ホンダ RA107  text by tw (2007. 1.25〜)

ホンダF1チームの2007年用マシンのテスト走行の写真がネット上に掲載された。
(その写真を筆者が確認したのは1月25日。)
それは全身黒いマシンで、恐らくカーボン地の未塗装であると思う。
現時点では筆者はまだ3枚の写真を入手できただけだが、
新車の全体的な概観は、昨(2006)年のマシンと然程大きな違いは見られない様だ。

各部パーツの呼称については、[各パーツの名称]ページを参照。

大きな差異点として、ノーズコーンは細くされた。
これはフロントウイングの後流や、ラジエーター・エアインテークへの流れに影響する。

昨年同様、フロント・サスのプッシュロッドを収めるモノコック上面の膨らみがある。

エンジン・エアインテーク形状が五角形となっているのも昨年同様。

リヤで新しくなった点として、リヤ・ウイングのステーは横から見た時に、
アッパーウイング下面からギアボックス上面へかけて前進する角度がつけられた。

RA107 Technical Specification
全長4,700mm (注:発表値)
全幅1,800mm
全高950mm
ダンパーショーワ社製
ホイールBBS社製 鋳造マグネシウム製 (フロント:312mm、リア:340mm)
タイヤブリヂストン社製
ブレーキアルコン社製(6ピストン・キャリパー)
燃料タンクATL社製 ケブラー補強ゴム製・150リットル (注:発表値)
バッテリー3Ah 鉛バッテリー
ギアボックスカーボン・コンポジット・ケース (7速+リバース)
ステアリングラック&ピニオン式 (パワーアシスト付)
ステアリングホイールカーボン・ファイバー製
ドライバーズシートカーボン・コンポジット製
シートベルトタカタ社製 6点ハーネス (幅75mm)

Honda RA807E スペック
排気量:2.4リットル
エンジン形式:V型8気筒 自然吸気
バンク角90度
最高出力:700馬力以上
エンジン回転数:19,000rpm
インジェクション:Honda PGM-FI
イグニッション:Honda PGM-IG
スロットル制御方式:電子油圧制御

(ここまでのこのページの最新更新日:2007. 1.25


2007年2月26日、ホンダF1チームは、
環境をテーマにした新しいマーケティング手法と車体のカラーリングを発表した。

車体はスポンサーロゴが撤去され、カラーリングは地球の衛星写真が写されている。
(ただし規定上、車体の“製造者”であるHONDAのロゴと、
 タイヤ供給社のブリヂストンのロゴは貼り付けてある。)
しかし車体の後部は真っ黒となっている。
これは宇宙に在る地球の貴重性や、地球環境問題の危機感を表現しているのだろうか?

そしてその黒いリヤウイングには、新しいマーケティング手法となる、
www.myearthdream.comのアドレスが記載されている。

ところで筆者はこのRA107の地球衛生写真のカラーリングは、
塗装されたものか、プリントアウトされたステッカーが貼られているのか判別が付かないのだが、
現在のF1マシンは車体形状が非常に複雑で、且つ多くの部分が曲面でデザインされている為、
塗装にしてもステッカーとしてもどちらにしろ非常に難しい作業なのではないだろうか。



RA107の概観は、昨(2006)年度のマシンと比べて特に大きな違いは観られない様だ。
記事によれば、RA107はシーズンを通してこのマシンの完成へ向けての開発が進められる様だ。
これは通常行われるマシン開発というよりも、
シーズン序盤では、RA107が本来の設計が完了していないという状況の様である。
その為、RA107はシーズン後半となってから目標値のスピードを発揮する事になるのだろう。



昨(2006)年のマシンでは、フロントサスのタイロッド(ステアリング・ロッド)の位置は、
上下アームの中間の高さとしていたが、今(2007)年車ではアッパーアームと同じ高さに戻された。
これにより空力抵抗が軽減する代わりに、ステアリングの精度は若干低下するかと思われる。

フロントサスのタイロッドの高さの変更は、設計者の頭を悩ませる。
この理由は、ステアリング・シャフトが、ピッチコントロール・ダンパー&スプリングとの干渉を防ぐ作業や、
それによるロッカー(ベルクランク)の設計変更によるレバー比の検討等である。

現代F1マシンのモノコック前部の内部では、とても込み入った状態となっている。
それは、ステアリングシャフトのレイアウト、
ピッチコントロール・ダンパー&スプリングの配置とプッシュロッドの後退角、
ダンパーへ繋ぐロッカーのレバー比、等、狭いスペースの中で、様々な要素が絡み合っているのである。



サイドポッド側面下部は、ほとんど狭くは絞り込んでいない。
これはサイドディフレクターを装着しない空力コンセプトだからだ。
車体底面へ良質な流れを供給する為に、前輪内側のディフレクターの開発が進むだろう。

バックミラーの位置を左右へ離していないのは筆者は疑問に思う。

リヤウイング手前のフォワードウイングは、リヤウイングの翼端板を前方へ延長して支持している。

(ここまでのこのページの最新更新日:2007. 3.05


Rd.11 ハンガリーGPの映像から (8/11更新)

今季のマクラーレンのアイディアを真似た、新型フロントウイングを投入した。
このウイングは3枚構成となっており、中間の2枚目のウイングにノーズからのウイングステーを接続している。
これによりファーストウイングの設計は、強度面の制約が軽減され、薄くするなど空力形状の自由度が増すが、
その代わり2枚目のウイングは厚めで強度が必要となる。
また、ウイングステーの質量は僅かだが上下に短く済ませられる。
ウイングステーが後退した事によりマシンの前後重量配分を中心へ寄せられるが、
2枚目のウイングが重くなる事から、重心高は若干上がってしまうかもしれない。

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