F1サスペンション機構について(4)
text & illustration by tw (2021/11/11木〜 2022/ 3/02火)
2000年、アロウズがフロントサスをプルロッド式にした。
この頃はもうジョン バーナードはこのチームを離脱していたと思う。
F1業界は不思議と、「今速いマシンのトレンドを追ってしまえ!理由はどうでもいいから!!」という謎の文化があるのはもう確かで、
マクラーレンがノーズ先端の低いマシンで、1998年のドライバー&コンストラクターと1999年のドライバーズチャンピオンシップを獲得し、界隈を席巻した事で、
F1で1999年から2000年代初頭に、ノーズ先端の低いマシンが流行してしまった。
筆者はノーズ先端を低めても、マシンに対してデメリットしかないと考えていたし、今(2021年)でもその考えは変わらない。
しかし2000年にノーズ先端を低める決断をしたアロウズが、ならばプルロッドにしてしまえ!というのがこのマシンだ。
フロントの左右のトーションバーは前後方向に水平に置かれて、低重心化したと記憶している。
1998年〜2000年の間のいつか から、フェラーリがリヤ ダンパーでスルー ロッド シャフトを採用。つまりシャフトがダンパー筒の上下を突き抜けている。
(*筆者は1998年〜1999年のフェラーリのリヤサスの写真を観た記憶が無く、
2000年にF1モデリング誌の掲載写真で、今回記述するリヤダンパーを観た。
なので、フェラーリがいつから採用していたのか不明なのだ。)
(ダンパーの側面図) バンプ側に、補助の細いコイル スプリングを装着している。
(車体後ろから見た図)
ロッカーは前後に立体形状で、プッシュ ロッドとダンパーが干渉しない様にしてあった。
(細かい話をすれば、筆者はこのダンパーとプッシュロッドと、どちらが前側にレイアウトしていたのか、前後関係が思い出せない...。)
ギヤボックス ケーシング上側にあるトーションバー スプリングは、アンチ ロール バーだ。
もしスルーロッドではない普通のダンパーがストロークすると、ダンパーの筒の内部へシャフトがどんどん浸入してきて内部容積が変化する不都合がある為、
普通のダンパーは、中にフリー ピストンと高圧ガスを備えてあって、シャフトの侵入量の容積変化をガスが圧縮されて吸収する。
そこで、このフェラーリのリヤサスは、ロッドをダンパーに貫通させて、内部容積変化が起こらない様に工夫した。
これならば、薄く、軽く、小型にできる筈なので、これはダンパー単体の性能としての発想は素晴らしかったが、
F1車輌の場合、ギヤボックス側面にダンパーユニットを置くと、明らかにそれがリヤエンドの空力性能を阻害してしまう為、車のパッケージとしてはあまり良くなかったと思う。
このリヤサスはフェラーリで2001年シーズンまで採用されていた形式で、2002年はリヤ ダンパーはギヤボックス ケーシングの内部に収められた。
2003年、フェラーリがリヤサスのプッシュロッド受けをロータリー(回転式)ダンパーにした。
これはリヤのロッカーと一体型のロータリーダンパーで、中に羽根があり、オイルを回して減衰力を出したらしい。ザックス社の製品らしい。
これでギヤボックス内部、つまりトランスミションの外側に筒型ダンパーを配置しなくて済み、ギヤボックスケーシングを細くできた筈だ。
しかし、ダンパーの構造が上部に集中する事で、機械的に重心高は上がったと思う。
後にトヨタはリヤのロータリーダンパーを採用したが、他チームはあまり追随しなかったと記憶している。
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