F1サスペンション機構について(8)

text & illustration by tw (2021/12/19日 〜 2022/ 1/26水)

2021年レッドブル等のフロントサスの概略図。ダンパーは、ピッチとロールを完全に別個に制御していた。




下図 (赤線) ロール時のサスの動き。
ピッチ ダンパーは作動せず、ロール ダンパーアンチ ロール バーのみが作動する。

アンチ ロール バーのリンクは、前後方向にロッドが伸びていて、トーションバー スプリングを捩る。
トーションバー スプリングの左右の外側エリアは中空管で、トーションバーを内包している。
これでスペース的に、トーションバーの、長さ(幅)の距離を稼げる。



上で、ステアリング シャフトの断面が縦長なのは、モノコック内のレギュレーションの都合で、そのシャフトが前へ向かって、フットボックス上方から下方へ、斜めに降りる角度がついているからだ。すると断面は縦長となる。


昔の車では、4つのホイールにそれぞれ1つづつのバネとダンパーがあるのが普通だったと思うが、今(2021)年のF1はまるで異なっていた。
これは全チームではないかもしれないが、少なくともフロントサスでは、ピッチだけに作動するダンパーが1つと、ロールだけに作動するダンパーが1つあるマシンがあった。
つまり、4輪が独立したそれぞれの路面追従性はもう無視して、ピッチとロールだけを別個に制御してしまおう、というのが今のレッドブル等のフロントサスだ。

筆者がこれを綴っているのは2021年だが、たぶん2〜4年前頃からか、モノコックのフットボックス前側の高さをやや低めて、車体を前から見た時にロッカーの上部が露出する様になっていた。
これで発覚したのが、フロントサスのダンパーが左右対称ではない!! ダンパーが縦方向に斜め45度くらいにして、どこかへ接続してある。中はどうなっているの!!?
筆者はずっとその理由が判らなかったが、今(2021)年の秋に自力でやっと気付いた。あれは左右のロッカーを縦に斜めに接続した、ロールのみで作動するダンパーなのだ!!

それでハッと思い出したが筆者も、もの凄く昔の若い頃にフロントサスのピッチとロールを別個に管理してしまって左右2輪の路面追従性は無視した機構をスケッチした記憶がある。
それはプッシュロッドから複数のロッカーを介してリンクしてあって、左右非対称なレイアウトで、
これはモノコックのフットボックス上面にフロントサスの内部ユニットのほとんどが配置されていた時代のものだったと思う。実際、あのスケッチは上面図だけだった記憶だ。
また、「あのスケッチどこ行った!!」状態で、筆者はこれまでこういう勿体ない事をたくさんして来てしまった人だ。


(2022/ 1/23日:追記)
今回、筆者が上に掲載した図はリソースの都合から手抜きで、フロント構造の断面が古い設計としてしまってあるが、
近年のF1マシンはきちんと進化していて、ピッチダンパーの上側は薄い外付けカウルとしてある。
フロント モノコック上面を薄くするのは強度と剛性面で限界があるが、空力の為だけのカウリングなら極薄に形成できる。(太いモノコック上面はトーションバーの高さ辺りにある。)
これでピッチダンパーとロッカーの頂点を更に上方へ位置させる事ができ、プッシュロッドの作動性に寄与するし、メカニックの整備性もとても良かっただろう!

 [9へ続く]

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