「2019年F1、フロントウイング形状はどう変わる?」

text & illustration by tw (2018. 9.28金)

F1では来季(2019年)から、コース上での追い抜きを促進する為に、テクニカルレギュレーションが変更される。
このページでは、その中で、フロントウイングの規定変更に関する事柄を綴る。
来(2019)年の規定では、フロントウイングのデザイン全体が単純化され、カスケード(上部の追加ミニウイング)の装着も禁止されると云われている。
現時点で筆者はその詳細情報(数値等)を得てはいないが、つまり、上記したそういう趣旨のルール変更と云う事だ。

では、来(2019)年を観るその前に、2018年現在まで許可されているフロントウイングとカスケードの関係について確認しておこう。
(尚、以下のスケッチで示すのは翼端部のウイング形状ではない事に注意。描いたのは左右位置でフラップ中央辺り(車輌中心から約500mm外側)の断面図だ。)

まず(下図)、ただ普通にデザインしたメインウイング&フラップに、ケスケードを後付けした形状。



上図の設計は現在のF1マシンでは見かけない。何故なら、これよりも更に開発の余地があるからだ。

それでは下図が現在のF1フロントウイングの形状(もちろんチームにより詳細な形状は異なるが、現在のスタンダードはこんな感じ)で、
この区間はフロントエリアにおいて最大のダウンフォースを発生している。



上図はメインウイングの手前に前縁スラットがあるのが特徴。これがある事で、カスケードのデザイン自由度が大幅に増している。
そしてメインウイング、マルチフラップ、カスケード共に、前後スパンが短く、
ウイング下面の気流が剥離する一歩手前まで気流を跳ね上げ、大きなダウンフォースを発生している。

それではようやく来季(2019年)のフロントウイング形状について綴る。(それには、2018年までの状態を理解しておく事が必要であった。)
2019年のフロントウイング断面で許可されるエレメント数がいくつになるかまだ判らないが、
仮に、「3つまで」 と規定されたらどうなるか? 以下考えてみよう。
一般的に、まず最初に単純な下図の形状を思い浮かべるだろう。



上図は、3エレメントの間隙フラップでウイング下面の剥離を防止している。
他に工夫の余地はあるだろうか? あるならば…、



上図、メインウイングを2枚翼として、アッパーエレメント(カスケード)1枚を追加した物が考えられる。
これによりフラップ下流は剥離するギリギリの状態となるかもしれないが、
ウイング上流の気流進路をカスケードによって、本来のメインウイング&フラップの迎角よりも上方へ向ける事で、更に強いダウンフォース発生に寄与するだろう。
(このタイプがレギュレーションで許可されるかはまだ判らないが…。)

それでは、現実に来(2019)年のF1マシンのフロントウイングはどの様な形状となって登場するだろうか?
それはシンプルな3枚翼だろうか? それとも2枚翼+カスケード1枚の仕様だろうか?
我々F1ファンがこう考えている間にも、既に各チームのCFD(コンピュータ フルード ダイナミクス)や風洞でその結論は出ているのだろう。
来(2019)年の新しい空力パッケージに対応する為、F1空力エンジニア達はエアロマップを再度、最適化する作業を行っている筈だ。

(このページのここまでの最新更新日:2018. 9.28金
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