F1サスペンション機構について(5)

text by tw (2021/11/19金)

2005年、ルノーがフロント ロワアームをV型キールで接続。見た目はエレガントだったと思う。
当時たぶんセンターキール本体はそれほど気流の害悪にはなっていなくて、それよかロワアームが長い幅あるのがフロントウイング後流の邪魔になっていた模様。
ルノーのV型キールのメリットは、ロワアーム長をセンターキール同様に長くとれるので、ストローク時のキャンバー変化を理想に近づける事が出来ていたと思う。
でもセンターキール同様にロワアームが気流の邪魔なんでしょ?と思われるかもしれないが、でもチャンピオン獲ったんだから、これはこれで当時はありだったんだと捉えている。

当時のF1は、空力デザイナーの圧倒的なカリスマである、アドリアン ニューウェイか、ロリー バーンが創ったマシンでしかチャンピオンになれない風潮があったと思うが、
私もよく知らない当時のルノー在籍メンバー(つまり少なくとも日本のメディアでは有名ではないが実力者達)がタイトルを勝ち獲った事実は、記憶と記録に残して欲しい。
それまで続いた無敵の様なフェラーリ、ブリヂストン、ミハエル シューマッハの連合を、
ルノー、ミシュラン、フェルナンド アロンソのチームが破ったのだ。翌(2006)年もルノー陣営がタイトル獲得。

(アドリアン ニューウェイは、ウイリアムズで1992年〜1993年、1996年〜1997年と、マクラーレンで1998年〜1999年にタイトル獲得。
ロリー バーンは、ベネトンで1994年〜1995年と、フェラーリで1999年(コンストラクターズ)、2000年〜2004年までタイトル獲得していたと筆者の記憶にある。)


1997年にケンブリッジ大学のマルコム スミス教授がイナーターの原理を発案し、2002年10月に論文を発表したらしい。
これは筒型の装置で、サスがストロークしてスクリューのロッドが出入りすると、仕込んである重りを回転させる仕組みだ。
従来のオイルダンパーはストロークの「速度」に対して作用する物だが、イナーターはストロークの「加速度」に対して作用する装置だ。
ただ、これがあまりに単純な仕組みの装置なので、教授は最初、「もしかして、もうずっと昔から誰かが発案していてテスト走行してボツになったのではないか?」と疑心暗鬼したらしい。

しかし、2005年 第4戦サンマリノGPでマクラーレンがフロントサスにイナーターを採用した!
これはマクラーレン陣営も同じシステムを発案したのか、ケンブリッジ大学の教授へお金を支払ったのかは筆者は知らん。
そのマクラーレンは投入初戦で、キミ ライコネンがポールポジションを獲ったが、決勝レースの9周目にドライブシャフトのトラブルでリタイヤしたらしい。(ぐぐった。もう憶えていない。)
F1の場合は、イナーターの機能として簡単に述べると、車体の共振を押さえ空力が安定してたらしい。(乗用車は 1Hz、F1は 3〜4Hz。)
設計時の注意点として、車輌が縁石へ乗り上げる等、急に突き上げられる動きで壊れてしまう為、そういった際に回転を滑らせるクラッチの様な機構が必要だ。

だが現在(2021年)のF1では、イナーターはほぼ使われていないらしい。今はどのチームも、空力の為に高度に考えられた「手品」の様なアイディアを施している模様で、
その都合でイナーターの必要性が低下したのか、または要らなくなった、という事なのかもしれない。

(気力があれば後日続く。)

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