぐステーを補強する役割もある。

ダミーカメラはフロントサスのアッパーアームの前側に配置し、
それぞれを単独で配置するよりも空気抵抗を軽減した。
そしてカメラとアームの連携した形状によって、フロントウイングの後流を制御する役割もある。


現代F1の流行通りフロントサスはゼロキール式として、サスペンションの機能はほぼ完全に無視して空力性能を優先した
無理なアーム配置の為、アームの取り付け強度を優先し、ブレーキング時のアンチダイブ特性は捨てた。
プッシュロッドも作動し難い角度となってしまっているが、これも空力を最優先した結果である。


ボディワーク範囲図の規定内でサイド・ディフレクターとアンダーボーダーウイングを装着させ、
前輪の回転が巻き起こす渦流による車体底面への悪影響の少しでもの良好化に努めた。

リヤ ビュー ミラーのステーは空力活用させた。
(車輌規則では、ミラーとそのステーにはボディワーク規定が適用されず、上から見たミラーとステーの合計面積が規制されている様だ。)
モノコックから横へ伸びるステーは、フロントウイングが跳ね上げる後流と、前輪の巻き起こした乱流を少しでも整流する。
前後方向へ支えるステー(ミラー本体の空気抵抗でステーが曲がるのを防ぐ)も、前輪の巻き起こした乱流を少しでも整流する目的。

サイドプロテクターは気流を左右へ分ける形状とした。
この考え方は筆者は1995年頃に発案している。
サイドプロテクターが気流を上方へ向かわせる形状とすると、
サイドプロテクター上面の流速が高まり、リフトフォースが発生してしまう可能性がある。

サイドポッドのアンダープレート前端は、ボディワーク規定を最大限に活用し、少しでも車体底面でのダウンフォースを稼ぎたい。



前から見てサイドポッド上面は、車体内側と外側で段差をつけた。
この考え方は筆者が(記憶がうろ覚えだが、)1991年の終わり頃か1992年初頭頃に発案したアイデアだと記憶している。

サイドポッド上面に車体内側と外側で段差をつけた理由は、本サイトの
「2009年レギュへ向けて、上面の段差付きサイドポッドが復活?」(2008. 8.11)のページを参照してください。



アンダーフロアの幅が、2008年までの1400mmから2009年の新規定で1600mmに広がった事で、 後輪手前に小型サイドディフューザーを設ける事が出来る様になった。
このミニ・サイドディフューザーはそれなりのダウンフォースの発生と、後輪へ当たる気流の強さを緩和する効果が望める。
エアロマップに支障をきたさない様に、メインのディフューザーとは翼端板で空気の流れ方を区別しておく。

何と云っても、メインのディフューザーとそれに関連する部分の空力設計が2009年度の最大の空力開発テーマとなると思われる。

そのメイン・ディフューザーの空力効率を妨げてしまうのがリヤサスのロワアームだ。
新規定となった初年度は、このロワアームの取り付け方法が各チームごとに個性として表れるかもしれない。




(上図) 筆者も試行錯誤の途中だが、今回のデザインではデファレンシャル・ケースの下部にキールを設けてロワアームの後ろ側アームを車体側と接続した。
これはメイン・ディフューザーの気流の妨げとなるので今後良い解決策を思い着きたい。


今回のデザインではディフューザーの下側にロワアームを配置した為、アンチスクワットのジオメトリーが困難となった。
2008年までのF1は空力性能を最優先してフロントサスの性能を犠牲にして来たが、
2009年からのF1はリヤサスもジオメトリー設計を犠牲にせざるをえない状況となってゆく可能性が高いと考えられる。



図のカラーリングについて。
青はダウンフォースにつながるウイング
オレンジは翼端板と、車体底面のスキッドブロックプレート
紫っぽい深緑は横方向の気流制御を行うスプリッターやディフレクター
緑はサスペンションアームとロッド
赤はラジエーターと熱をおびている箇所と、テールライト
灰色はウイングステー
ピンクはサイドプロテクター
それ以外の車体の部分は水色とした。

車体に入れたロゴは、ノーズコーン先端の上面には製作者の「tw」を、
インダクションポッド側面には、正真正銘の和製デザインである事を示す、「NIPPON」のロゴを付けた。
日本製なので、「JAPAN」ではなく、「NIPPON」である。
日本の事をJAPANと呼び出した者は誰なのだろうか?
インダクションポッド側面ロゴの「mental Bloch bastar」は、筆者がこれまでで最も影響を受けた本のタイトルである。

このページの最終更新日: 2008. 8.24
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