鈴鹿サーキットに展示されている1995年のフェラーリ(ショーカーかもしれないが)を撮影したので掲載する。
元の写真(大サイズ)の下には、筆者による気流可視イメージを描いた。気流線の赤い色は高速流を、青い線は低速流を示す。
気流進路は412T2を風洞実験したものではないが、過去のミニ風洞試験の経験から、恐らくそんなに間違った進路ではないだろう。
フェラーリのF1マシンが自然吸気のV型12気等エンジンを使用したのはこの95年が最後だった。(この年はレギュ変更で0.5リッター減って3リッターだ。)
写真ではオレンジのテープで隠れて見えないが、フロントウイング中央は少し高く湾曲している。(フロントウイングのAgipの黄色いラインに注目。)
サスペンションのスプリングは軽量で精度の高いトーションバーが使用され、ギヤボックスケーシングはフルカーボンで製造された様だ。
発表当初は2ペダル仕様で登場した筈だが、ドライバーの好みの理由で、シーズン途中から3ペダルへ戻された模様。
筆者の記憶が確かならば、これが歴史に名を残したジョン・バーナードが最後の勝利を残したグランプリマシンだ。
先進的なものを試す方だと思われるバーナードにしては、カーボンギヤボックス以外はどこも冒険していない珍しいマシンかもしれない。
オープンホイールのフォーミュラーカーが、ハイドラッグなのが判る。
剥き出しのタイヤは、純粋に車輌の空気抵抗の30〜35%程を占める様だ。
更に、タイヤの回転で巻き起こる乱流が車体底面の流れを阻害しない様に工夫を凝らす必要がある。
左写真の黄緑の円で囲った部分に注目。これは当時流行った形状で、 最初に登場させたのは93年のウイリアムズであったと記憶している。 フロントウイングの下面の流れの“入り”を配慮した形状で、上下方向だけでなく、左右方向からも空気を吸い込む。 急な旋回時にも、翼端板の内側の気流が剥離する事無く、安定したフロントダウンフォースの発生が期待できそうだ。
ウイング上側の流れは、急旋回で翼端板の内側の流れが剥離したとしても、 外端の水平フィンは、接触時にタイヤを傷つけない為に、翌96年から半径50mmの厚みが義務付けられる。 |
フロントウイング下には左右2枚づつのスプリッターがあり、後ろで背が高くなりベーンとなっている。 規定で、翼端板やボルテックスジェネレーターを前輪の内側まで延長できなくなったので、 ベーンで気流を外へ向け、前輪が内側へ蹴り出す気流を抑える形だ。 これがないと車体底面へ有害な乱れた流れが侵入するだろう。 ノーズ横のディフレクターは、この効果をサポートする。
フラットボトムが規定されるのは、前輪の後端から後輪の前端までの区間なので、 |
フラップ後方のベーンが、立体形状なのが判る。空洞試験の成果だろう。 |
この構図は、前輪の巻き起こす乱流を外側へ向け、 ディフレクターで車体底面へ多く気流を導くコンセプトが理解できる。 |
前輪の後ろ側は負圧となり、周りから空気が進入するので、 背の低いディフレクターでも、見た目よりは気流を外側へ向ける効果がある。 V12エンジンの冷却要求が高い為、ラジエーターインテークが大きい。 |
コークボトル開始位置が後方なのは正直時代を感じる。 この方が、後輪手前の圧力を高め、サイドディフュザーヘ勢いのある空気を流せるという実験結果もあるが、 それよりも、コークボトル開始位置を前方にして、サイドポッド側面の流速を高め、 車体下面へ“横側から侵入する空気をシール”した方が、空力効率は高いだろう。 実際、2000年代以降のF1はそうされている。 横側から車体下面へ進入する空気は、空力効率を追求する上で邪魔なのだ。
そして、なかなかコークボトルを開始せずに、サイドポッド側面が長いと、 |
サイドポッド上面の流れは遅めで、圧力はやや高まり、端では外側へこぼれる筈だ。 サイドポッド側面は流れが速く、圧力が低い為、この様な傾向になる。
リヤボディ上面には、ミッションのオイルクーラーと見られる物が置かれているが、
中央の冷却装置と、そのの左右のフォワードフラップらしき物は、 残念ながらこれより後方へは立ち入れず、リヤエンドは撮影できなかった。 |