ホンダ RA108  text by tw (2008. 1.25〜)

2008年 1月23日、ホンダの2008年用マシン「RA108」がシェイクダウンされた。
写真は、F1-Live.comや、GPUpdate.net等を参照。
以下、概観から筆者の私見を記す。各部パーツの呼称については、[各パーツの名称]ページを参照。



ノーズ先端の位置はとても高くされた。
マシンのフロント部分は、空力の入力部位である。
ノーズ先端の高さは、ノーズ上面の高圧、モノコック上面の流速、車体底面への気流供給量を決定付けると考えられる。

ノーズ先端を高くすれば、ノーズ上面の高圧は軽減し(フロント ダウンフォースの僅かな低下)、
モノコック上面の流速は低下し(フロント リフトの解消)、
車体底面への気流供給量は増し、車体中央から後部への最大ダウンフォース発生量の上限を高める事ができるだろう。

しかしノーズ先端を高くすれば、フロント ウイングが跳ね上げる気流とノーズ周辺の気流進路のマッチングが困難となる。
この問題さえクリア出来れば、高いノーズ先端の空力コンセプトは、車体の空力効率の向上に大いに寄与すると考えられる。
現在のRA108では、フロント ウイングのフラップの形状でこの問題に対応しようとしている様だ。

フロント ウイングは3枚構成で、中間のウイングにステーを接続している。
こうする事で、重量物であるウイングステーを車体重心位置へ近づけ、車体へ加わる慣性モーメントを軽減する事ができる。

そしてこのステーは、翼端板から水平なメイン ウイングも装着できる位置で分割されている。

尚、ノーズコーンはウイング ステーよりも前方まで伸びている。これは前面衝撃吸収能力を高める事に寄与する。



ノーズ後部の上面両端からは、ダミーカメラを装着する為の短い「腕」のウイングが左右へ伸びている。
これはレギュレーションでカメラかダミーカメラの装着が義務付けられている為、
ダミーカメラの装着を空力面での純粋なデメリットではなく、何か空力性能に寄与する様利用しようというアイディアだと思われる。
それはフロント ウイングが跳ね上げる気流進路の制御や、ノーズ上面の気流進路制御が考えられる。
しかしダミーカメラには重量があり、車体の重心位置から遠く、且つ高い場所に設置する事は、車体運動性能面では不利となる。


昨(2007)年はモノコック上面に、フロント サスの内部ユニット(ロッカー)を収める膨らみがあったが、
今回のRA108では膨らみが消え、フラットなモノコック上面となった。
これはサスペンションの内部ユニットが昨年とは異なる事を意味する。

フロント サスの前側アッパーアームはやや複雑に変形した形状となっている。
アームが車体側からタイヤ側へ降りる形となるゼロキール方式では、走行中にアームに無理な力がかかる為、
こういった変形アームの採用も検討されるのかもしれない。

(ここまでのこのページの最新更新日:2007. 1.25


サイド ディフレクターの上端のラインは、昨(2007)年フェラーリに習い、段差のあるギザギザ形状とされた。
サイド ディフレクターはその上端から裏面へと気流を渦状に流し込む効果があるが、
ディフレクター上端を段差のあるギザギザ形状にする事で、流動を細かい区間ごとに明確に行っている様だ。
これは車速(=流速)の変化による流れ込み方の変化を制御しようという意図もあるかもしれない。

バックミラーは車体両端へは離されず、無難な位置に置かれた。
筆者の個人的な考えでは、バックミラーは車体両端に配置するのがベストな手法に思う。

ラジエーター・チムニーは幅が細く、廃熱量は少なめだ。
これはサイドポッド上面の高圧流が両端へ吸い込まれるのを防止するフェンスとしての役割が大きいと捉えて良いだろう。

廃熱と気流制御の目的で、サイドポッド上面にはシャーク ルーバー スリットが開けられている。
昨(2007)年はサイドポッド上面を急激に落とし込んでいたが、その車体のカラーリング上、筆者はその形状を正確に把握できなかった。
現在走っているRA108は白いカラーリングなので形状が解り易い。
RA108はサイドポッド上面前端の厚みが大きく、この頂点で流速が高まりリフトが発生しているかもしれない。
それを除いて、筆者の私見ではRA108は特に首を傾げる点は特に無いが、ただしそれは風洞開発が綿密に行われている事が前提となる。

(このページの最終更新日:2007. 1.28
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