2012年 2月21日(火)、メルセデスGPのニューマシン、「MGP W03」が正式に公開された。
F1グランプリのマシン開発の戦略は大別して2つに別れる。
1つはマシンを早めに完成させて、開幕戦までじっくりと熟成させる戦略、
もう1つはファクトリー内でのマシン開発に時間をかけて、冬のテスト期間が短くなる代わりにマシンの基礎ポテンシャルを高める戦略となる。
今季のメルセデスは後者を選択した。これは開発プログラムに期待度があり、製造技術に自信がないと執れない戦略だ。
尚、フェラーリに居たデザイナーのアルド・コスタが2ヶ月程前からメルセデス・チームに加わっている。
では「MGP W03」の写真は、F1通信 等を参照。 以下、概観から筆者の私見を記す。
フォーミュラーマシンでは、ほぼマシン全体がダウンフォース発生機構としてデザインされている為、
単純に云えば、フロントの車高が低く、リヤが高いと、マシン全体の“迎角”が強まり、マシン全体のダウンフォースが増加する。
その為、フロントのダウンフォースを軽減すれば、マシンの“迎角”が弱まり、ロー・ダウンフォース、ロー・ドラッグとなる訳だ。
今季の規定からそうせざるをえなくなったノーズの段差のエリアは、上面が平坦ではなく、
両端を鋭く前方へ延ばしておき、ノーズ上面の中央へ気流を誘導しながら高いモノコックへ綺麗に運んでいる。
この段差の処理は、今回のメルセデスやロータスの様な「窪み型」と、フェラーリやウイリアムズの様な「平坦型」と各チームで別れているが、
前者はノーズ上面の空力状態が常にある程度安定し、
後者はコーナリング時にノーズ上面の余分な空気を外側へスライドさせて逃がす、という事なのだろう。
フロントウイング・ステーはフェラーリの様に後方へ長く延ばし、フロントエリアの気流進路を安定させている。
ただしこれはデメリットとして、空気には粘性がある事から、接する面が長いと境界層が成長し、流速を低下させてしまう結果ともなる。
そしてノーズ下の気流は、モノコック下のディフレクターで更に安定を保持されたままフロアへと向けられている。
これらは車体底面の気流状態を綺麗且つ安定させる為にそうされている。
モノコック下部で気流を左右へ別けるセパレーターも空力に非常に重要なエリアだが、「MGP W03」では色が黒く形状が判らない…。
そしてサイド・ディフレクターとサイドポッド手前の縦のベーンも丁寧に調節され設計されている様だが、
フロントからリヤへと良質なエアフローを実現する事で、リヤのダウンフォース発生をとにかく求めている。
現在の規定では、フロントならウイングの迎角やフラップの面積等でまだまだダウンフォースを稼ぐ事は簡単だが、
リヤでは、昨年大いに頼っていたブロー・ディフューザーが禁止された事から、失われたダウンフォースはかなりの量となり、
その為、各チームのエアロダイナミスト達は、車体底面とリヤのダウンフォース獲得に奔走している筈なのだ。